《甘え上手な彼3 秋編》第42話

泉は自販機の前でいまだにほうけていた。

振られた、しかもこんな変な形の告白で。

そんな事をずっと考えながら、泉はショックを隠しきれなかった。

「はぁ……」

明日からどんな顔で由華に會えば良いのだろうか?

考えるのはそんな事ばかりだ。

「行こう……」

ここでこんな事をしていても仕方が無いと気がついた泉は、自販機で買った飲みを持って部屋に戻る。

「ん? おぉ泉、遅かったな」

「え……あぁ、優一。ごめん、ちょっとね……」

部屋に戻る途中の廊下で泉は優一と遭遇する。

「おいおい、どうした? そんな酷い顔して」

「え……そ、そうかな?」

「あぁ、何があった? 門絡みか?」

「えっと……な、なんでも無いよ」

いきなり核心をついてくる優一に驚きながら、泉はなんとか話しをごまかそうと話題を探す。

「そ、それよりも優一は何をしているんだい?」

「あん? 俺はその……あれだ! 夕涼みって奴だ」

「あぁ、芹那ちゃんに電話してたんだ」

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「なんでわかんだよ!!」

「いや、何となくそうかなって? まさか當たり?」

「て、てめぇ! ハメやがったな!」

「いや、勝手に自したんじゃ……」

「やかましい! 誰にも言うなよ! 特に高志にはな!」

「わ、分かったって。良いから戻ろうよ」

泉は荒ぶる優一をなだめて、優一と共に部屋に帰って行く。

部屋に戻ると、赤西が戻ってきていた。

赤西は高志達に囲まれ、質問責めにされていた。

「で、なんて言ったんだよ?」

「抱き合ったりした?」

「どうせちゅーしたんだろ!」

「うるせぇな!! どうでも良いだろ!」

あまりにしつこい質問責めに、赤西は早々に布団に潛ってしまった。

「どうしたの?」

「なんだ、赤西が帰って來たのか」

「あ、お帰り。泉遅かったね」

「う、うん。ちょっとね……」

高志の言葉に、泉は若干口ごもる。

高志はそんな泉に若干違和を覚えつつも、赤西の方に向き直り、布団にくるまる赤西に質問を続ける。

「んで? 赤西は西城になんて言ったんだ?」

「それは俺も気になるな」

「だ、だからうるせぇっての!! 俺は寢る!」

「いやいや、寢るとか無いだろ?」

「あのとき俺が居なかったら、お前は死んでたぞ?」

「うるさい! 俺は眠いんだ!!」

赤西は布団に丸まったまま、質問を繰り返す高志と優一に文句を言い続ける。

「いやいや、いい加減話しちまえって。繁村なんて、ショックのあまりコーラで酔っぱらい掛けてんだぞ」

「うぃ〜最近の若いもんは!」

「おめぇもだよ、馬鹿」

高志は赤西の布団を引き剝がそうとする。

しかし、赤西も抵抗し、一切布団から出ようとしない。

そんな時、赤西のスマホが鳴った。

「それ、何があったの?」

「じ、実は……」

子の部屋では、紗彌が由華から話しを聞いていた。

泣きながら帰ってきた由華の事を紗彌も心配していた。

華は紗彌に先ほどの泉との出來事を話した。

「なるほどね……それで混して、逃げて來たと」

「うん、だって私は……」

「ん?」

華はちらりと紗彌を見て、視線を反らす。

紗彌はそんな由華に疑問を抱きつつも、話しを進める。

「でも、それは泉君が可そうよ、結局ちゃんと答えないで逃げて來ちゃったんでしょ?」

「でも……私、わかんなくて……男の子を好きになった事もないし……」

「それでも泉君はショックだったと思うよ」

「うっ……そ、そうだよね……」

泉の気持ちを考えると、由華は心が痛くなった。

振られる事の辛さは由華も知っている。

だからこそ、先ほどの泉の気持ちを考えると、由華はどんどん申し訳ない気持ちになっていった。

「好きとか嫌いとか以前に逃げるのはダメだと思うわよ」

「そ、そうよね……明日、ちゃんと謝るわ」

「うん、それが良いよ。それで、実際はどうなの?」

「どうって?」

「泉君の事よ。付き合わないの?」

「え……そ、それは……」

華はなんだか複雑な気分だった。

好きな人からそんな事を言われるなんて、正直あまりいい気分ではない。

しかし、自分のこの気持ちがバレてしまうのもなんだか怖く、結局は自分の自業自得だと言うことに気がつく。

「う、うん……だって、とか分からないし」

「そっかー。泉君、優しいしカッコいいから良いと思うけど……まぁ、高志ほどでは無いけどね」

「はいはい、相変わらず仲がよろしいようで……」

華の目の前には、相変わらず高志の事で頭がいっぱいな紗彌がいる。

そんな紗彌を見ていると思う、自分のっていく隙なんて最初から無いと言うことに……。

「それよりも、あの三人はさっきから何をしてるの?」

「え、あぁ……尋問?」

騒ね……」

華の視線の向こうには、買い出しから帰ったきた朋華が同じ部屋の鈴木恵(すずき えみ)と佐伯梨華(さえき りか)に迫られていた。

「だ、だから……何も無いって!」

「噓! なんか顔真っ赤にして帰ってくるし、お菓子は同じ種類ばっかりだし!」

「絶対に何かあったでしょ? 赤西と……」

「うっ……な、無いわよ」

「あ! 目を反らした! やっぱり赤西と何かあったのね! 言いなさい!」

「な、何も無いわよ……」

そう言った朋華は、先ほどの赤西とのやりとりを思いだし、更に顔を赤らめる。

「おーい、顔真っ赤だぞ〜」

「そ、そんな事無いわよ!」

「じゃあ良いもん、朋華が言わないなら別な人に聞くから」

「え? ちょっと! な、何を!?」

そう言うと、恵は自分のスマホを取り出し電話をかけ始めた。

「だ、誰に掛けてるの?」

「もちろん、赤西よ」

「ちょっ! ちょっと!! やめてよ!!」

「おっと! なんで? 別に赤西と何かあったわけじゃないんでしょ? なら聞いても問題無いじゃない」

朋華は恵のスマホを奪い取ろうとする。

は朋華から逃げながら、赤西に電話を掛け続ける。

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