《甘え上手な彼3 秋編》第4話

「んで、ここが視聴覚室。まぁ、そこまで使わないけどな」

「あ、ありがとう……」

「なんか疲れてないか?」

「う、うん……しね」

高志は晝休み、泉を連れて學校を案していた。

泉はクラスの異様な雰囲気に慣れることが出來ず、既に疲れきっていた。

「まぁ、しうちのクラスは変わってるからな」

しどころじゃない気が……」

二人がそんなことを言いながら、教室に戻っていた。

その途中、高志と泉の前を優一が猛ダッシュで駆け抜けて行く。

「ん? 今のは優一か?」

「えっと……確か同じクラスの人だよね? あんなに急いでどうしたんだろ?」

「まぁ、なんとなく察しがつくけど……多分もうすぐ……」

「優一さぁぁぁん! なんで逃げるんですかぁぁ!!」

「ほら來た」

「?」

高志がそう言うと、目の前からまたしても猛ダッシュで誰かがやってきた。

今度は子生徒のようで、手にはないかを持っている。

「よう、芹那ちゃん」

「あ、八重先輩! こんにちは!」

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走ってきたのは優一の彼の芹那だった。

高志が聲を掛けると、芹那は立ち止まりしっかりと挨拶をする。

「あれ? 今日は紗彌さんじゃなくて、男の人と一緒なんですね!」

「いや、いつも紗彌と一緒って訳じゃ……無いことも無いな……」

よくよく考えると芹那の言うとおりでことに気がつく高志。

ぽかんとしている泉を見て、高志は芹那を紹介する。

「あぁ、ごめんごめん。この子は一個下の一年生で、秋村芹那ちゃん。んで、こっちは今日転校してきた泉だ」

「秋村さん、よろしく」

「よろしくお願いします! 泉先輩!」

「そう言えば、優一を追いかけなくて良いのか?」

「あ! そうでした! 今日こそは……ウフフフフ」

どこからともなく取り出した荒縄を持って、芹那は不気味に笑う。

優一の逃げていた理由を何となく察した高志は苦笑いをした。

「それじゃあ、私はこの辺で!」

「お、おう。ごめんね、呼び止めちゃって……」

「いえ、大丈夫です! 優一さんの行くところは、このGPS昨日で分かりますから!」

「それって発信機……」

「それじゃあ、先輩方! 私はこれで!」

芹那はそう言って、再び優一を追いかけ始めた。

「ね、ねぇ八重君……彼はなんで荒縄を?」

「いや……その……気にしない方がいいよ?」

「えっと……那須君は彼と付き合ってるの?」

「う、うん。まぁ……」

「なぜ目を反らすんだい?」

芹那がかなりのドMなんだとは言えず、高志は話しを反らして教室に戻る。

そして、教室に戻ったら戻ったで、待っていたのは男子と子の熾烈な戦いだった。

「おいコラ西城! いい加減にしろよ! 俺たちのどこが馬鹿で気持ちが悪いんだよ!」

「いや、全部だけど? 屈み貸してあげようか? 不細工が寫るから」

「あ、本當だ……じゃ、ねーだろ!! そういうことを言ってるんじゃねーんだよ!!」

またしても朋香と赤西らしい。

毎回よく懲りずにやるものだと高志は思いながら、そーっと泉を連れて教室の自分の席に戻る。

「あの二人は仲がメチャクチャ悪くてな……この喧嘩も日常茶飯事なんだ」

「そうなんだ……でも、なんで仲が悪いの?」

「それは俺も知らないんだが……昔かららしい」

高志と泉はそんな二人の様子を教室の隅で見ながら、食事を始める。

「はぁ……お前も昔はなぁ……」

「何よ」

赤西はため息を吐きながら、朋香を見て何かを思い出す。

そして肩を落としながら話し始める。

ってもんは、歳を重ねるごとに……」

「何が言いたいのよ、煮え切らない男ね」

「別にぃ~、年取るごとに可げが無くなると思っただけだよ~」

「はぁ!? アンタ、そんなにぶん毆られたいの?」

「可子はそんな事いいませんー! これだから可げの無いは……」

「うるさいって……言ってんのよ!!」

「あうっ!! あぁ……お、お前……俺の息子を……」

「うわー痛そ……」

朋香は赤西の言葉にとうとう我慢できづ、赤西の玉を蹴り上げる。

男なら誰でも一度は経験したことのある激痛に、その場の男子は顔を曇らせる。

「ふん!」

朋香はそのまま教室を出て行ってしまい、今日も勝者は朋香で幕を閉じた。

クラスの生徒達は、何事もなかったかのように食事に戻る。

そんな景にも泉は違和を覚える。

「み、みんな慣れてるんだ……」

「まぁ、泉もそのうち慣れるさ……」

「そ、そうなのかな……」

とんでもない學校に転校して來てしまったと考える泉であった。

放課後、高志は帰宅の準備をしていた。

いつものように紗彌と一緒に帰ろうと、紗彌に聲を掛けたのだが……。

「え、委員會?」

「うん、ごめん……」

「いや、謝ることないよ、そりゃあ実行委員だもんな……」

「うん、今日から忙しくて……」

「いや、気にしなくて良いって、そっかそっか、じゃあ待ってるよ」

「え! 遅くなっちゃうよ?」

「いや、大丈夫だよ。どうせやることもないし」

「本當に?」

「あぁ、紗彌を暗い夜道に一人にするほうが心配だよ」

「高志……」

「紗彌……」

見つめ合い、いつものようにイチャつく高志と紗彌。

クラスの男子はそんな姿を嫉み、嫉妬の炎を燃やし、子はそんな男子に軽蔑の視線を向ける。

「くそ! 高志のやつ!!」

「相変わらずイチャイチャしやがってぇ~」

「うらやまけしからん!」

「アホね」

「ホント男って馬鹿よね」

そんな教室の狀況を見ていた泉も、嫌でも高志と紗彌の関係には気がつく。

「八重君も結構大変なのかもな……」

イチャイチャする高志と紗彌を見ながら、泉も肩を落とす。

そろそろ帰ろうと、泉は鞄を持って教室を出る。

すると……。

「きゃっ!」

「うわっ!」

教室のり口で泉は誰かとぶつかってしまった。

泉はしよろけただけだったが、ぶつかった子生徒は倒れてしまった。

「ごめん! 大丈夫?」

泉は直ぐさま倒れた子に手を差しのばす。

「あぁ、ありがとう。ごめんねぇ~」

そう言って顔を上げたのは由華だった。

笑って答える由華を見て泉はドキッとした。

「おぉ、転校生君じゃん! 學校早く慣れるといいねぇ~、じゃあまた明日ね~」

「う、うん……また……」

泉は廊下を駆けて行く由華の背中を見つめながら、しの間ぼーっと立ち盡くす。

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