《甘え上手な彼3 秋編》第27話
*
「こっちだ!」
「こっちよ!」
朋華と赤西の班は、高志達とは別のお寺に向かっていた。
「だからこっちだって言ってるだろ!」
「こっちよ! アンタのは地図の見方が間違ってるのよ!!」
朋華と赤西はお互いにスマホを持ちながらめていた。
その理由はお寺に向かう道で迷ってしまい、スマホで行き先を検索してめていた。
右だと言って聞かない赤西と、左だと言って譲らない朋華。
同じ班の土井と繁村は、やれやれと呟きながら地図を見返す。
「おい、お前ら……」
「なによ!!」
「なんだよ!!」
「どっちでもない、ここを真っ直ぐだぞ」
「「え……」」
繁村にそう言われて、二人は再び地図を確認する。
地図を見ると、確かに真っ直ぐ行った方が近道な事に気がつく二人。
「はぁ……夫婦喧嘩は犬も食わねーな……」
「「誰が夫婦だ!!」」
「はいはい」
「二人とも、最近なんだか前よりも仲良いよな?」
土井がそう言うと、朋華は顔を赤く染めて必死に弁解する。
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「そ、そんな訳無いでしょ!?」
「そうだぜ! なんで俺がこんな暴力と……って、いっでぇぇぇぇ!!!」
「アンタはいちいちうるさいのよ!」
「怪我人の足をポンポン踏みつけてんじゃねーよ!!」
赤西と朋華の様子を見ながら、他の班の生徒はため息を吐く。
「はぁ……赤西もリア充の世界に行ってしまうのか……」
ため息を吐き遠くを見つめる繁村。
*
高志達は一日目の予定を終えて、旅館に向かっていた。
一日目は半日しか時間が無かったため、なんだかあっという間にじてしまう高志達。
旅館の部屋を確認し、高志達男子三人は部屋に向かっていた。
「良い旅館だな」
「あぁ、すげーな」
「溫泉も有名みたいだよ、楽しみだね」
三人は旅館の様子をみながら、そんな事を話して部屋に向かう。
部屋は六人部屋で、高志達三人の他に土井と赤西と繁村が一緒の部屋割りだった。
「あいつらも戻って來てるかな?」
「他の班はまだ帰って來て無かったっぽいしな、まだ帰ってきてないかもしれないな……」
そう言いながら部屋の鍵を開け、三人は部屋の中にり襖を開ける。
「よし、それでは作戦會議を始める」
「「「「意」」」」
部屋を開けた高志達を待っていたのは、高志達三組の男子生徒の約半數だった。
その中心には繁村が下り、機を囲んで何かを話している様子だった。
「意じゃねー」
「ごふっ!! い、いきなり何をしやがる!!」
「それはこっちの臺詞だ! 人の部屋にどれだけの人數れてんだよ! 狹いわ!!」
優一は部屋にるなり、繁村の頭を後頭部から踏みつける。
高志と泉は苦笑いでその様子を見ながら、一何をしていたかを尋ねる。
「帰って來てそうそう、何してたんだよ」
「ハハハ! 良く聞いてくれたな高志! 俺たちは今から………子風呂を覗く計畫を!」
「優一、こいつら全員殺そう」
「いや、待て待て! どうした! 高志君、急にどうした!? なんかいつも以上にバイオレンスな事いうねぇ!」
子風呂を覗くと言うことは、高志にとっては彼である紗彌のも見られる危険が
あると言うこと、怒るのは當然であり、高志はいつも以上に殺気を放っていた。
優一はそんな高志を見て、若干引いていた。
「た、高志……し落ち著けよ……気持ちはわかるが」
「大! 覗きって犯罪なんだぞ! お前ら修學旅行でそんな事をしたら……」
「ふっ……わかってねーな高志!」
「あ、赤西……どうしたんだ? その顔」
「気にするな!」
高志に聲を掛けたのは赤西だった。
赤西の両頬は赤く腫れ上がっていた。
「あれだよ……西城にさぁ……」
「土井! 余計な事を言うな!」
西城と言う言葉を聞いて、高志は何となく事を察する。
赤西は土井にそう言うと高志に向かって話しを再開する。
「良いか高志! 今は修學旅行中なんだぞ! 高校時代に一度しかない修學旅行なんだぞ!モテない俺たちだって、素敵な思い出をだな……」
「「「黙れリア充予備軍が!!!」」」
「え……な、なぜ……」
赤西が高志に話しをしている途中で、他の男子生徒が怒りを込めて赤西を怒鳴る。
赤西はなんで怒られたのかわからず、キョトンとした顔をしていた。
「はぁ……わからない奴だ、西城のは他の奴に見られても良いのか?」
「え? いや、あいつのなんて誰かみたい奴いるのか?」
「あぁーもう良い、お前はそういう奴だった」
優一は説明しても気がつかない赤西にため息を吐き、先ほどから部屋中に殺気を放っている高志を落ち著かせに行く。
「おい高志、落ち著け」
「落ち著けるわけないだろ優一……今からここに居る全員を祭りに上げるんだから!」
「……あのなぁ、こんな大きな旅館が覗き対策をしていないとでも思うか? さっき天風呂の寫真を見たが、結構高い壁があったぞ?」
「い、言われてみれば……」
「そうだろ? こいつらがいくら考えても子風呂なんて除けねーよ」
優一の言葉に、覗き賛派の男子が文句を言う。
「そんな事ねーよ!!」
「信じていれば、奇跡は起きるんだ!!」
「俺たちだって、修學旅行で素敵な思い出を作るんだ!」
「お前らみたいなモテる奴らにはわからないんだ!!」
正論を言われてもそれでも諦めない覗き賛派の男子達。
そんな男達に優一はため息を吐いて言う。
「落ち著け……誰が反対だって言った?」
「な、なんだとぉ!?」
「ま、まさか! 優一!!」
「ここの男湯と湯は繋がっている……覗く方法はいくらでもある」
「「「優一先輩!!!」」」
まさかの裏切りに、高志は開いた口が塞がらなかった。
優一は繁村の隣に座り、旅館のホームページを開いて説明を始める。
「良いか、この壁は木製だ! 長年の経営で劣化もあるだろう、だからこそ、どこかに隙間がある!」
「「「おぉ!!」」」
「お、おい優一! お前は覗き反対派じゃなかったのか!?」
「アホか、修學旅行と言えば……覗きだろ」
「お前を信じた俺が馬鹿だった……」
高志は床に膝をついて嘆く。
泉はそんな様子などお構いなしで、荷を置いて風呂にる準備をしていた。
「はぁ………悪い人達ではないんだけどなぁ……」
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