《甘え上手な彼3 秋編》第2話
*
繁村祐樹(しげむら ゆうき)は高志のクラスの男子生徒で野球部に所屬している。
部活も勉強もまぁまぁの績であり、どこにでもいる普通の男子生徒なのだが、一つだけ悩みがあった。
「あぁ……彼しい」
「お前はそればっかりだな」
繁村のつぶやきに橫から口を出したのは、高志のクラスの赤西健輔(あかにし けんすけ)だ。
赤西はサッカー部の所屬しており、部活終わりが一緒なので、一緒に帰宅する事が多い。 たまに卓球部の土井も加わるのだが、最近はあまりない。
繁村と赤西はユニフォーム姿のまま、鞄を持って帰宅している。
「さっきさー、高志と宮岡が手繋いで一緒に帰ってるの見たんだよ……」
「俺も……良いよなぁー」
繁村の言葉に、赤西はため息じりに答える。
二人とも彼居ない歴が年齢と同じであり、彼というものに憧れがあった。
しかし、この二人……全くモテない。
「なぁ、高志にあって、俺に無いものってなに?」
「え、不細工だからじゃね?」
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「赤西……それは言わない約束だろ……」
「じゃあ、エロいから?」
「そんなん男全員だろ」
「じゃあ……キモイから?」
「お前は心にぐさっとくる事を平気で言うな……」
しょうもない話しをしながら、繁村と赤西は道を歩く。
夏も結局人は出來ず、二人は寂しい夏休みを過ごした。
しかし、クリスマス前にはなんとか彼を……と思っている二人だが、そんな兆しも一切無い。
しかし、二人には希があった。
それは二週間後にあるクラスマッチである。
運部の二人にとっては、これ以上ないイベントであり、得意分野を生かして子にアピール出來る絶好の機會なのである。
「二週間後のクラスマッチ……がんばらないとな!」
「あぁ! 子にアピールする絶好の機會だ……絶対に活躍するぞ!」
夕焼けの傾いてきた空の下で、繁村と赤西はやる気に満ちあふれていた。
流石は運部、育會系特有の論で気合いをれている。
しかし……。
「そう言えば、お前のとこの野球部は夏の大會どうだった?」
「初戦敗退! お前のサッカー部は?」
「初戦敗退!」
「「………」」
本當にこんな自分たちが活躍出來るのか、二人はし不安になってきた。
*
放課後、教室には數名の子生徒が殘っていた。
部活にっている訳では無く、子生徒はお喋りをするために、遅くまで教室に殘っていた。
その中の一人に朋香は居た。
短いスカートに、バッチリのメイク。
紗彌や由華に隠れてあまり目立たないが、と言って間違いのない顔立ちをしている。
「ねぇねぇ、朋香と赤西って小學校から一緒なの?」
「いきなり何よ?」
ショートカットのクラスメイトに尋ねられ、朋香は不思議そうな表で尋ねる。
「いや、なんか仲良いし。本當は付き合ってるのかなって」
「はぁ? なんで私があんな男と……」
「いや、喧嘩するほど仲が良いっていうし」
「そんなわけ無いでしょ、変な誤解しないでよ」
呆れた表でそう言う朋香。
朋香と赤西の関係は、クラス中が知っていた。
子の中心にはいつも朋香が、男子の中心には赤西が居た。
だから、クラス中が二人の中の悪さを知っていた。
「大、あんなモテない男のどこが良いっていうのよ」
朋香はそんな事を言いながら、スマホを作する。
「まぁ、朋香はモテるからね、赤西なんて眼中に無いわよね?」
「そうよ……あんな男」
そういう朋香のスマホの連絡先には「赤西健輔」の名前があった。
*
高志と紗彌が家に帰宅し、二人で高志の部屋に居た。
相変わらず仲の良い二人は今日も共に帰宅し、そのまま部屋二人の時間を過ごしていた。 そんな二人が何をやっているかと言うと……。
「チャコちゃ~ん、よしよ~し」
「次はこれを著せてみようぜ」
貓のチャコに服を著せて、記念撮影の真っ最中だった。
も段々大きくなってきたチャコ。
貓用の洋服があると知った高志と紗彌は、前の休みに二人で買ってきたチャコ用の服を代わる代わる著せて、スマホの寫真で撮影しまくっていた。
「にゃ………」
著せ替えされるチャコはし迷そうに短く鳴いた。
紗彌の膝の上に座りながら、チャコはなされるままに服を著る。
「そういえば、高志ってクラスマッチはソフトボールとバスケに出るの?」
「そうだけど、なんでだ?」
「ん、帰宅部なのに頑張るなーって思って」
「まぁ、これでも中學は運部だったから、しは頑張れるかと思ってさ」
「そっか、じゃあ応援に行くから、頑張ってね」
「お、おう……俺も紗彌の事応援に行くから」
「ありがと、優勝出來ると良いね」
「そうだな……ま、繁村達は別の理由で張り切っていたが……」
繁村達が張り切る理由を高志と紗彌も知っていた。
繁村のやる気の出しどころに呆れつつも、そういう時のクラスの男子の団結力の高さを知っている高志は、結構良いところまで行くのではないかと予想していた。
「でも、高志には関係ないもんね」
「あぁ、俺には紗彌が居るし……」
「そうだよ。私が居るのに浮気なんて許さないから」
「しないって、俺は紗彌が……一番……だからさ」
「高志……」
「紗彌……」
良い雰囲気になり見つめ合う高志と紗彌。
部屋には二人と一匹。
夏を経て更に仲の深まった二人のは更に強くなっており、自然と二人の距離が近くなって行く。
顔を赤らめながら、紗彌は目を閉じ、その意味を理解した高志がしづつ紗彌のに自分の口を近づける……そして……。
きぃ………。
「………」
「………」
「……親父」
「………すまん」
あと數センチと言うところで、部屋のドアが鳴り、ドアの隙間から部屋を覗いていた高志の父親と高志の視線が合う。
「覗いてんじゃねぇよ!! なんなんだ! うちの両親は!」
「ご、誤解をするな息子よ! 私は息子の息子が暴走して、息子が紗彌ちゃんを傷にしないか心配で……」
「余計なお世話だ! 出て行けぇ!!」
今日も八重家は平和であった……。
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