《擔任がやたらくっついてくるんだが……》ライバル
「はあ……大丈夫かなぁ、淺野君。先生と二人っきり……いやいや、ないない!私ったら何を……!でも、気になる……」
「~帰ろうよ~」
「えっ?あ、その……え~と……ごめん!私ちょっと用事あるから!」
「あっ、ちょっ、~!?」
*******
「せ、先生……」
「どうかしたの?」
「し書きづらい気が……」
「大丈夫よ」
「は、はい……」
原稿用紙一枚分だけなのに、集中力をガリガリ削られているせいで集中できない。背中のらかいはもちろん、れ合いそうな頬や、規則正しい呼吸の音。その一つ一つが甘やかな刺激となり、僕の心をつついてくる。窓の外が遠い別世界みたいに見えてきた。
このままでは々とまずいことは間違いないんだけど、やはりもうしこのままでいたいという気持ちもある。
せめぎ合うで頭の中がごちゃごちゃのまま、僕は口を開いた。
「あの、先生……」
「何?」
……聲はかけてみたものの、何を……あっ、そうだ。
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僕は勢いに任せて、思いきって尋ねてみた。
「今さらかもしれないですけど、先生は、何で僕にくっついてくるんですか?」
「……嫌だった?」
「いえいえ、全然嫌とかじゃなくて!むしろラッキーというか!って違くて……僕の言いたいのは!っ!」
言葉が途中で遮られる。
先生の腕が、僕の首筋に絡まり、頬と頬が完全にくっついていた。
ふわふわした極上のが頬にれ、自分の言いたいことなど、飲み下してしまった。
そして、こちらの頬を震わせながら、ぽつぽつと降る小雨のように、靜かに言葉を紡いだ。
「私がそうしたいから、かしら」
「…………」
「私から質問するわね」
「は、はい……」
「君は……私のこと……」
「ストーーーップ!!!!」
「っ!」
「…………」
突然、大聲と共に背後の扉が開かれ、先生の腕が解ける。それと同時に、張やら何やらが吹き飛んでいった。
今の見られた?という不安と共にゆっくり振り向くと、そこにいたのは奧野さんだ。
その顔はひたすら真っ赤で、目には何故か涙が溜まっている。
彼はビシィッと先生を指さした。
「な、何やってるんですか!先生!」
「奧野さん。ドアを閉めなさい」
先生、まったくじていない……。
その様子に僕だけでなく、突してきた奧野さんも面食らっていた。
「あ、あれ?はい……じゃなくて、先生!今淺野君に……」
「何か?」
「淺野君に……抱きついてましたよね!」
「そう?」
「なっ!?」
再び面食らう奧野さん。ちなみに僕も驚いている。さっきのは僕の気のせいだったのかと思うくらいに先生はじてない。
彼は今度は僕の方を向いた。
「淺野君!先生に抱きつかれてたよね!」
「え?」
「…………」
まさか、本當に見られていたとは……いや、今まで見られていなかったことの方がおかしいのか……。
奧野さんは「ぐぬぬ……」と拳をふるわせ、先生は至近距離からじっと視線をぶつけてくる。
な、何だろう、この空気……。
「ど、どうかなあ……」
「むむっ」
どっちつかずの返事で何とかこの場を乗り切ろうとするも、勿論失敗。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「絶対に抱きつかれてたよ!こう!」
「えっ!?」
「っ!」
奧野さんは力任せに僕を前に向かせ、首筋に腕を絡めてきた。
爽やかな甘い香りが鼻腔をくすぐり、背中に僅かにらかいものが當たる。
「こ、ここ、これは……抱きつかれてるって言うんじゃないかなあ?」
「お、奧野さん!?」
こ、これはどんな展開!?奧野さんは何で自分から抱きついてきて、やたらテンパってるの!?一番テンパってるのは僕だけど!
と、そこで……急に部屋の溫度が変わった。
ただならぬ気配に目を向けると、先生がこちらをじぃ~~っと見ている。
それ自はよくあることなのに……な、何だろう……怖すぎる。
「……奧野さん……離れなさい」
「っ!ごめんなさい!」
奧野さんの腕が解ける。どうなっているんだ、今日は……間違いなくラッキーなんだろうけど、素直に幸福をできない雰囲気が……。
そんなことを考えていると、先生から肩をポンポンと叩かれた。
「淺野君……」
「は、はい!」
「今日はもう帰っていいわ。次からは気をつけなさい」
「は、はあ……」
「じゃあ、今すぐ、真っ直ぐに家に帰ること。いい?」
「え?」
「……いい?」
「はいっ!!」
先生の眼差しは鋭さだけでなく、よくわからない何かが含まれていて、それが僕の背中をゆっくりと押した。
こうして僕は無理矢理帰路につかされた。
*******
ど、どうしよう……。
なんか勢いでいてたら、とんでもない事態に……。
いや、一番驚いなのは、先生が淺野君に抱きついてたことだけど。
淺野君も淺野君だよ!「どうかなあ」じゃないよ!いくら先生のがおっきいからって……やっぱり今見ても大きい……。
「奧野さん」
「あ、はい……」
先生の真っ黒な瞳が私を捉える。
……正直、怖い……けど、やっぱり綺麗だなあ。
薄紅のが紡ぎ出す言葉を、私は息を呑んで待った。
「……あなたも帰っていいわ」
「ええぇ……」
何、この肩かし!別に引き留められていないけど!
なんか、眼中ないって言われてるみたい!
「あの、先生……」
「何?」
「先生は……淺野君の事、好きなんですか?」
私の言葉に先生は一瞬目を見開いたが、すぐに閉じて、髪をかき上げた。あ、これ図星っぽい……かな?
「私と彼は教師と生徒。それだけよ。それに教師と生徒が関係なんてドラマや映畫じゃないんだから非現実的だわ確かに彼はいい子だけどそれとこれとは別よ大なんでもかんでもに繋げようとする風には賛同できないわであるからして……」
「…………」
わっかりやすいなぁ……ほとんど自白に近いよ、これ。
「わ、わかりました!わかりましたから!」
「……あなたはどうなの?」
「え……ふぇぇっ!!?」
いきなりとんでもない事を聞かれ、驚きが隠せなかった。
先生はほんのし距離を詰め、黒い寶石みたいな瞳を再び向けてきた。
……も、もしかして……仕返し?
「好きなの?」
「うっ……そ、その……頑張り屋だなあ、と思ったり?」
「…………」
「あっ!わ、私、用事ありますので、もう行かなきゃ!あと、今日のことは誰にも言いません。私、そんな格悪いお邪魔蟲キャラじゃないんで」
「そう……」
「じゃあ、失禮します!」
「ええ、気をつけて帰りなさい。また明日」
私は先生に背を向け、扉を閉めた。
扉の向こうからじた視線は、きっと気のせい……のはず。
それにしても……先生がライバルかあ。いや、弱気になっちゃダメよ!あ、でも、この前の綺麗な人も……いやいや、まだ人って決まったわけじゃないもん!よしっ、頑張ろう!
*******
「ライバル出現……か……」
「……次は、ちゃんと言わないと……頑張ろう」
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