《俺の許嫁は!?》84話 しかった言葉

「ふふふ、ごめんなさいね〜。取りしちゃったりしちゃって。」

優のお母さんは、親バカ発言から々時間が経ちやっと落ち著いたようだ。

「い、いえ、大丈夫です。優さんは、すごい賢いですからね。親としては嬉しい限りでしょうから。」

「そうなのよぉ〜。この子、本當に賢くて………」

「お母さん………」

「おっと、また喋りすぎるところでしたね。すいません。」

「い、いえ……」

優のお母さんって本當に親バカだなぁ〜。

「ところでお兄ちゃん………今さっきからなんで私のことを優さんなんてよそよそしい呼び方で呼んでいるんですか?」

「………え?」

「この家に來る前と変わらず優と呼んでください!」

優は、プクーと頬を膨らませてそう訴えてきた。

「あ、あはは………」

「笑って誤魔化さないでください。」

「い、いや、だって………」

俺は、チラッと優のお母さんの方を見る。

「あら?もしかして私がいるから呼びにくいのかしら?私は、別に呼んでもらっても大丈夫よ〜。逆に昔みたいに呼んでしいくらいだわ。」

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「そ、そうですか………なら、いつも通りに戻すな、優。」

「はいっ!」

俺が呼び捨てで名前を呼ぶと優は、満足といったような表で頷いた。優のお母さんは、そんな娘を見て微笑んでいた。

「あ、そういえば……あの……お義母さん?のことはなんと呼べばいいんでしょうか?まだ名前が分からなくて……」

「ふふっ、別にお義母さんで構わないわよ。と言うよりも慣れておくためにそう呼んだ方がいいでしょ。」

「え?い、いや……なれる必要が………」

「ん?何かな?」

「い、いえ!お義母さんと呼ばさせていただきます!」

優のお母さんの迫力に負けてお義母さんと呼ぶことになった。

…………なんかどんどん事が進んでいる気がするんだけど………

「あ、でも、一応名前は教えておくわね。天野咲あまのさきよ。これから、娘のことよろしくね。」

「あ、は、はい。」

「ふふふ、はいって返事したわね………」

あ、あれ?お義母さんの様子が……

確かに流れ的にはいって言ったけど………

「それじゃ、まずはこれに名前を書いて!」

お義母さんは、そう言ってもう既に用意していたのかポケットから婚姻屆を出てきた。

「ぶっ!?ちょ、ちょっと待ってください!」

いきなり婚姻屆を出してくるとはさすがに予想してなかった。

「ふふっ、一くんったら照れてるのね。それじゃ、まずは優から書いてあげなさい。」

「はいっ!お母さん!」

優は、目をキラキラとさせてボールペンで普通に妻の欄に自分の名前を書いた。

「はい、これ印鑑。」

「お母さん、用意周到です!」

優は、ポンっと印鑑を押した。

「はい、お兄ちゃん。あとはお兄ちゃんの名前を書けばいいだけです!」

「い、いやいや、急に何言ってるの!?優は、まだ10歳だろ!?結婚できるわけないだろ?」

俺は、そう言って突き付けられた婚姻屆を返す。

「まぁ、確かにまだ結婚はできないけど……保険よ。」

なんの保険だよ……

「…………すいません、やっぱり、俺まだ書けません。」

今度はその場の空気に流されることなくしっかりと斷った。ちゃんと理由もある。

「俺は、まだ記憶を失っている狀態です。優のこともお義母さんのこともまだほとんど分かっていない狀況です。そんな俺が中途半端な気持ちでこれに署名するのはさすがに違うと思うんです。だから、俺は名前は書きません。」

俺は、しっかりと優とお義母さんの方を向いてそう語った。

まぁ、実際お義母さんなんて呼んでいるのはどうなんだって思うけど……あんな迫力で來られたらさすがに怖いからな。仕方ない。

「………そう……そっか………うん……やっぱり、記憶を失っていても一くんなんだな〜。」

お義母さんは、どこか懐かしそうに微笑んだ。

「真面目で優しくて面白くて……やっぱり、一くんはとても素敵な人だね。」

「そうなんです、お義母さん。お兄ちゃんは、記憶を失ってしまったけどお兄ちゃんはお兄ちゃんでとても素敵な人なんです。」

なんだか2人がすごい俺を褒めているように見えるけど……過大評価もいいところだと思う。記憶を失う前の俺は知らないけど今の俺は、勉強は全くダメで家事もほとんど麗華に任せているダメ男なんだから。

「2人とも、さすがにそれは過大評価です。俺は…………」

「ふふっ、やっぱり。」

「ね?お母さん。」

俺がいかにダメなやつか教えようとしたところ笑われてしまった。別にバカにしたような笑い方じゃなかったので何も思わなかったが………なぜ?

一くん今、私たちのあなたへの評価が過大評価って言ったわよね?」

「え、ええ、そうですね。」

「それ、昔の一くんも私たちが褒めているとよく使っていたわ。」

「今さっきも言った通りお兄ちゃんはお兄ちゃんなんです。」

「………変わっていない…………」

本當だろうか。別に優とお義母さんの言葉を信じていないなんてことは無いが………俺自がまだ否定しているからな。

「信じられないって顔ね。」

俺がずっと黙っているとお義母さんからそう言われた。そんなに顔に出ていたのだろうか。

「はい、そうですね。やっぱり、そう言われてしまうと自分にどこか違和があるような気がするんです。モヤモヤするみたいなじです。」

「そっか〜………でもね、記憶を失った人たちみんなも言っていたよ。モヤモヤしたり違和があったりするって。」

「やっぱり、こういうことになるんですよね。」

一くん、言っておくけどそれは普通じゃないからね。」

お義母さんは、今さっきのふわふわとした雰囲気から一転してすごい真面目になった。

「そういうモヤモヤするとか違和があるっていうのは今の自分が嫌だ、記憶を失う前の方が自分らしいんじゃないかって思っているからそういう気持ちになるの。ちゃんと自分を信じなくちゃダメよ。一くん、あなたはあなたなんだから。この世界に1人しか居ないあなたなんだから。記憶があろうともなかろうとも関係ないのよ。」

そこで一拍おきお義母さんは、「ふふっ」と笑う。そして、続けてこう言った。

「そもそも記憶がないのなんて當たり前なんだから。自分のい頃の記憶を今もまだ鮮明に殘っている人なんてそうそういないわよ。ね?」

お義母さんが大人だからだろうか。今のお義母さんの言葉は、今の俺に深く突き刺さった。まだ正直納得してないところもあるけど……でも、その言葉は絶対に忘れないだろう。

「………お兄ちゃん、私からも一言いいですか?」

優は、俺の表を伺うように橫を向いてそう言ってきた。

「あ、ああ、なんだ?」

俺は、まだ戸っているがなんとかそう答えられるくらいには落ち著いてきていた。

「既に何回か言ったのですが……私は、どんなお兄ちゃんでも大好きですので!」

優は、そう笑顔で言ってきた。

「何度でも言いますよ。お兄ちゃんが自分のことで迷っている時は手を差しべます。私の気持ちが伝わらないなら言葉や行で伝えます。だから………お兄ちゃん、私たちを頼ってくださいね。」

この人たちにとって今の言葉は、俺を支えてくれるための言葉なのだろう。でも、俺にとってはそれだけじゃなかった。きっと、2人の言葉は俺が言ってしかった言葉なのだろう。

……………でなきゃ、こんなに泣けねぇもん。

「…………ありがとうございます、お義母さん。ありがとう、優。」

俺は、涙を服の袖で拭ってからちゃんと顔を見てお禮の言葉を言った。

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