《甘え上手な彼3 秋編》第5話

「っち! 西城の野郎!!」

「おい赤西! しっかり練習しろ!」

「うるせぇ! お前らも練習してないだろ!」

「あ、バレた?」

赤西は部活中にもかかわらず、グランドの隅でサボっていた。

赤西の所屬するサッカー部はあまり強くもなく、練習もそこまでキツくない。

無理せず頑張るがもっとうのサッカー部だ。

「なぁなぁ赤西!」

「なんだよ」

「お前のクラスの西城って彼氏居るの?」

「はぁ? 居るわけねーだろ。それとなんで俺に聞くんだよ」

「いや、お前って西城と馴染みなんだろ? 俺、西城に告ってみようと思ってさ……」

「お前マジか!? あんな暴力のどこが良いんだ?」

「いや……その、可いじゃん……結構キツい格も良いし」

「やめておけって、そんな事より他に可い奴を見つけてだな……」

「なんだ? もしかして、お前も狙ってるのか?」

「はぁ?」

同じ部の友人からの言葉に、赤西は何を言っているんだこいつはといった表をする。

「俺が? 西城を? ないない、あの西城だぞ」

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「そうなのか? なら安心だ。それじゃあ俺、明日告ってみるよ」

「いや、お前俺の話聞いてたよな!? なんでそうなるんだよ!」

「いや、実はお前が西城と付き合ってないかを確かめるためにちょっと話しを聞いたっていうじなんだ」

「そう言うことかよ……まぁ、頑張ったら」

「なんだよ、チームメイトが意中の相手に告白しようとしてるのに、冷たいなぁ~」

「俺にとってはどうでもいい話だからな、それよりソロソロ練習しないと、キャプテンが怒るぞ?」

「それもそうだな」

そろそろキャプテンに怒られてしまうとじた赤西は、練習に戻って行く。

赤西は西城の事を昔から良く知っていた。

だからこそ、あれだけ強く言えるのだ。

「西城……昔は可かったがなぁ……」

昔の事を思い出しながら、赤西は今日もボールを蹴り始める。

高志は紗彌の委員會が終わるのを教室で待っていた。

待っている間、スマホでゲームをしたり寫真の整理をして時間を潰す。

「今年も後三ヶ月で終わりかぁ……々あったなぁ……」

寫真を見ながら、高志は今年の出來事を思い出す。

紗彌と付き合い。

文化祭が有り。

夏休み前には、自分が原因で紗彌を悲しませてしまったりと、本當に々あったんだと高志は振り返る。

スマホの寫真は、紗彌とチャコの寫真がほとんどで、何度見ても飽きない。

「お待たせ、高志」

「あ、紗彌。もう終わったのか?」

「うん、お待たせ、帰ろ!」

「そうだね、チャコが寂しがってるかもしれないしな」

「ウフフ、そうね」

夕焼けが沈み始め、暗くなり始めた道を高志と紗彌は手を繋いで歩く。

電車もいつもと乗る時間が違うため、し人がなく座って帰る事が出來た。

紗彌と高志は、いつも通り仲良く話しをしながら自宅までの道を帰る。

こんな帰宅の時間もあっという間にじてしまうほど、二人に取っては至福のひとときの一部だった。

「そう言えばね、委員會に行ったら々聞かれちゃった」

「え? 何を?」

「んっと……高志のどこが好きかとか、もうキスはしたのかと」

「な、なるほどな……他のクラスの奴らも居るもんな……そうなるのか……」

恥ずかしい反面、高志は紗彌と付き合っていると言う幸せがなんだか誇らしかった。

「高志の事、優しくて良い彼氏だねって言われてね。私、嬉しかったよ」

「そ、そうなのか? そんな事を言ってくれる人も居るんだな……」

今までは男子からの嫉妬や口くらいしか耳にってこなかった高志だが、こうして良いことを言ってくれる人も居るんだと思うと嬉しくなる。

「でも、私ね……そう言われた時、し不安になっちゃった」

「え? なんで?」

「だって……夏休みの時みたいに、また高志が……取られちゃう……」

顔を赤らめながらそういう紗彌に、高志はがきゅんとなるのをじた。

顔を赤くしながら恥ずかしそうにしている紗彌を見て、高志はやっぱり紗彌は可いなと改めて思う。

こんな表を見せられては、絶対に浮気など出來ないし、しようとも思わない。

「だ、だからね……きょ、きょうは……その……私の家に來ない?」

「え……え!? さ、紗彌の部屋!?」

「う、うん……」

もう付き合って四ヶ月になろうとする高志と紗彌だが、毎回一緒に遊ぶ時は基本的に高志の部屋が多い。

紗彌の部屋など、數回ほどしかった事がない高志は、今日の紗彌が何を考えているのかがわからなかった。

「い、良いけど……でも、お父さん居るんじゃ……」

「だ、大丈夫! 今日はお父さん、出張で居ないから!」

「どおりで最近靜かだと思った……」

高志は一度自宅に戻り、晩飯は紗彌の家でごちそうになる事を知らせる。

鞄を置き、高志は必要なだけを持って、紗彌と紗彌の家に向かう。

「なんか、母さんが持って行けってさ……」

「あ、これってこの前、高志のお母さんが買ってた高級チョコだよ」

「なんか、元々紗彌の家に持って行くつもりだったらしいぞ?」

「ごちそうさま、あ! でも、太っちゃうかも……」

「き、気にするほどじゃないよ! それに……さ、紗彌はが付いても可いと思うよ……」

「もぉ! 馬鹿!」

「さ、紗彌! い、痛いよ……」

高志の言葉に紗彌は顔を赤くしながら、ポカポカと高志の頭を叩く。

こんな景が、高志と紗彌の家のご近所でも、最早名となり始め。

近所の人々は、若い二人のカップルを暖かい目で応援していたりする。

「ただいまぁ」

「あら、おかえりなさい。あら? いらっしゃい高志君。珍しいわね」

紗彌の家にると、紗彌のお母さんが出迎えてくれた。

エプロン姿で片手には用のフライパンを持っている。

「お邪魔します、紗彌のお母さん」

「ウフフ、もうそんな他人行儀じゃなくて、お母さんって呼んでも良いのよ? もう半分家族みたいなものじゃない」

「か、家族!?」

「あら? 可笑しな事を言ったかしら? だって、紗彌と結婚したら事実上……」

「お母さん! 高志が困ってるでしょ!」

イタズラっぽく笑いながら紗彌のお母さんは、紗彌をあしらう。

結婚などというワードに高志は反応し、頭の中で紗彌との結婚生活を妄想してしまっていた。

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