「………お兄ちゃんはどうしたんですか？」

「………倒れた。」

優ちゃんのお父さんがそう言った瞬間、私はすぐにはその言葉の意味が理解出來なかった。

でも、この場で1人だけすぐに行に出た人がいた。

「っ！一！」

靜香ちゃんだ。

靜香ちゃんは、すぐに部屋から飛び出しどこかへ走ってしまった。

「靜香さん、待ってください！」

その後ろを優も追いかけた。

私も2人の行を見てようやく我に返った。

でも、この屋敷のことをまだよく知らない私は、まずは優ちゃんのお父さんに何があったのか聞いてみた。

「あ、あの、一くんに何かあったんですか？」

「………あるものを見てたら気分が悪くなったらしく倒れてしまったんだ。………それより君は……水城優奈さん……かな？」

「は、はい。どうして私を？」

「優の運會の時、見かけたことがあるからね。それに一くんとお付き合いをしているんだよね？」

「っ！………はい。」

「………うん、一くんが言ってた通り、とても優しそうな人だね。」

一くん、私たちのことを伝えてくれてたんだ。

だとしたらきっと私は……

「別に恨んでなんかないからね。」

「え？」

「優の許嫁だったのにそれを奪ったんだから恨まれても仕方ないっていう顔をしてたからね。違ったかな？」

「………いえ、その通りです。………でも、どうして……」

「一くんにも言ったんだけどね、私たちは一くんの幸せも大事なんだ。まだ一くんと再會できて1年も満たないけど私たちにとって一くんはとても大切な人になったんだ。もちろん、優と結ばれて幸せになってくれたら一番嬉しいけど一くんにとって一番の幸せは君のいることらしいからね。大切な人が幸せになってくれてるんだから恨んだりなんか絶対にしないよ。」

その言葉はとても素敵で、優ちゃんのお父さんがどれだけ優しい人なのかを表してくれている。

でも、一つだけ気になるところがあった。

「あの、一つだけいいですか？」

「ん？なにかな？」

「一くんと再會したって言ってましたけど……前に會ったことがあるんですか？」

「っ！………私としたことが……」

「會ってたんですよね？なら、一くんが倒れたのにはそれを原因があるんですか？」

「…………申し訳ないがこのことは私の口からは言えない。一くんに聞いてしい。」

優ちゃんのお父さんは、真剣そうな表でそう言ったあと、私に向かって頭を下げてきた。

それほど深刻な問題なんだろうか。

様子を見るに何かあったのは分かる。

でも、それを優ちゃんのお父さんは教えてくれない。

「………分かりました。あの、申し訳ございませんが一くんがいる場所に案してもらえないでしょうか？」

「全然大丈夫だよ。それじゃ、ついてきてね。」

私は、今聞きたいことは全て聞けたので一くんの元へ向かう。

優ちゃんのお父さんが連れて來てくれた部屋にはベットに一くんが寢ていてそのそばに優ちゃん、靜香ちゃん、もう1人綺麗ながついていた。恐らく綺麗なは優ちゃんのお母さんだろう。

私は、その3人のように一くんのそばにつく。

「……一くん……」

一くんが眠っている姿は、私には苦しそうに見えた。苦しそうで辛そうで……何かから逃げるように……

私は、布団から出ている一くんの手をそっと摑み自分ののところまで持ってきた。

早く元気になって。そう思いながらギュッと握り続ける。

私を見て反対側にいる優ちゃんと靜香ちゃんは2人で私が握っている反対側の手をそっと握った。

すると、一くんがうなされ始めた。

「う……うぅ………」

「一くん………」

「一………」

「お兄ちゃん………」

私たちは、一くんの辛そうな聲を聞きしだけ一くんの手を握る力を強めた。

「………み……ゆう………」

「っ！」

「………お兄ちゃん……」

「…………」

一くんの口から出た言葉は優ちゃんの名前だった。

その事に私は心臓を剣で刺されたような痛みが走った。優ちゃんは優ちゃんでし悲しそうな表だった。靜香ちゃんは、そっと目を閉じている。

「………く………そ……」

一くんは、なにか悔しそうに顔を歪めている。

それと同時に優ちゃん、そして、優ちゃんのお父さんとお母さんも辛そうな顔をした。

「………お兄ちゃん、私はあの時のことはもういいんです。本當に……大丈夫ですから。」

優ちゃんの様子は一くんと楽しく話していた先程までとは全く違ってとても辛そうに眠っている一くんに対して話していた。

本當に何があったのだろうか。

靜香ちゃんも何か知ってそうな雰囲気があるので私だけが蚊帳の外にいる。

正直一くんのことは私が一番よく知っていると思っていたから私だけが知らないことがあるということが辛かった。

「一くん……私は、何があったってけ止めてあげるからね。」