《この達俺の妻らしいけど記憶に無いんだが⋯⋯》二話 お告げ? 金髪登場、そしてまさかの決闘

(お告げか⋯⋯久しぶりだな、でどうだった?)

湊は前半部分を意図的に無視し、脳で唱える様に聞き返す。

『なかなか出來るもんではないからな。そうじゃのぉ⋯⋯わしのお告げ通りに事を運ばせればほぼ確実に良い方向に話が進む事は湊坊も知っとるじゃろ?』

(あぁ、知ってる。それで?)

『うぅむ⋯⋯だが今回のお告げはちと今の湊坊には無理な気がしてのう』

湊はその言葉を聞き、驚きと不快で鞘を持つ力を強める。

今まで「難しそう」や、「厳しそう」などといったお告げはいくつもけてきた、だが「無理」なんて言われた事は無い。

湊はこの六年、復讐を果たし、最の妹・・・・を助ける為だけにひたすら過酷な修行を積んできた。

そしてそれをこの聲の正は一番知っている、だからこそ湊はその言葉に強く反応する。

(俺が失敗すると? そんなに強敵なのか?)

『痛い痛い、そう強く握るでない』

老婆が大して痛くも無さそうにそんな事を言い、湊は「あぁ、すまない」と鞘から手を離す。

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そう、この聲の主は湊の持つ神剣ティアマトに宿る神で、己龍家に伝わる家寶だっただ。

『まぁ、強敵と言えば強敵かのう⋯⋯なんせ今回の敵は子おなごなんじゃからのう』

ティアマトのその言葉に更に湊の中の不快は跳ね上がった。

(俺がに甘いから勝てないとでも?)

『早まるな湊坊、誰が戦闘勝負だと言った? 今回はそんな騒なものではない、いや湊にとっては戦闘よりタチが悪いかもしれん』

(は? なら何だってんだよ。タチが悪い? 勿ぶるのはティアの悪い癖だ)

湊が苛立ちを抑えずそう言うが、ティアは変わらずのんびりと言葉を紡いでいく。

『そーかいそーかい、なら伝えるとしようかね。デフラムを行使する事ができる男に與えられた特権を知っておるじゃろ?』

(あぁ、同じくデフラムを扱う事の出來ると婚約する事による能力強化⋯⋯だろ? それで? 話しが見えてこないんだが)

『そうじゃ、湊坊にしては珍しく鈍いのぉ、今回のお告げの結果は湊坊、おぬしが學園にり出會った金髪のを妻にしなさいというものじゃ』

(は⋯⋯⋯⋯?)

湊は刀の発言の意味が分からず立ち止まってしまう。

今だにぶつぶつと駄々をこね続けていたエルが、突然止まった湊の背中にぶつかるが今はそれどころではなかった。

(今なんて⋯⋯? 俺がを妻に?)

『そうじゃ、この學園ではたとえ未年でも可能じゃろ? 塔攻略する為にはそれが手っ取り早いのも事実、ほれ見てみろ、周りの子もおぬしに注目しとるではないか』

湊は一度周りを見渡す、いくら鈍い湊でも分かるってほど、周りの子達の目は好意的なものだった。

「明らかに俺らが見られてるな⋯⋯でもあれは、エルが──。おい、エル⋯⋯お前何やってんだよ」

エルは立ち止まっている湊を守るかの様に、こちらを見てくる子生徒に対し先ほどの猛獣の威嚇のポーズを見せているのだ。

それに対し周りの生徒はときめく様な歓聲を上げたりしていてエルはもう一度更に強く唸る。

「あの達が師匠を狙っていたので、この方はエルのだ! と、威嚇してました!」

ビシッと道の端からこちらを見てる子三人組を指差すエル、そしてそれを示すかの様に湊はエルに抱きつかれた。

「あのなぁ、あれは俺が男だからって理由だけじゃないだろ。大半はお前が可いから珍しがって見てるんだ」

「⋯⋯⋯⋯」

目をパチクリさせ、意味が分からないといった風に固まるエル。

「おい、どうした?」

そして數秒、エルは手をわなわなと震わせて小さな長を限界までばし、ぐっと顔を近づけてくる。

「い、今師匠がエルの事可いって⋯⋯言いました? 言いましたよね?」

エルがアホを左右に大きく揺らし、目をキラキラさせ湊を見上げてきて、湊はやっちまったとそう後悔する。

「いや間違えた。アホそうな小が居るなぁ、獲って煮て食ってやろうってじだなあれは。うん、そうに違いない」

「そんな⋯⋯師匠酷いです! 私は傷つきました! これは天より高く、海より深い心の傷です。これは、師匠がそれなりの謝罪と私の要求を飲む必要があります!」

『本當にあんたら仲良いねぇ』

「そんな事あるか!」

湊はティアののんびりとした一言に思わずび聲をあげ、それに反応しエルのアホがぴょんと逆立つ。

『そーかいそーかい、おっとあっちから関わってくるとはねぇ』

(は? 何言って──)

學式當日から、貴方達は何をしてるんですか」

湊は咄嗟に後方からした聲に振りむいた。

そしてそのに目が奪われてしまう、時間が、世界が止まって見えた。

春風になびいた髪はエル程長く、全に緩やかなウェーブがかかり、それが太を浴びて黃金に輝きを放つ。

ツリ目気味なその瞳も髪と同じで金は緩やかなカーブを描き、締まるところは締り、出るところはそれなりに出ていてそれら全てが彼の暴力的な魅力にじられる。

それらの覚は今まで數ない人間としか関わりを持っていなかった湊には不思議な覚だった。

「答える気は無いという事ですね⋯⋯」

あまりの貌に固まる湊にはしびれを切らし、腰から日本刀の様な細長い剣を抜き去った。

金髪に刀というなんとも異様な組み合わせながら、の貫祿さえじる堂々とした雰囲気により違和はなく、むしろ自分より斷然の方が型に合ってるのではないかと疑ってしまうほどだ。

「うるさかったなら靜かにする、だからそんな騒なしまってくれないか?」

が刀を抜いた瞬間、エルの纏うオーラが冷ややかなものに変わるが、湊はそれを左手で制し特に気遅れするわけでもなく肩をすくめてみせた。

登校初日から問題ごとなんて起こしたくない、湊は出來る事なら平穏な毎日をんでいるのだ。

まぁ、そんな事は絶対にあり得ないのだが。

「私がそんな事で怒るわけがないでしょう。私が言いたいのはこんな公の場でそ、そそんな破廉恥な事をしないでくださいということです」

金髪のは不機嫌そうに、足を小刻みに震わせているが、湊にはこれといって思い當たる節が無い。

「あの? 何の事? それと、べっぴんさんがそうカリカリするもんでもないよ」

「っ!? 馬鹿にしてるんですか! そ、それですそれ⋯⋯そんないたいけな子供をこんな所に連れ込むなんて⋯⋯それに無理矢理に抱きつかせて⋯⋯最低です⋯⋯私と、勝負してください! 私がを救います。男だからと言って関係ありません!」

は可らしい顔を真っ赤に赤面させ、そう宣言した。

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