《擔任がやたらくっついてくるんだが……》

「淺野君」

「は、はい……!」

帰りのホームルームが終わり、教室から出ようとすると、森原先生に聲をかけられた。ちょっと前の休み時間に、廊下から見られてたけど、何か関係があるんだろうか。

先生は、僕の前まで歩いてきて、割と近い距離でピタリと立ち止まり、上目遣いに見つめてくる。普段なら、魔法でも使っているかのように、誰にも見られないやりとりだけど、今日は違った。

「……淺野君と先生が……見つめ合ってる。やっぱりあの二人……」

なんか背中にめっちゃ視線じる!!

しかも、聲からして奧野さんっぽい。やっぱり誤解はまだ解けていないみたいだ。

前と後ろから視線で突き刺され、じろぎ一つできないでいると、先生はそっと目を伏せてから、再び目を合わせ、やっと口を開いた。

「病み上がりだから、帰り気をつけて。また明日ね」

「あ、はい……ありがとうございます」

淡々とした口調で告げて、先生はその場を去った。

その颯爽とした足取りに、僕は何故か違和じてしまった。

*******

真っ直ぐ家に帰り、予習やら復習やらをすませ、ベッドに寢転がっていると、そういや先生って真向かいの家に住んでるんだという事実を思い出す。

母さんに聞いてみたものの、つい最近まで空き家だと思ってたとか……僕もだけど。

ていうか、あの人……謎だらけじゃんか。

一番の謎はやたらくっついてくることなんだけど……。

……もしかして……もしかしてだけど。先生……僕の事……。

いや、ないか。

さすがに勘違いも甚だしい。

これはきっとあれだ。思春期のモテない男子特有の、優しくされると好きになるアレだ。

いや、それだと僕が先生を好きみたいじゃんか。

……いかん。頭の中がこんがらがってきた。

とりあえず、コンビニでも行って立ち読みでもして、頭の中をリセットしよう。

*******

「あ…………」

玄関の鍵を閉め、いざコンビニへ!と一歩踏み出したところで、まさかの遭遇。

相手はもちろん森原先生である。

「こんばんは」

「……こ、こんばんは」

もだいぶ沈みかけているので、夜の挨拶をわし、そのままスルー……

「待ちなさい」

できなかった。

「君は病み上がりでしょう?こんな時間にどこへ行くつもり?」

先生の言うことがもっともすぎて反論できない。

気まずそうに首筋に手を當てると、いきなり先生がこちらへ一歩踏み込み、ひんやりした手で額を覆ってきた。

「……もう大丈夫みたいね。でも、甘くみてはいけないわ。急な用事でなければ、明日にしなさい」

「はい……」

まあ、特別な用事とかじゃないし、明日でいいか。病み上がりなのは事実だし。先生もやけに目がとろんとしてるような……あれ?

「せ、先生……失禮します……!」

「え?」

僕は先生の額に手を當てた。學校でじた違和の正に確信を持ったからだ。

「これって……先生、熱が……」

「あわわ……え?あ、その……これは……」

「ごめんなさい。多分、うつしたの僕ですよね」

明らかに熱をじさせる額に手を添えたまま、先生に一杯謝る。何やってんだ僕は……先生、こんなに顔赤くなって……絶対に合悪い……。

しかも熱のせいか、先生がいつものクールさを失い、あわあわしている。こんなに目が泳いでる先生、初めて見た。

一瞬でも「やばい、ハンパなく可い!!」とか思ってしまった僕は、なんて不謹慎なクソ野郎なんだ。

自分で自分の頬をビンタすると、先生が驚きに目を見開く。

「……どうしたの?」

「いえ、昔からの癖です」

「……君と出會ってからずっと……見てたけど、そんな癖あったかしら?」

「とにかく中にりましょう。ここで立ち話してたら、さらに合が悪くなります」

先生を促し、中にりながら、心慌てまくっていた僕は今さっき、大事な何かを聞き流してしまった気がしていた。

ちなみに、自分で自分をビンタする癖などない。

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