《甘え上手な彼3 秋編》第56話

「帰るか……」

「ん……もうちょい」

「わかった」

紗彌は高志の隣に座り、頭を肩に乗せる。

「帰ったら絶対ね」

「わ、わかった……」

「エッチな彼は嫌?」

紗彌はそう言いながら、高志の腕にしがみつく。

いつもと違って、積極的な紗彌に高志はいつも以上に紗彌にドキドキしていた。

「いや……さ、紗彌は好きだよ」

「ウフフ……顔、真っ赤だよ?」

「し、仕方ないだろ……」

「ウフフ……えい」

「お、おい……くすぐったいよ……」

紗彌は嬉しそうに笑いながら、高志の脇をツンツンとつつく。

高志はそんな紗彌の手を抑えると、そのまま紗彌の手を握りしめる。

「なんか……々ごめん」

「いいよ、私はそこまで獨占の強いじゃないから……でも、高志はちゃんとの子が好きなんだよね?」

「あ、當たり前だろ!」

高志は紗彌の問いに対して、高志は必死の様子で答える。

それを見た紗彌は嬉しそうに笑うと、高志のに不意にキスをする。

「じゃあよかった……」

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「い、いきなり……」

高志は顔を赤くさせて、指でをなぞる。

そんな高志を見て、紗彌はベンチから立ち上がる。

「戻ろっか」

「あ、あぁ……」

高志と紗彌は手を繋いで旅館に帰って行く。

「じゃあな」

「うん」

旅館に帰り、男子部屋と子部屋の境で別れた二人はそれぞれの部屋に帰って行く。

これで一件落著。

そう思っていた高志だったが、背後から肩を摑まれて一気に現実に戻る。

「さぁ、彼とは十分いちゃついたよな? さっさと行くぞ」

「はい……」

その後、高志は石崎の部屋で反省文を書かされ、修學旅行最後の日を正座で過ごすことになった。

翌日、高志達は荷をまとめて帰る準備をしていた。

「はぁ……なんかあっという間だったな」

「楽しい時間はあっという間だよな」

「昨日の正座は長くじたけどな……」

部屋で荷をまとめながら、高志達は修學旅行の思い出を振り返っていた。

々あったなぁ……まさか高志が……」

「おい、優一……何が言いたい」

「いや……まさか男もいけるとは……」

「引くなよ! 誤解だって言ってんだろ!」

「まさかだよな……」

「土井もか! 俺は普通にが好きなんだよ!」

話しをしながら、荷をまとめバスの時間が來るのを待つ高志達。

赤西は先ほどからスマホとずっと睨めっこしており、なんだかにやけている。

対して泉と繁村はあまり元気が無い。

泉はまだしもなぜ繁村まで元気が無いと、なんだか変なじがする。

「おい、繁村……大丈夫か?」

「……もう、なら誰でも良い……」

「重傷だな……」

心配した高志が繁村に尋ねると、繁村は虛ろな目でそう言った。

「い、泉も……その……気を落とすなよ?」

「え……あ、あぁ……僕は大丈夫だよ」

泉はそうは言っていたが、やはり元気が無い。

華との事が相當きている様子だった。

「二人とも修學旅行だってのに……」

「お前もな」

「何がだよ、優一」

「男にキスされるって……正直同するわ……」

「だから言うなって……」

倉島の事もなんとかしなければいけない事を思い出すと、高志もなんだか気分が沈んで來た。

「はぁ……悪い奴では無いんだがなぁ……」

「よかったな、モテモテじゃないか」

「俺は紗彌にだけ好かれてれば、それで良い!」

「へいへい、まぁでもちゃんと倉島と話しはしろよ」

「そ、それはわかってるけど……」

「まぁ、なんだ……次はちゃんと俺も付いててやるよ……お前一人で行ったら、今度は………別な何かを奪われる気がする……」

「お前が優しい時は、何か絶対良くない事が起きる気がするんだが……」

各自悩みを抱えたまま、高志達は旅館を後にしバスに乗って京都駅に向かう。

電車に乗り、後は帰るだけになり、高志はスマホにってある修學旅行の寫真を見る。

「修學旅行の寫真?」

「ん? うん、そうだよ」

電車で隣に座る紗彌が、高志のスマホを覗き見てくる。

昨日の一件以來、紗彌は高志に対して積極的だった。 高志を見れば、近づいて行って手を握り。

高志が座れば、必ず隣に座る。

まるで高志が自分の所有であることを周囲に示しているかのような様子だった。

「楽しかったねぇ……々あったけど……」

「そ、そうだな……」

「ねぇ……昨日の約束……覚えてるよね?」

「あ、あぁ……も、もちろんだぞ」

「明日は休みだし……ね……」

「あ……あぁ……」

紗彌にそう言われ、高志は顔を赤く染める。

紗彌は高志の腕に腕を絡める。

電車に揺られ、高志達は自分たちの街に帰って行く。 由華と泉はなんだか気まずそうな雰囲気で、會話もあまりなかった。

優一は度々電話をしに席を立っていた。

赤西と朋香は周囲からからかわれており、照れ隠しなのか、お互いに悪口を言い合ってはいたが、今は二人で仲良く頭をくっつけて寢ていた。

繁村はそんな二人を見て、かなり落ち込んでおり、隣の席の土井が愚癡に付き合っていた。

々な事があった修學旅行も終わりを告げる。

修學旅行が終われば、クリスマスに年末年始とイベントも増えて來る。

高志は隣で寢息を立てながら、気持ち良さそうに眠る紗彌を見て考える。

「クリスマス前には……スッキリさせよう」

倉島との件を片付けて、クリスマスは紗彌と楽しく過ごしたい。

高志はそんな事を考えながら、紗彌の髪をでる。

「紗彌……」

名前を呼び、高志も紗彌の隣で眠りにつく。

秋が終われば冬が來る。

人達にとっては大きなイベントであるクリスマス。 高志は帰りの電車の中で夢を見た。

クリスマスツリーの下で涙を流す紗彌の夢を……。

冬編 完

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