《甘え上手な彼2》第25話
*
「うーむ……」
「……?」
「いや、おかしくないか?」
土井は學校をうろうろしていた。
しかしおかしい、先ほどまでクラスメイト達が居たはずの昇降口前には誰もおらず、校にも誰も居ない。
「誰も居ないなんて……しかもさっきよりも辺りが暗いような……」
土井は學校の窓から外を見る。
學校の周りの民家の明かりはついているのに、人の気配が全くない。
「もしかして……」
「……?」
人の気配をじない町、そして突然消えたクラスメイト。
その二つの現象を考え、土井は一つの答えを出す。
「集団どっきりか」
「………」
一緒にいたは、土井のその考えに苦笑いをする。
「んだよ~、脅かしやがってよー。でもどうやって四十人近い人間が隠れたんだ?」
「……」
この異常な事態に対して、そんな楽観的な考えをする土井をは可そうな人を見るような目で見る。
「ま、時間が経てばみんな出てくるか。疲れたし休憩するか……」
「……」
土井の問いかけに、は首を縦に振る。
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元々居た教室に戻り、土井はとりあえず椅子に座ってスマホを見る。
「ん? おかしいな……圏外って……」
スマホで誰かに電話をしようと思った土井だったが、スマホは何故か圏外だった。
いつもは學校でも普通に電波は屆くのに圏外はおかしかった。
おかしい。
流石にそう思い始めた土井は顔をしかめる。
そんな土井を見ては険しい顔で何かを訴えようと近づく。
しかし、またしても土井は……。
「おのれあいつらぁ……電波まで屆かないような細工を……」
「………」
は相変わらず楽観的に事を予想する土井に、はまたしても苦笑いを浮かべる。
どうあっても、オカルト的な何かに巻き込まれたという想像をしない土井には頭を悩ませる。
そんな時、教室の外に全だらけのゾンビのような化けが、廊下から教室にってきた。
「う……う……あ………」
「おぉ、すっげーリアルだなぁ~。中は誰だ?」
呑気にそんな事を言う土井。
そんな土井とは対照的に、は険しい表でそのゾンビをの前に出る。
「すっげーな、まるで本だぜ……まぁ、本見たことないけど」
警戒もせず、ゾンビに近づく土井をは腕を摑んで止める。
「ん? どうした?」
「………!!」
首を橫に振り、ゾンビの方に行かないように必死に訴える。
土井は不思議そうな顔をしながら、に言う。
「大丈夫だって、どうせ中は俺のクラスメイトだから」
そう言って土井はゾンビに近づき、ゾンビの肩にれる。
「!!!」
が慌てて土井のもとに駆け寄る。
しかし、土井がゾンビの肩にれた瞬間、ゾンビは目映いを放って消えていった。
「うお! なんだ?」
「!?」
ゾンビは土井達の前から消え、教室は再び土井とだけになった。
こんな不思議な事がおきたら、流石の土井もこの異常事態に危機をじるだろうと、は思った。
しかし、やっぱり土井は……。
「すっげートリックだな! マジックか?」
「………」
相変わらず、まだこの異常事態をドッキリだと思っているらしい。
は土井に驚き、土井に何かを訴えようとジェスチャーを始める。
「ん? 上?」
「……!」
「あぁ、屋上か? 行くのか?」
「!!」
「まぁ、良いけど……屋上なんて行っても何も面白くなんて……」
「!!」
「わ、わかったよ……だから、その……もうし離れてくれない?」
の必死に訴えに、土井は屋上に行くことを承諾する。
土井達の居る教室は二階、ここから屋上までとなるとなかなかに遠い。
教室を後にし、土井とは再び學校を歩き始める。
前を歩くの橫顔を見ながら、土井は頬を緩める。
(かわいいなぁ……)
こんな子が校に居たなんてと思いながら、廊下を歩き三階への階段を上がって行く。
「お?」
「!」
三階への階段を上がろうとした瞬間、またしてもゾンビが三階から下りてきた。
「おぉ、今度は階段に居たのか、しかも今回は制服バージョンか! 凝ってるなぁ~」
心しながらゾンビを見る土井には必死で何かを訴える。
「え? 何? ……あぁ、さっき見たいにれって事?」
の訴えを理解し、土井はゾンビにれる。
すると、またしてもゾンビはを放って消えていった。
「またか……どんな仕掛けか後で聞こ」
「………」
いい加減狀況を理解してしいだったが、土井は相変わらずだった。
三階にやってきた土井は再び違和に気がつく。
「ん? ここから四階に行けなくなってるな……」
三階から四階に行く階段は大量の椅子や機が置かれ、先に行けないようになっていた。
「ここまでやるか?」
肝試し程度でここまでの事をするのかと思いながら、土井はと共に反対側の階段を目指す事にした。
いつもより廊下が長い気がした土井。
流石に會話がないのは気まずいので、に話し掛ける。
「そ、そういえば名前は?」
「………」
は三階の教室にり、黒板に名前を書き始める。
「えっと……瑞希(みずき)か?」
「……!」
は首を縦に振る。
「じゃあ、み…瑞希って呼んでも良いか?」
「!」
の名前を知る事が出來、土井はご機嫌だった。
肝試しに參加して良かったと、土井はこのとき始めて思った。
可いの子と結構良い雰囲気な上に、名前まで知る事が出來た。
(今日は良い日だなぁ~)
その後も土井とは話しをしながら屋上を目指す。
何回かゾンビと會ったが、そのたびに土井がゾンビにれるとゾンビはを放って消えていった。
どんなトリックなのだろうと相変わらずな疑問を浮かべながら、土井は四階への階段を昇り始めていた。
「やっぱりやり過ぎだよなぁ~、今度はこっち側の階段から二階に下れないようになってたし」
「……」
「全く、片付けが大変だろ……」
「……」
土井の危機の無さに瑞希はいい加減に慣れ始めた。
普通ではないこの狀況では、この方が良いのかもしれないと瑞希は思い始めていた。
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