《甘え上手な彼2》第42話

大石は素早くその場を離れたことで、難を逃れていた。

「まったく……うちの生徒は馬鹿ばっかりだな……」

大石はそんなことを呟きながら、祭りの中に人混みを歩いていた。

そんな時だった。

「あれ? 大石じゃないか」

「んあ? おぉ。池崎じゃないか!」

「久しぶりだな、三年ぶりじゃないか」

後ろから聲を掛けてきたのは、大石の大學時代の友人の池崎だった。

どうやら家族で來ているらしく、後ろには奧さんと五歳くらいの子供が居た。

「池崎は家族で來てるのか?」

「あぁ、そう言うお前は學校の見回りか?」

「まぁな、教職も結構大変でな」

「大変だな。あ、そう言えば香菜子(かなこ)と會うのは始めてだよな?」

「そうだな、娘か?」

「あぁ、今年で五歳でな……ほれ、挨拶しろ」

「パパ誰? この人」

「パパのお友達だよ」

池崎の後ろに居たの子は、不思議そうな顔で大石を見つめ、大石の前に出る。

「こんにちは、香菜子ちゃん」

「こんにちは! おおいしのおくさんは?」

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「え?!」

香菜子の突然の言葉に大石は、思わず目を丸くさせ、池崎は慌てて香菜子の口を押さえる。

「こ、こら! 何を言ってんだお前は! わ、悪いな大石、気にしないでくれ!!」

「あぁ。いや……子供の言うことだし……それに、その子の言うとおりかもしれん……」

「大石……香菜子、ママと先に行ってなさい」

池崎は奧さんに娘を任せて、大石と二人きりになる。

二人でビールを買い、ベンチに腰を下ろして話しを始める。

「さっきは悪かったな……」

「いや、良いさ。それに、あの子にしてみれば不思議なんだろうな………パパと同じ歳で結婚していないってのは」

「………誰かいい人は居ないのか?」

池崎にそう言われた瞬間、大石は奈のことを思い出した。

しかし、大石は思っていた。

自分と奈は釣り合わないと言うことを……。

奈は大石よりも歳が若く、しい。

言い寄ってくる男は多いだろう。

「……居ないよ……流石に両親も心配して、お見合いや街コンをすすめてくる始末だよ」

「そうか……いや、その……お節介かと思うが……一応心配しててな……お前がこのままずっと一人のままじゃないかって……」

「まぁ……そりゃあそうだよな……いい歳こいて、彼もいないんだから」

奈の気持ちに大石は気づいていた。

しかし、その気持ちに自分は答える自信が無かった。

だから、大石は奈を避け続けた。

先ほどのコンテストを見てもそうだ。

奈は會場の男を魅了するほどの人だ。

自分みたいなおっさんとは到底釣り合わないと思っていた。

「なぁ、お前さえよかったらなんだが……」

「なんだ?」

「……うちの嫁の友達と會ってみないか?」

「は? それって……」

「まぁ、その紹介っていうか……その人、結構人だし、お前と気が合うと思うんだ」

「なるほどな……」

大石は池崎の提案について考えていた。

悪くない話しなのだろうと、大石は思っていた。

歳も近いし、なにより職場以外での出會いなど早々無い。

どうしようかと悩んでいると、突然どこからか聲が聞こえてきた。

「そんなのダメです!」

「え?」

聲の主はコンテストを終えて帰ってきた奈だった。

ムスッとした表で、怒りながら大石の元にやってきた。

「えっと……大石誰だ? その人は……」

「あ、いや……この人は、同僚っていうか……」

「それよりもです! 私が居るのになんで結婚相手の相談なんてしてるんですか!!」

「え?! 別に私と保永先生はそういう仲では……」

「どうせ気づいてるじゃないですか!」

「うっ……」

まさか奈も大石が気がついていることに気がついているとは思わず、思わず狼狽える。

そんな様子を見た池崎は、何かを察してそそくさとその場を離れようとする。

「なんだよ、大石。心配して損したぞ。じゃあ、俺は嫁と子供のとこ戻るから、結婚式には呼んでくれよ」

「あ、おい! 違うんだ! 誤解で……って行っちまったか」

大石は人混みに消える池崎の背中を眺めながら、そんなことを呟く。

奈は大石をジーッと見ながら、頬を膨らませてそっぽを向く。

「あの……保永先生……コンテストは……」

「結果発表まで時間があるので、大石先生を探しにきました」

「あ……それはすいません……こっちも々ありまして」

「ふーん……そうですか」

「あ、あの……」

「なんですか? 怒ってます?」

「はい、怒ってますよ」

「肯定するんですね」

「はい、私は怒ってます」

ぷくーっと子供のように頬を膨らませてわかりやすく怒る奈に、大石は戸ってしまう。

「えっと……どうしたら許してくれます? てか、なんで怒ってるんですか?」

「フン! 自分で考えて下さい!」

大石は奈にそう言われ、奈が何故怒っているかを考える。

最後までコンテストを見なかったからか、それとも奈以外のを紹介してもらおうとしたからだろうか、それとも両方か……。

「保永先生、良い機會ですからお話しておこうと思います」

「なんですか?」

大石は真面目な表奈を見つめ話し始める。

これを機に大石は、自分が奈をどう思っているかを打ち明けようと思った。

々考えたが、それを話すのは今ではないかと大石は思った。

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