《甘え上手な彼2》第2話
*
テスト、それは學生全員が定期的にける、己の學力を計る為の重要なイベント。
夏休みと言う、學生の一大イベントを前に高志はその重要なイベントに向けて、毎日勉強していた。
「えっと……」
「そこはこうするの」
「あ、なるほど」
學校の図書館にて、高志は今年の始めに出來た彼に勉強を教えてもらっていた。
名前は宮岡紗彌(みやおか さや)。
普段はクールで大人っぽい彼だが、高志の前では甘える事が多く、高志自は紗彌がクールだという印象はつい數ヶ月前に消えていた。
「悪いな、勉強教えてもらって。俺って勉強しないと赤點ギリギリだから……」
「別にどうって事ないよ、それにどうせいつも一緒だし、赤點で夏休みに高志だけ補習ってのも嫌だし」
「それもそうだな」
もうすぐ夏休み。
文化祭での出來事を経て、紗彌と高志はより互いを信頼し、互いに引かれ合っていた。
そんな二人を周りの生徒は、憎しみと憎悪を込めて「バカップル」と呼ぶ。
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「家で勉強すると、母さんが邪魔してくるからな……」
「親だもん、気になるんでしょ?」
「それにしてもうちは異常な気がする……」
「まぁ、でも家で勉強すると、必ずチャコちゃんも邪魔してくるからね」
「あぁ、多分だけど紗彌に會えると、はしゃぐんだよあいつ……」
「二ヶ月で、大きくなったよね」
「最近は良く食べるし……良く見つけるし……」
チャコとは、高志が拾った捨て貓だ。
もう飼い始めて二ヶ月近くが経とうとしている。
紗彌に非常に懐いていて、紗彌もチャコを可がっているのだが……高志には一つ、困った事があった。
(あいつ……最近俺が隠してるエロ本見つけ出して持ってくるんだよなぁ……どんだけ鼻が良いんだよ……)
そう、チャコは高志が隠したエロ本を探すのが非常に得意だった。
恐らくチャコにとっては遊び覚なのだろうが、高志にとっては紗彌にエロ本がバレてしまわないかと不安で仕方無い。
「あ、もうそろそろ図書室しまるよ、帰ろ」
「ん、もうそんな時間か……じゃあ行こっか」
「うん」
そう言って高志と紗彌は手を繋ぎ、家に帰って行く。
最初は慣れなかった高志だが、今ではすっかり紗彌と手を繋いで歩く事に慣れた。
「ぎゃぁぁぁ!!」
「待って下さい! なんで奇聲をあげるんですか!」
廊下を歩いていると、目の前に高志の友人である那須優一(なす ゆういち)が汗だくで走って來た。
その後ろには、高志達の後輩で優一に好意を抱いている秋村芹那(あきむら せりな)が優一を追いかけてやってきた。
「高志! 助けろ!! 俺! ピンチ!」
「なんで変な區切り方なんだよ……」
優一は高志の肩を摑み、必死に助けを求める。
「なんで逃げるんですか! 私はただ一緒に帰ろうって言っただけじゃ無いですか!」
「じゃあ、その鞄からちょっと見えてる荒縄は何だ!!」
「こ、コレは……那須さんにいつでも縛って貰えるように……キャッ!」
「キャッ! じゃねーんだよ! このド変態!!」
「はう!! はぁ……はぁ……良いですよ、その言葉責め! もっとお願いします!」
「ヤバイ! 変態には逆効果か!!」
「あ! 待って下さいよ! 那須さ~ん!」
まるで嵐のように現れ、直ぐに消えていった二人。
そんな二人を見て、高志と紗彌は顔を合わせて言う。
「いつも通りだな」
「いつも通りね」
再び、二人は昇降口に向かって歩き始める。
「おーい、紗彌~、八重く~ん」
「あ、由華」
昇降口にたどりつくと、高志と紗彌は後ろから聲をかけられた。
聲の主は門由華(みかど ゆみか)。
高志と紗彌のクラスメイトで、紗彌が一番仲良くしている子だ。
「はぁはぁ……ちょっと汗かいた紗彌……はぁ…はぁ」
ご覧の通り、紗彌を友人という関係以上に好きな、ちょっと危ない子だ。
顔は良いのだが、紗彌を溺する為か彼氏は居ない。
「由華も今帰り?」
「私は今から職員室に用事、紗彌達は今帰り?」
「うん、図書室で勉強した帰りだよ」
「はぁ……八重君が羨ましい……紗彌とずっと一緒で……」
「それは、悪いな……だが、門と紗彌を二人っきりにするのが最近俺は心配なんだが……」
「え、なんで?」
「自分のに聞け」
良き友人なのだとは思うのだが、一つ何かを間違うと、由華は紗彌に何かとんでもない事をするのではないかと、最近心配な高志。
「じゃあね、二人ともまた明日」
「うん、ばいばい」
由華に別れを告げ、俺と紗彌は自宅への道を歩き始める。
高志と紗彌の家はかなりのご近所さんだ。
高志の家の裏手が紗彌の家であり、學校が終わってからも頻繁に會うことが多い。
「夕方なのに暑いなぁ…」
「そうね、もう夏だもんね」
「プールにでも行きたいよなぁ~」
「それは私の水著姿を見たいってこと?」
「えっと……まぁ、見たい」
紗彌の問いに、高志は顔を赤くしながら答える。
答えながら高志は、紗彌の水著姿を想像する。
(スタイルの良い紗彌の事だから、ビキニとか似合いそうだな……)
そんな事を考えていると、紗彌が高志の考えを察したのか、小悪魔のような笑みを浮かべながら、高志に言う。
「高志のエッチ」
「え!? い、いや、なんで?」
「今絶対私の水著姿を想像してたでしょ?」
「うっ……」
鋭い、そう高志は思いながら紗彌から視線を反らす。
すると、紗彌は高志に近づき耳元で囁く。
「じゃあ、高志に一番に見せてあげるね」
「お、おう……」
そんな事を言われて、高志は更に顔を赤くする。
本気で勉強を頑張ろうと、高志はこのとき強く思った。
「じゃあ、後で電話するね」
「おう、じゃあ」
「うん、じゃあね」
そう言って紗彌は裏手の自宅に帰って行った。
高志はそんな紗彌を見送り、自分も家に帰宅する。
「ただいまぁ~」
こんなじで高志と紗彌の一日は過ぎて行く。
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