《俺の許嫁は!?》132話 今さら変えられない

優奈と付き合い始めてから初めての週末。

がいるのだから休日はいつものようにゴロゴロしているわけがない。

初めて彼が出來て休日、もうデートしかない。

初デートだ!楽しみだなぁ〜。

「………ってなってると思っていたのに………」

俺は、誰にも聞こえないように小聲でそう呟いた。

なぜ小聲なのかって?このものすごく居心地の悪い空間のせいに決まっている。

俺は今、優奈、靜香、優という強烈なメンバーと一緒に四角いテーブルを囲むように座っている。

なぜこうなったかと言うとそれを説明するには2日前、木曜日の放課後に戻る。

いつも通り優奈と2人きりで帰っていた時だった。優奈がこんな提案をしてきた。

「ねぇ、一くん。今度の土曜日に靜香ちゃんと優ちゃんに會えないかな?」

そう聞かれた瞬間、背筋に悪寒が走った。

なぜそうなったのかは分からない。でも、分かることはひとつだけ。

………………絶対に無理!

「………ど、どうして?」

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「ん〜?當然でしょ?私が一くんの人になったんだからちゃんとそれを報告しなきゃ。」

「そ、それなら俺の方でやっておくよ!わざわざ優奈がする必要……」

「あるよ。」

優奈は、俺の言葉にわざと重ねるようにそう言った。

やはり、今、3人を會わせるわけにはいかない。

ここは彼氏である俺が何とか優奈を説得しなきゃな!

と決めたものの俺の説得虛しく今、この場にみんなが揃うことになってしまった。

この重たい空気の中、最初に口を開いたのは優だった。

「久しぶりにお兄ちゃんに會えて私、とっても激です。」

優は、空気を読んでそんなことを言ったのかそれとも全く読まずに自分の思ったことを素直に言ったのかどうかは分からない。でも、まぁ、しだけ話しやすい空気になったのは確かだな。

「あ、ああ、俺も優と久しぶりに會えて嬉しいよ。」

俺がそう言うと優は、嬉しそうにパァーっと笑った。

じろりと優奈から鋭い視線が刺さったがまぁ、いいだろう。いや、良くないのかもしれないがな。後で機嫌取っとかないと怒られそうだ。

「………それで?今日はなんのために呼ばれたの?」

次に口を開いたのは不機嫌そうな靜香だった。

そして、それに応えたのは今日、この場を開いた優奈だった。

一くんからある程度の話は聞いています。あなたたち2人が一くんの許嫁ということを。」

「ええ、そうですね。」

「私はもう違うけどね。」

優は、確かにそうだと言うように笑顔で答える。靜香は、そっぽを向き違うと答える。

「では、単刀直に言いますね。私は、今週の月曜日に一くんと付き合うことになりました。」

「「……………」」

優奈の言葉に2人は、無言だ。

優は、笑顔を崩していないが目を開いて俺と優奈を互にゆっくりと見ている。靜香は、相変わらずそっぽを向いている。あ、いや、なんか気にしたようにこっちをチラチラ見てる。

「ですので、一くんから手を引いてくださいね。」

「………何か勘違いなされてるようで。」

優が今さっきよりもし重たい雰囲気を醸し出すような聲音で話す。

「私とお兄ちゃんを許嫁にされているのは私の両親とお兄ちゃんの両親ですよ?なので私たちに手を引けというのは間違いではないでしょうか?」

「もちろん後から優ちゃんと親と一くんの親にも話をするよ。でも、その前にちゃんとこうやって話しておく必要があるでしょ?」

「私にとっては無駄ですよ?結局お兄ちゃんは私が取っちゃうんですから。」

「ん〜?優ちゃん?何を言ってるの?一くんは私と付き合ってるんだよ?」

「はい、そうですね。………今は。」

2人の視線がバチバチと火花を散らすように激しくぶつかっている。

俺は、そんな2人から視線を逸らし靜香に話しかけた。

「そういえば靜香、この前はありがとうな。」

「なんのお禮よ?」

「俺を勵ましてくれただろ?それのお禮だよ。」

「別に……ただ……まぁ、元気になって良かったわ。」

「ああ、ありがとう。本當に靜香には世話になりっぱなしだな。」

「これくらいいつでも力になってあげるわよ。」

「………ありがとう、靜香。でも、世話になりっぱなしも悪いしいつかお禮するから。」

「………ええ、期待してるわね、一。」

「「はっ!?」」

今さっきまで睨み合っていた優奈と優がこっちに反応を示した。

「な……な…………」

「ど、どうしたんだ、優奈?」

「靜香さん!?どうしてお兄ちゃんのことを名前、それも呼び捨てで呼んでるんですか!?」

優の言葉に優奈も頭を縦に何回も振っている。

「え?今さら?」

「い、今さらって……お兄ちゃん!どういうことですか!?」

「ど、どういうことって………結構前からそう呼ばれてたんだけど……」

「あれ?出會った初日から呼んでなかったっけ?」

「いや、最初らへんはあなたとか、ちょっととか、ねぇとか名前で呼ばれたことは無かったな。」

「あ〜、確かにそうだったわね。まぁ、もう過去のことだし別に気にしないでよね。」

「分かってるよ。ってか、呼び方なんてどうでもいいし。」

「よくないよ!」

「いいわけありません!」

俺の言葉に優奈と優が強く反対した。

「私は、まだ一くんなのに………」

「私は、お兄ちゃんって呼び方、気にってるんですが………」

2人とも、不服そうだ。

「まぁ、どんなに反対されても今さら私は変えるつもりはないわよ。変えるんなら気にしてるあなたたちの方を変えなさい。」

靜香は、そう言い切るとふんっ、と言ってそっぽを向いた。

「「……………」」

2人とも、靜香にそう挑発されたからか下を向いて何やらブツブツと呟いていた。

「……………えっと、これ、まだ続くの?」

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