《俺の許嫁は!?》83話 親バカなお母さん
「………お母さん?」
テーブルを挾んで俺の向かい側に座ってきたのは明らかにお姉さんと思えるほど若々しいだ。まさか、この人が優のお母さんなのだろうか。
「もう〜、せっかくお母さんをびっくりさせようと思っていましたのに〜。」
「ふふっ、甘いですよ優。この頃のあなたの浮かれた様子を見たらもしかしたらと予想をして、そして今日、あの嬉しそうな表で出掛けて確信しましたよ。」
「あぅ〜、お母さん、私のこと見すぎですぅ〜。」
「娘のことをよく見ない母親がいてたまるものですか。」
なんだか2人ですごい楽しそうに會話をしている。俺だけ除け者ということは放っておいて母娘の會話が楽しそうで何よりだ。
でも、本當にこの人が優のお母さんなんて。確かに既視はあったからそうなのだろう。
優は、一旦母親との話を終えて俺の隣へと來た。
「それじゃ、お母さん、改めて紹介しますね。この方は私の婚約者の上ノ原一さんです。」
優は、俺のことをもう婚約者として扱っていやがる。どうやら優との空白の數年間をまずは外堀から埋めようとしている。
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今さっきも言ったがまだ婚約者としては早いと思う。
「上ノ原一です。優さんとは友人として付き合わせていただいています。」
俺は、あえて友人の部分を強調して言った。すると優は、ムッと頬を膨らませた。
「久しぶりね、一くん。………本當に久しぶり。」
優のお母さんは、し目を細めてそう言った。
「記憶をなくしているって聞いたけど……大丈夫?」
「あ、はい、俺自は大丈夫なんですが………記憶がないので優さんのこともお義母さんのこともまだよく分かっていない狀況です。」
「そうなんだ………でも、今のあなたが元気そうで良かったわ。私たちとの昔の思い出を忘れてしまったのは殘念だけどまた1から思い出作りましょう!」
優のお母さんは、し寂しそうな表をしたがすぐに笑顔に戻った。
「あ、でも、記憶は時間が経てば戻るそうです。だから、安心してください。」
「そうなんですよ、お母さん。だから私、お兄ちゃんの記憶をなるべく早く取り戻せるようにお手伝いしたいんです!」
「ええ、そうね。……たぶん、一くんも記憶がどんどん混ざっていって大変でしょうからね。」
「そう……ですね。よく分かりましたね?」
「そういう人は、私もしだけど見たことがあるもの。」
「そ、そうなんですか?」
俺以外にもこんなことになっている人がいるのか。
「ええ、自分の知らない記憶が急に頭の中にってきたりそれに関連するものを見ると急な頭痛を起こしたりするという人をよく見てきたわ。」
「俺と全く一緒だ。そ、それでその人たちは記憶がいつくらいに戻ったんですか?」
「早い人じゃ記憶を失ってから3ヶ月くらいで元に戻ったって言ってたわね。遅い人だったら………私が聞いた中で一番遅いのは3年かしら。」
「3年………」
俺が記憶を失ったのはちょうど10歳の時だったから7年前。
「あ、でもね、一くんみたいなものすごく遅いケースもあると思うわよ。私が見たことないだけで。」
俺が落ち込んだのが分かったからか優のお母さんはすぐに取り繕ってくれた。
「は、はい……」
「………あ、そうだ、1つ思い出したことがあったわ。」
「思い出したこと?」
「ええ、記憶を取り戻した人たちは全員こう言ってたの。みんな、全く知らない人たちのなのにほぼ同じことを言ってたわ。『今の自分になるために記憶を失ったんだ』って。」
「今の自分?」
「その意味は、私もよく分からないわ。たぶんその人なりに何か変わったことがあると思うの。」
『今の自分になるために記憶を失ったんだ』………か。
その言葉は、何故か分からないがすごく俺のに突き刺さった。
今の自分になるために………ってことは記憶を失っている今のままじゃダメだって言うのか………
何かを変えなければ俺は変わらない。記憶は戻らない………のか?
「お兄ちゃん、あまり気負いする必要はありませんよ。その人たちが記憶を失っているのは確かですがお兄ちゃんと全く同じ病とは限りませんから。お兄ちゃんは、お兄ちゃんなりに一歩ずつ進んでいったらいいのです。私は、どんなお兄ちゃんでもけれますので。」
「………ありが………」
「さすがは優!人を想う気持ち!素晴らしいわ〜!さすが私の娘!」
俺が優にお禮を言おうとした瞬間、優のお母さんが急に興して優を褒めだした。
まぁ、確かに優の年齢であんな気の利いたことを言えるのはすごいが…………優のお母さんは、あれだな。親バカなんだな。
そんな景を見ると今さっきまで落ち込んでいたのに笑顔になれてしまった。
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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