《俺の許嫁は!?》63話 君の後ろ姿はかっこよくて

「と……父さん………」

部屋の中にいたのは何かの本を見ていた父さんだった。

父さんは、俺たちに気づくとギロりと俺を睨んだ。

「……なんだ、一、お前がいるんだ?」

父さんは、聲を低くして俺に尋ねる。

「……俺の記憶を戻すために昔の俺の家に來ました。」

俺は、父さんの問いに正直に答える。

父さんは、俺にむける威圧をさらに強くさせる。そのせいで靜香の手がさっきよりも大きく震えだした。

「……もう遅い。お前たちは帰れ。」

「は………」

父さんのその言葉に俺は、何の考えなしに「はい」と答えそうになったが途中で靜香が俺の服の裾を強く握ってくれたおかげでその言葉を呑んだ。

「どうした、さっさと帰れと言ってるんだ。」

「………帰らない……」

俺は、初めて父さんに反抗して言葉を返した。

「……お前が俺に反抗するなんてな……弱蟲だったお前がなかなか長したじゃないか。………だが、言葉じゃどうとでも言える。俺は、お前らを力ずくでこの家から出ていかせる。」

「くっ……」

力の勝負となると圧倒的に俺が不利だ。何せ父さんは、昔から武道を習っていて何度か日本一にすらなったことだってある。世界でも結構有名だ。

そんな相手にまず勝てるわけがない。でも、何もしないで父さんにやられたら父さんの言った通り弱蟲のままだ。俺の後ろには靜香だっているんだ。下手なことは出來ない。

考えろ、何かいい手があるはずだ。

「………と、父さんは、なんで……なんでここにいるの?」

俺は、ふと疑問に思ったことを口に出した。

だが、父さんは、俺の問いに答えることはなくずっと俺を睨んでる。

俺も父さんを睨むようにずっと見つめる。もし、ここで目を逸らしてしまったらそこで終わりだ。

「………ふっ、威勢だけは一人前になりやがって。」

父さんは、そんな俺を鼻で笑いそう呟いた。

「………確かに今の俺に出來ることは威勢を張ることだけ。父さんには絶対に敵わないから。………でも、もう父さんに従うのは止めた。俺は、必ず今のいるべきところをこの手で探してやる!」

俺は、勢い任せでそう言ってみたものの父さんの目は何も変わらず俺を睨んでいた。

すると俺の後ろで隠れていた靜香がすっと俺の前へと出た。

「秀一さん、お久しぶりです。」

靜香は、禮儀正しく禮をする。この作法からすごいマナーを叩き込まれたのだと分かる。

「靜香さん、久しぶり。それでどうした?なにか用か?」

「………このば………一さんのことをあまりバカにしないでいただけると私としては嬉しいです。一さんは………その私にとって……大切な人……なので………」

靜香は、真っ赤な顔をして父さんにそんなことを伝える。

「…………それで靜香さんは、何が言いたいんだ?」

「………一さんは、私にとって大切な人です!だから、私は、そんな人が何かを頑張って手にれようとしているのならそれを手助けしたいです!………だから、もし、秀一さんが一さんの邪魔をしようとするのな私が秀一さんを止めます!それと……あなたの敵は私と一さんだけじゃありません。私の家の者、全てが相手をします!」

靜香は、自分の意見をしっかりと述べ父さんを睨むように見つめる。

父さんは、そんなことを言ってのける靜香の強さに「ほう」と小さく関心の聲をらしていた。

今の俺には靜香の背中がものすごく大きく見えてくる。いつも小さくて可くて時々生意気な靜香だったのに今だけはものすごくカッコイイ。

ははっ、年下に助けてもらうなんてな…やっぱり俺は、父さんに言われた通り弱蟲なんだろうな。

「………靜香、ありがとう。でも、これは俺の問題だ。俺が本當に困った時に助けてしいな。」

「…………あんたがそう言うなら別にそれでいいけど………どうするつもり?」

「………決まってる。父さんが邪魔をするなら力づくで前に進んでやる。」

「ちょ!?あ、あんた本気!?」

「當たり前だ。」

靜香は、「無理よ」っていう顔で俺を見つめてくる。

確かに父さんに勝つなんて今の俺には無理だ。だけど、靜香に任せっきりよりもこっちの方がいいに決まってる。

父さんは、俺の言葉を聞いての端を上げてニヤッと笑った。

初めて父さんのあんな顔を見たな。

「さぁ、來い。お前がいかに弱いか教えてやる。」

「っ!」

俺は、父さんに促されるように毆りかかった。

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