《甘え上手な彼2》第32話

「………」

奈を寢かせた後、大石は一人で酒を飲んでいた。

を家に招いた事など久しく無く、大石はなんだか落ち著かなかった。

壁を一枚隔てて、自分よりも若く綺麗なが寢ていると思うと、妙にそわそわした。

「次は絶対斷ろう……」

大石はそんな事を考えながら、缶ビールを飲み干す。

奈が起きたら、家まで送っていき、奈が起きなかったらソファーで寢ようと大石は考えながら、テレビを付けた。

テレビでは、夏休み特集と題して家族で行くおすすめの観スポットなどを紹介していた。

「家族か……」

自分の歳を考えると、そろそろ結婚を考えなくてはいけない歳になってきていた大石。

しかし、そんな相手がいるわけでもない上に、願もない。

今の生活で十分満足していた大石だったが、大石の親はそうはいかない。

そろそろ孫の顔が見たいと、正月に言われてしまい、結婚を考え始めるようになっていた。

「結婚……か」

「けっこんがどうかしたんれすか~?」

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テレビを見ていると、隣の部屋から顔を真っ赤にさせた奈が起きてやってきた。

「ん? あぁ、すこしは目が覚めました?」

「わらしはよっへまへん!」

「はいはい、酔ってる人は皆そう言います。送って行くので帰りましょう」

「ん~……いやれす!」

「ダメです。々まずいですよ……絶対に無いですけど、噂とかになったら……」

「わらひはそれでいいれす……」

「え?」

奈は瞳に涙を浮かべながら、眉間にシワを寄せて大石に詰め寄る。

「おおいしせんせいは! わらひのことどう思ってるんれすか!」

「え? え、え?? あの……質問の意味が……」

「しつもんしてるのはこっちです!」

「は、はい……」

奈は大石の肩を摑み、揺らしながら尋ねる。

まだ酔っ払っているなと思いながらも、大石は奈の話しを聞き落ち著かせようとする。

「わらひはこんなに好きなのに……」

「は、はい? 今なんと?」

「いいからさっさとぬぎなさい!」

「だから何故!?」

奈は大石を押し倒し、大石の腹の上に乗る。

「だめですよ~おおいしせんせぇ~、こんなをホイホイ家にれちゃ~」

「それどっちかって言うと男の臺詞のような……」

「まぁまぁ、お互いにけっこうなとしですし~こう言う経験くらいありますよね~?」

「人並みにはありますけど、やめましょう! 絶対明日気まずくなります!!」

「それじゃあ私は何のために來たんですか!」

「そんなつもりで來てたんですか!?」

大石は奈の両腕を摑み、奈を引きはがそうとする。

しかし、意外な事に奈の力も強く、膠著狀態(こうちゃくじょうたい)が続く。

酔っ払っておかしくなっているのだろうと思う大石だったが、実際奈の酔いは若干さめていた。

「大丈夫です! ちょっとだけ! 先っちょだけですから!!」

「その言い方始めて聞きましたよ! それに出來ちゃったらどうする気ですか!」

「避妊使えば良いじゃないですか!」

「今は無いので無理です!!」

「私が持ってるので大丈夫です!」

酔っ払っているっせいもあってか、大石は奈に押され気味になってしまう。

力が無くなった方が、この勝負は負けだった。

勢いに任せて若い先生に手を出すわけにもいかないと、大石は必死に抵抗し、逆に奈を押し倒した。

「きゃっ!!」

「あ……」

奈の上に覆い被さる大石。

奈はそんな大石をトロンとした目で見つめる。

「す、すいません……」

「あ……む~」

大石は直ぐさま奈から離れ、奈に背を向ける。

普通の男なら、ここでに恥をかかせないように、そういうことをするのだろと大石は思った。

しかしながら、大石はそんな勢い任せでそういうことをするのがあまり好きではなかった。 奈は大石の背中を見ながら、頬を膨らませて、大石の背中に抱きつく。

「そんなに私じゃ不服ですか」

「いや……そういうわけでは……」

「そうですよね~、私なんて大石先生からしたら子供ですし~」

「誰もそんなことは言ってません……はぁ………勢いまかせに男の部屋でそういうことをするのはどうかと思いますが?」

「………これだけしても気がつかないんですね……」

「え?」

大石は奈の最後の言葉だけ聞き取ることができづ、聞き返した。

すると奈は笑顔で大石に言う。

「大石先生、私は怒りました」

「え……な、なんでですか?」

「先生があまりにも鈍だからです。そして、今夜は安全に寢れるなんて思わない方が良いですよ?」

「そ、それはどう言う……?」

「だって……先生が寢たら、私が襲っちゃいます」

「………あの、さっきから思ってたんですけど……保永先生って……」

「はい、私は食系ですよ」

「……ですよね……」

その夜、大石は奈が再び眠るまで、必死に起きていた。

次の日の朝にはいつもの保永先生に戻ってくれていることだろうと願い、大石は必死に耐えた。

しかし、目を覚ました大石の隣には……。

「……保永先生……」

「はい? どうかしましたか?」

「なぜ、ベッドではなく私の布団に?」

「ダメですか?」

「いや、ダメとかそう言うのでは無く……それとなんで下著なんですか……」

「だって、スーツのママだとシワがついちゃうじゃないですか?」

「もっともですが、自分が見た時は、スーツで寢ていた気がするんですが……」

いで、こっちの布団に來ました! しました?」

「………早く著替えて下さい!」

大石はこの出來事をきっかけに奈の見方をがらっと変えた。

真面目で可らしい新米教師だと思っていたが、実はかなりの食系な奈。

し距離を置こう……」

そう決める大石だったが、そうもいかないことをこの數日後に気づかせられる。

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