《甘え上手な彼3 秋編》第8話
*
「はぁ……最悪」
朋香は家に帰ってベッドに橫になっていた。
ただでさえ、しつこく際を申し込まれ不機嫌だったのによりにもよって、赤西から助けられてしまった。
「ムカつく……」
しかもあの助け方は正直気にくわない。
下手をしたら、自分の悪評が広まってしまうと考えながら、朋香はスマホを取り出し友人にSNSで愚癡を溢す。
「……昔か……」
友人達からの返信を見ながら朋香はそんな事を呟く。
朋香は立ち上がり、機の引き出しにしまった一枚の寫真を取り出す。
「………馬鹿」
寫真には小學生の時の朋香と赤西が寫っていた。
二人とも楽しそうに笑っており、今の関係からは想像も出來ない寫真だった。
*
「ふあ~あ、眠いなぁ……」
赤西は鞄を持って學校に向かっていた。
昨日は夜遅くまでゲームをしていたせいか、いつも以上に眠気が強く、赤西は大きな欠をしていた。
「よーっす赤西」
「おぉ、繁村か。おはようさん」
學校に向かう道すがら、赤西は繁村とバッタリ會った。
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繁村も眠そうな顔で、背中を丸めて登校している。
「來週はクラスマッチだな」
「あぁ、そのときに絶対活躍して彼を!!」
「だな!」
そんな話しをしながら、赤西と繁村は闘志を燃やす。
昇降口に到著し、どうやったら活躍しているところを子にアピール出來るかを話していると、履きを取ろうとした赤西の下駄箱から、小さな手紙がひらりと落ちた。
「ん? なんだこれ? ……はっ! も、もしかして!! これってラブ……」
「不幸の手紙だろ?」
「なんでそうなるんだよ! ラブレターかもしれないだろ!」
「いや、不幸の手紙か果たし狀だろ? お前にラブレターなんて屆いてたら、俺は失神しちまう」
「う……た、確かに否定出來ない……」
今までの人生を考えると、赤西は否定出來なかった。
赤西は恐る恐る手紙を拾い上げ、封を開けて中を見る。
繁村も橫からニヤニヤしながらのぞき込む。
「えっと……『初めまして赤西先輩。突然のお手紙でごめんなさい、よろしければ放課後、屋上に來て下さい、伝えたいことがあります』」
「は……ははーん……これは屋上でリンチにするって事だぜ? お、俺は騙されねーぞ!」
「いや、どう考えてもラブレターだろ!? とうとう俺にも春が……」
手紙を握りしめて涙をにじませる赤西。
繁村は顔を歪ませながら、信じられないと言った様子で赤西の手紙を読み返す。
「お、俺は信じない! 信じないからな!!」
赤西がラブレターを貰ったという噂は瞬く間にクラス中に知れ渡った。
「大変だぁぁぁぁぁ!!」
「え!? 赤西が!?」
「そんな馬鹿な!!」
「報は確かなのか!?」
クラスの男子はその事実に驚愕し、同時にこんな考えも出始めた。
「誰かのイタズラなんじゃないか?」
「あぁ~それだわ」
「可そうに……舞い上がっちまって」
「まぁ、あの赤西がラブレターなんてあるわけないか!」
赤西のラブレターが偽説が浮上し、クラスの男子はそこまで事を大事にはしなかった。
その話は當然朋香にもってきた。
「え? あの馬鹿にラブレター?」
「らしいよ? でも、男子は絶対に誰かのイタズラだって言ってるけど」
「ふーん……まぁ、そうなんじゃない? あいつモテそうにないし」
「だよねぇー。でもさ、赤西の事を知らない他のクラスの子とかならもしかして……」
「無いわよ、あの赤西よ?」
「まぁ、それもそうね」
「赤西だし」
朋香も他のクラスメイト同様に、誰かの噂だと思っていた。
しかし本人は……。
「フフ……フフフ……」
「おい、高志」
「なんだ優一?」
「あの気持ち悪いの……赤西か?」
「そうみたいだな……」
當の本人である赤西は浮かれまくっていた。
顔をニヤニヤさせながら、何かを考えている様子だった。
「ラブレター……赤西にねぇ~」
「まぁ、容は呼び出しなんだろ? まだラブレターだと決まったわけじゃ……」
「そういうお前は、宮岡に呼び出されて告られたんだろ?」
「いや、まぁそうだけどよ……」
高志と優一が話しをしていると、泉がやってきて話しにってきた。
「なんで、赤西君がラブレターを貰うとこんなに大騒ぎなるの?」
泉はまだ転校してきたばっかりで、赤西の事をよく知らない。
その為、なぜこんなにも騒ぎになっているのか泉は不思議だった。
「あぁ、赤西はな………」
高志は赤西の事を泉に説明する。
赤西は以前から彼がしくてしくてたまらなかったのだが、毎回彼持ちの男やカップルを嫉んできた事から、子にあまり人気が無く、さっぱりモテ無い。
だから今回の事がこれだけの騒ぎになっているのだ。
「……っと言うわけでな……赤西に限らずだが、うちのクラスはそういう奴らばっかりだから、前提としてこのクラスの男子はモテない」
「ふーん。でも八重君も那須君も彼いるよね?」
「あぁ、だから俺たちはこのクラス男達からは、常に命を狙われている」
「そんなクラス嫌じゃない?」
泉は苦笑いをしながら高志と優一に尋ねるが、高志も優一もそんな生活に慣れてしまっていた。
「ち、ちなみにさ……八重君の彼の宮岡さんって……」
「紗彌に何かようか?」
「おい高志、顔が怖いぞ。泉が怯えてるだろ」
「え? あぁ……ごめんごめん」
「まったくお前は……で、宮岡がどうかしたのか?」
紗彌の名前をだし出しただけで、表を一変させた高志に泉は若干怯えながら、続きを話す。
「あ、いや……聞きたかったのは宮岡さんの友達の門さんの事なんだけど……」
「え? 門?」
「なんで門の事なんか聞くんだよ?」
「そ、それは……なんて言うか……」
「ん? お前もしかして……」
泉の気持ちに気がついたのは優一だった。
しかし、優一はそんな泉を気の毒そうに見つめ、一言言葉を掛ける。
「あいつはやめといた方がいいぞ?」
「え! な、なんでそんな事を?」
「いや……なぁ、高志?」
「え? なんの話し?」
「あぁ、お前はもう良い。お前はこういうのは鈍だもんな……」
優一はため息を吐き、泉にだけこっそりと耳打ちをする。
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