『まもなくヶ丘小學校の運會が始まります。』

そんなアナウンスとともに明るい音楽が流れ始めた。

『場！』

アナウンスのそんな聲とともに場門から著をにまとった子どもたちがやってくる。

「本當にすごい人數だな。この中から優を見つけられるかな？」

俺は、そんなことを呟きながら場してくる子どもたちの中から優を探す。

「優ならまだ來ないわよ。まずは1年生から場してくるからね。」

そんな俺に向かってお義母さんがそう教えてくれた。

「それに著の後ろに名前が書いてあるから案外すぐに見つかるぞ。」

お義父さんもお義母さんに付け加えるじで教えてくれた。

確かに今、場している1年生の著の後ろに名前が大きく書かれた紙がられてある。

1年生が場して約10分。ようやく全ての1年生が場し終えた。

すると音楽が一旦止まった。

『1年生はテントへと行ってください。』

アナウンスが流れると1年生は自分のテントへ走っていった。

そして、1年生が全員席に座り終わると今さっきとは違う音楽が流れて場門からおそらく2年生と思われる生徒たちが場してきた。

1年生の場が始まってから約30分後。

3年生が自分たちのテントへと戻り席に座ると音楽がまた流れ始めた。

するとお義父さんとお義母さんが立ち上がりカメラとビデオを用意した。しかもどれも高そうなやつ。

「あ、あの、今さっきも注意したようにあまり暴れないでくださいね。」

「ははっ、大丈夫だよ。」

「そうよ、一くん、心配しすぎよ。」

そりゃ心配するだろ。優があんなに嫌がるんだから。

「……………」

「ん？」

なにか後ろがガチャガチャと音がする。気になって振り返ってみるとそこにははしごを用意している園江さんがいた。

「あ、あの、園江さん？何をしてるんですか？」

「優様を1番綺麗に寫せるポジションを取っているだけですよ。」

「くっ、さすが、園江ね。やることがいつも姑息な！」

「そうだぞ！今すぐそのはしごから降りて私に貸しなさい！これはお前を雇っている主人としての命令だ！」

「私の一番の主人は優様です。その優様の晴れ舞臺となればいくら旦那様の命令であろうと聞くわけにはいきません。」

「「ぐぬぬ………」」

園江さんがはしごの上からドヤ顔をしているんだが………

優は、園江さんのこと、何も言ってなかったけど園江さんは別にいいのかな？

そんなことを思っていると園江さんは、ポケットから何かを取り出した。

「………あの、それはなんですか？」

「これは優様にこのような行をしてないことを知られないように変裝をしているのです。」

そう言って俺に見せてくれたのはマスクとサングラスといういかにも怪しいヤツが付けそうなものだった。

「そ、そんなの付けて大丈夫なんですか？」

「學校にはもう申請してあるから大丈夫です。」

準備は萬端ってか。

「本當にいつも姑息な手を……こうなったら園江に負けないくらいの優の寫真を撮ってあげるんだから。」

「ああ、そうだな。運會の後、誰が1番上手く優を取れたか見せ合いっこするからな。」

うわぁ、2人もさらにやる気を出してきた。

「一くんは、優の寫真撮らなくていいの？」

「え？俺？」

確かにせっかくの優の晴れ舞臺だしな。俺もちょっとくらいなら撮ろっかな。

俺は、そう思いポケットからスマホを取り出した。

「あら、そんなカメラでいいの？」

「はい、大丈夫です。」

「そっか。なら、一くんにも負けないように張り切って優の姿を撮らないとね。」

あ〜、そんなに張り切らなくてもいいのに。

まぁ、でももう多分、止められないよな。ごめんよ、優。

俺は、心の中で優に謝りながら場してくる4年生たちに目を向けた。

おっ、いたいた。案外すぐに見つかるもんだな。

頑張って行進してるな……って、ちゃんと撮らなきゃ。

俺は、優に向けてカメラを向ける。

「うん、いいのが撮れ………」

「いいわよ〜！優〜！すっごい可いわよ〜！」

「ちょっ！？」

「優〜！ちゃんと優の晴れ姿、パパ、見てるからな〜！頑張れ〜！」

優の頬がみるみる赤くなっていく。

周りの親からは、クスクスと笑われている。

はしごを使ったいる園江さんは、ずっとカシャカシャとシャッターを切ってるし。

ごめん、優。こんなの、どうやっても止められない。

その後、優の行進が終わるまでずっとお義父さんとお義母さんの応援が続いたのであった。