《甘え上手な彼3 秋編》第7話

「さ、紗彌!」

「は、はい!!」

高志は紗彌を押し倒し、紗彌の上に覆い被さる。

紗彌の心臓の音が、高志にもわかるほど大きく、高志もそれは同様だった。

(えっと……な、何をすれば良いんだ?)

覚悟は決めたものの高志は何をすれば良いのか全くわからなかった。

こんな事ならもっと勉強しておくべきだったと思いながら、高志は冷や汗を掻く。

(ど、どうしよう……とりあえずがせれば良いのか?)

高志そう思い、紗彌のワイシャツのボタンに手を掛ける。

「ん……」

「わっ! ご、ごめんなさい!!」

「い、良いから! ちょっと聲出ただけだから!」

慣れない事で二人とも揺していた。

何もしていないのに、高志は既に疲れ始めており、紗彌もそんな高志の疲れた様子を見て、疲れ始めていた。

「ぬ、がせるなら……恥ずかしいから……早く……」

「わ、分かりました!」

紗彌の言葉に高志は手を震わせながら、再び紗彌のワイシャツのボタンに手を掛ける。

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しかし……。

「紗彌、そう言えば明日は……あらら」

「あ……」

「お、お母さん!?」

部屋にって來たのは出かけたはずの紗彌の母親だった。

そのとき高志は紗彌に覆い被さり、ワイシャツのボタンに手を掛けており、言い訳なんて絶対に出來ない狀況だった。

その景を見た紗彌の母親は笑顔で二人に言う。

「あらあら、ごめんなさいね~、そういうことなら私は高志君の家でお茶でもいただいてくるから、どうぞごゆっくり~」

「お母さん!!」

「す、すみません!!」

高志は直ぐに紗彌の上から離れ、床に座って土下座をする。

紗彌は顔を真っ赤にしながら、母親に抗議をする。

「で、出かけるんじゃなかったの!」

「それが私の勘違いで一週間予定を間違えていたのよ~、それよりもアンタ、流石私の子ねぇ~、お父さんが出張中の今を狙うなんて……ささ、はやく続きしちゃいなさい」

「出來るわけ無いでしょ!!」

高志は頭を下げながら、紗彌の言葉に同意した。

こんな狀況で出來るはずが無い。

しかも親にバレてしまっては、それどころではない。

紗彌の母親が、そういうことに対してあまり口うるさい方でなかったのは良かったが、これで高志の母親にもこの事実がバレてしまう事が決定してしまった。

「あ、あの……お願いですので、うちの母親には……」

「大丈夫よ、言わないわ」

「本當ですか?」

「………本當よ」

「なんですか今の間は!?」

「大丈夫だから、早くやってしまいなさい」

「だから、無理だって言ってるでしょ!!」

紗彌は母親に文句を言い、高志は早くこの場から立ち去りたいと思っていた。

結局高志はなにもせずに家に帰宅することになり、高志は紗彌と外を歩いていた。

「ごめん、家のお母さんが……」

「い、いや俺は大丈夫だよ……」

先ほどまでのあの甘い雰囲気から一転し、二人の空気はお通夜のようになっていた。

「そ、そんなに急ぐ必要ないよ。俺たちには俺たちのペースがあるし……それに……さ、紗彌の気持ちもわかったから……」

「そ、そうだね……で、でも私は早く……」

「え? 何か言った?」

「う、ううん! なんでもない! じゃあ、また明日ね……」

「うん……じゃあ、お休み」

「お休み……」

そう言って二人は抱き合い、それぞれの家に戻って行く。

「はぁ……今日も疲れた……」

赤西は練習が終わり、自宅に帰宅する途中だった。

九月と言ってもまだまだ熱い日が続き、毎日の練習も決して楽ではない。

今日は繁村とは帰る時間が會わず、赤西は一人だった。

「早く家に帰ってエロ畫でも見よ……」

男子高校生らしい言葉を呟きながら、赤西は住宅街を歩く。

すると、途中のコンビニ脇の路地で見慣れた子生徒が男に言い寄られていた。

「あ? アレってもしかして……」

言い寄られている子生徒は朋香だった。

赤西とは違って顔立ちの良いブレザー姿の他校の男子に言い寄られていた。

「ねぇ、良いじゃん付き合ってよ」

「だから私は……」

なんだか朋香は嫌がっている様子だった。

そんな朋香を見た赤西は……。

「おいおい、兄ちゃんそいつはやめた方がいいぞ?」

「ん? 誰だお前?」

「あ、あんた……」

赤西は朋香とその男の元に近寄り、冷めた表で話し始める。

「そのはなぁ、ご自慢のその容姿で男をして、貢がせるだけ貢がせて、一ヶ月で捨てるだぞ。そんな格ブスに構ってるよりも、もっと他の……ぐはっ!!」

「急に出てきてアンタは私に喧嘩売ってるの?」

「な……言った通り……だろ?」

「そ、そうみたいだね……」

赤西は朋香に間を蹴り上げられ、地面に這いつくばる。

それを見た他校の男子生徒はそそくさとその場を離れ、赤西と朋香の二人になった。

「あんたねぇ……急に出てきていきなりなによ?」

「お、お前が困ってるから……俺は助けてやったんだろうが……」

「誰も助けてなんて言って無いでしょ? 余計な事しないでよ」

「な、なんだと!? 人が折角……」

「折角なによ! 助けるにしてももっと助け方があるでしょ!」

「俺は漫畫の主人公じゃねーんだよ!! そんなスマートに助けられるかよ!」

やっぱり言い爭いになってしまう二人。

コンビニから出て來た人も何事かと、二人をチラチラ見ていく。

「大なぁ……そんな格好してるから……」

「そんな格好? 別に普通でしょ」

「どこがだよ! どっから見ても遊び慣れてるビッチギャルだっつーの!!」

「アンタねぇ……そんなに死にたいの?」

「な、なんだよ! はぁ……昔はもっと……っておわ!」

赤西が昔の事を思い出していると、朋香は赤西の間めがけて再び蹴りをれようとしてくる。

しかしその蹴りは赤西に當たる事無く、空を切る。

「なんで避けるのよ!」

「避けるだろ!」

「はぁ……放課後までアンタの相手しなきゃいけないなんて……」

朋香はそういうと鞄を持って赤西に背を向ける。

「これ以上アンタと話してると、アンタを殺しちゃいそう」

「そこまでか! 俺に対する印象は!」

赤西の言葉を無視し、朋香は自分の家に帰って行く。

そんな朋香の背中を見送りながら、赤西はため息を吐く。

「はぁ……ほんと、昔はなぁ……」

赤西はそう言って、自分の元を空けて首からぶら下げているお守りを覗く。

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