朝食をごちそうになった後、俺はそろそろ帰宅の準備を始める。

「もう帰っちゃうんですか〜。」

優は、見てわかるように頬をふくらませていじけていた。

「さすがにそろそろ帰らないと妹からの連絡が止まらないからな。」

俺は、そう言ってスマホを眺める。今さっきから10分置きにラインのほうに妹からの「いつ帰るの？」という連絡が止まらない。

「むぅ〜、妹さんめ〜。…………今度はこちらから挨拶に伺わないといけませんね。」

「い、いや、まぁ、その挨拶は當分後でいいよ。」

俺は、苦笑いを浮かべて優の提案に否定した。

と、その時、部屋のドアからノックする音が聞こえた。

「優様、一様、お車の準備が出來ました。」

そう言って部屋にってきたのは來た時に運転手として優と一緒にいた黒いスーツにを包んだだった。

「ありがとうございます。それでは、お兄ちゃん、行きましょうか。」

「ああ、そうだな。」

俺と優は、黒スーツのの後ろを並んで歩く。そして、玄関に來たところでお義母さんとお義父さんがやって來た。

ちなみに優のお父さんのこともお義父さんと呼ぶことになった。お義父さんからのお願いだから聞く他なかった。

「一くん、わざわざ泊まってもらっちゃって悪かったわね。一くんと久しぶりに話せて楽しかったわ。またいつでも來てちょうだい。」

「私も一くんと話せて楽しかったよ。こちらでも君の記憶が戻る方法を調べてみるよ。それと、昨日の夜話した件をちゃんと考えておいてね。」

「はい、これからの事ですもんね。ちゃんと考えてみようと思います。それでは、お義父さん、お義母さん、本當にありがとうございました。」

俺は、そう言って2人に1禮した。

「それでは行きましょう、お兄ちゃん。」

優は、そう言うと俺の手をぎゅっと握って俺を引っ張った。

「それじゃ、一くん、またね。」

「またいつでも來てくれたまえ。」

「は、はい、それではまた今度！」

俺は、優に引っ張られながらも2人にお別れの挨拶を告げた。

それから俺たちは、黒スーツのが用意したという高級そうな車に乗り家まで帰宅した。

家に著くまでの道のりは、優と々と話して時間を潰した。

そして、家に近づくに連れて優の表はどんどん悲しそうになり家に著いた時にはとうとう俺の腕を摑んでいた。

「…………あの、優さん？離してくれないと帰れないんですが………」

「私、考えたんです。もういっそ、帰らなくてもいいのではないかと。」

「それはダメだろ！」

「やはりですか…………仕方ありませんね。お兄ちゃんを困らせたくはありませんし。」

優は、そう言うと渋々といったじで腕を離してくれた。

「ありがとう、優。まぁ、でもどうせすぐに會えるだろ。優の運會にも行かなくちゃいけないしな。」

「は、はいっ！確かにそうですね。……でも、やっぱり寂しいです……」

「なんだよ、今まではずっと俺いなかったんだから大丈夫だろ？」

「こうやって出會えたからこそ、もう離れたくないんです！」

「そうか………でも、まぁ、そう思ってくれるのは嬉しいよ。」

優の俺を思ってくれる気持ちは本當に嬉しい。

だからこそ、ずっとそばにいる訳にはいかない。だって、離れてないと俺も優とその家族に甘えてしまいそうだからだ。

「…………優………」

俺は、優の目を見て名前を言う。

すると俺の手を握っている優の手の力が弱まった。

「………ごめんなさい………わがまま言ってしまって………」

「分かってくれてありがとう。………あ、そうだ。俺、まだ優に連絡先教えなかったよな？」

「え？あ、は、はい、そうですね。」

俺は、優の返事を聞いてポケットにしまっておいたスマホを取り出す。すると優も自分のスマホを取り出した。

そしてお互い連絡先を換してラインも登録した。

「よし、これでいつでも連絡は取れるな。」

「はいっ！お兄ちゃんの連絡先………えへへ」

優は、スマホを抱きしめ嬉しそうに微笑む。

「運會の詳しい事もこれで教えてくれ。」

「はい、分かりました。初めて運會が楽しみと思えました！」

「は、はは………」

ごめん、優。俺、お義母さんやお義父さんを止められる気がなくなってきた。

「それじゃ、これで本當にお別れだ。」

「………はい………お兄ちゃん、私は、ずっとお兄ちゃんのことが大好きです。」

優は、そう言うと俺に顔を近づけ頬にそっとキスしてきた。

「えへへ………それではまた今度です！」

優は、照れた笑みを浮かべて車に乗り込んだ。

俺は、キスされたことに驚き目を點にさせて優たちが去っていくのを眺めていた。

「……………これはといえる………のか？」

俺は、そんな疑問を抱きつつ優にキスされた頬の部分をるのだった。