《擔任がやたらくっついてくるんだが……》ガールズトーク

新井先生とった居酒屋は、まだ客のりもなく、予想していたような騒がしさはなかった。

奧のテーブル席に座り、注文したお酒に口をつけたところで、新井先生がニヤニヤと笑顔を向けてきた。これだけでどんな話が振られるかわかる。

「先生って、どんな人がタイプなんですか~?」

「…………」

やっぱり來たわね。これが子會というものなのね。二人だけだけど。

とりあえず、私はなるべく遠回しに言うことにした。

「そうね……年下で背はそこそこで、ちょっと頼りなくて、頭は悪くないんだけど、要領が悪くて不用で……」

「……だ、だいぶ的な気がするんですが……もしかして森原先生って、誰か好きな人がいるんですか?」

「いえ、全然。いるわけないじゃない。何をどう聞いたらそうなるのかしら?」

「……じゃあ、私の気のせいということにしておきます」

「……新井先生はどんな男が、タイプ、なんですか?」

こういうのを誰かに聞くのは初めてなので、張してしまった。學生時代はそういうのがなかったから……。

新井先生は、口元に指を當て、可らしく考え込む。

……私もこういう可らしい仕草をしてみようかしら。

「生徒だけど……淺野君かなぁ?」

いえ、しかし私にはこういうのは似合わな……ん?

「今、何て言ったのかしら?よく聞こえなかったのだけど」

「え~、も、もう、何度も言わせないでくださいよぉ、恥ずかしいじゃないですか♪」

「ごめんなさい。今聞き捨てならな……ぼーっとしていたものだから」

多分、気のせいよね。絶対に気のせいよね。

「淺野君とか割と好みなんですよ~♪」

「……ごめんなさい。蕓能人の名前はあまり知らないのテレビをあまり見ないから」

彼に薦める年上がヒロインの作品を探すのに忙しくて、あまり他の作品をチェックできていない。淺野君ってどんな俳優さんかしら?

「え?蕓能人じゃありませんよ~。ウチの學校のですよ~」

「ウチの學校?」

まさか……まさか……ね。

あっ、ウチの學校の教員ということかしら。なるほど。私が知らないだけね。

「ああ……淺野先生ね。いいんじゃないかしら」

「え?ウチに淺野先生なんて方いましたっけ?」

違うみたいだ。

「淺野先生……淺野先生……」

「いえ、そんな人はいないわ」

「ええ!?じゃあ何で言ったんですか!?」

し酔ったのかしら」

「は、早いですね……あの、ウチのクラスの淺野君の事ですよ!」

……………………。

「えっと……淺野祐一君と淺野又三郎君のどっちかしら?」

「淺野又三郎君!?だ、誰ですか!?」

「……私の気のせいね。そんな名前の生徒はいないわ」

「さっきからどうしたんですか!?森原先生、変なものでもみえるんですか!?」

「そんなことより、あなた……淺野君が好きなの?」

「え?す、好き?な、何言ってるんですかぁ、もう……好きとかじゃなくて、好みってだけですよ~」

「…………理由を聞かせてもらえないかしら」

「理由、ですか?う~ん……単純に昔好きだった人に似てるんですよね……橫顔が」

「そう……」

まあ、そのくらいのなら……。

彼は私の所有ではないのだ。

誰が彼に好意を寄せようと、それをどうこう言う権利なんてない。

それに、昔好きだった人に似ているなんて……可い理由じゃない……。

私……何だか彼ともっと仲良くなれそうな気がしてきたわ。

「いや~、この前ですね。授業中眠りかけていたから、ほっぺた突いたんですけど、顔真っ赤にして、すごく可いんですよ~」

前 言 撤 回。

彼の頬に手をれた?

「萬死に値するわ」

「い、いきなりどうしたんですかっ?目がすごく怖いですよ?」

いけない。私とした事が……心の聲が口から出てきたわ。平常心、平常心。

「そうね。確かに彼はいい子だと思う。真面目だし。不用ながらも頑張ってるし……」

「あっ、そうそう!この前、私が廊下にプリントばらまいた時、颯爽と駆けつけて拾ってくれたんですよ~」

「そう……」

そういう優しさも魅力の一つよね。あの時だって……

「それで、その時に前かがみになった私のを見て、慌てて目をそらしたりするのが、いかにも初心ってじで可くてぇ~」

「その話、詳しく」

嫉妬じゃない。これは嫉妬なんかじゃないわ。健全な教育現場を維持する為に……彼には今度、しっかり話を聞いておく必要があるわね。ゆっくりと……二人っきりで……。

*******

「な、何だろう……背筋に悪寒が……!」

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