《擔任がやたらくっついてくるんだが……》姉さん

「それで……まずは背中を流せばいいのかしら」

「多分、違うと思います。しかも、ここ風呂場じゃないですし……」

何故、出発點がそこなのだろう。一先生はどんなを參考に……。

そこで、部屋の隅っこに積まれている小説が何冊か目にった。

『クールなメイドのらなご奉仕』

『貴のためなら……どんないやらしい命令も~メイド発期~』

……ぜ、絶対にアレはヤバいやつだ!!!

先生にしては珍しい選択ミス。いや、前もこんなことがあったような……先生って、もしかして……意外と天然?

「天然じゃないわ」

「今、心読みました!?」

「生徒の心くらい読めて當然よ。君が授業中に新井先生を見て何を考えたかもお見通しだから、気をつけなさい」

「…………」

な、何でだろう……やましい事なんて何一つありはしないのに、何でか罪悪がふつふつと沸き上がってきた。

た、確かに新井先生のは大きいけど……そう、それは先生みたいにいだらすごいとかではなく、がなくてもすごいというか……いや、それより……

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「生徒全員って本當ですか!?」

「さあ、どうかしらね……」

「え?」

先生は思わせぶりな言い方をして、珍しくジトーっと細めた目を向けてきた。何だか尋問が始まる前れのような気配がした。

「……それにしても、君は授業中に新井先生のを気にする余裕はあるのかしら?績が上がったからといって油斷はよ。それに、年頃の男の子だから仕方ないかもしれないけど、見境なしなのは関心しないわ」

「み、見境なしとかじゃ……」

「そういう挙は君の周りからの信頼度を下げることにも繋がるわ。だから……」

「だから?」

先生は立ち上がり、何故かキョロキョロと辺りを見回した。クールな雰囲気に、可らしいメイド服に、子犬のような落ち著きのなさというんな要素をごちゃ混ぜにした先生は、何だか見ていて和むものがある。

やがて、一人でうんうんと頷いて、再び僕の隣にゆっくり腰を下ろした。

小さめのソファーは二人で座るとしきつかった。

らかなを右側にじながら、あちこちに目を泳がせていると、先生が耳に直接言葉を注いてきた。

「……君は……ご、ご主人様は……私だけ見ていればいいんじゃ、ないかしら」

「…………」

先生らしくない歯切れの悪さ。でも、それより……

こ、これはどういう事だろう?

えっと……僕は見境なくの人を見ていて……いや、自分では違うと思っているけど。それで、それはまずい事で……と、とにかく、先生だけを見ていろと……それって……まるで……いや、そんなはずは……。

だって……先生だぞ?

あの……校の男子から一番人気で、ファンクラブもあって、子からも信頼されていて……それどころか、こんな綺麗な人が僕の事なんか……いや、そう考える事すらおこがまし「はむっ」……っ!

突然のに思考が中斷される。

い、今、耳、か、噛まれっ……!

いや、噛むといっても甘噛みで、全然痛くはないんだけど……!でも問題はそこじゃなくて!

耳に先生の歯のが突き立てられ、食獣に取り押さえられた草食のように、微だにできなくなる。

や、やばい、何だ、このじ……!

頬にを當てられた時とは違う。

何だか剝き出しの刃を首筋にそっと當てられているような覚。

そして、ほんの一瞬だけったがつぅっと耳を這った。

その生溫かいが先生の舌だと理解した頃には、先生の顔が離れていた。

「せ、先生……」

「…………」

先生は何事もなかったように、真正面を向いて座っている。こんな場面でも、いつも通りに振る舞えるのが先生なんだろう。こっちは心臓がバクバク鳴っているのに……。

僕は何かを誤魔化すように、こっそりと自分の後頭部を叩き、ひとまず先生に疑問をぶつけた。

「先生……これってメイド関係なくなってるんじゃ……」

「……そうなの?あれはとても參考になると遠藤先生から教わったのだけれど」

遠藤先生……確か図書室の……あの人、こっち方面の知識を持っていたのか。

「騙されてます。あれは……と、とにかく違います!」

「そう……遠藤先生、やってくれたわね……じゃあ、今夜のに勉強し直しておくわ」

「は、はい……頑張ってください」

先生とのメイドに関する勉強(?)は、今日のところはこれでお開きとなった。

*******

「……ごめんなさい。メイドらしい事が何一つできなくて」

「いえ、大丈夫なんで……とりあえずあの本は參考にしないほうがいいかと……」

結局、文化祭の下準備は置いといて、先生のメイド姿を堪能するだけの幸せな時間てしかなったけれど、これでいいんだろうか…………うん。できれば明日も……。

「じゃあ、また明日ね」

「あ、ありがとうございます!」

「……?どうかしたの?」

「あっ、い、いえ、何でも……」

「あら……お客さん、來てるわよ。の人……」

先生の言葉に、我が家の玄関に目を向けると、そこには一人のの人が立っていた。

セミロングのふわふわした金髪に、黒いスーツ姿……あ、あれはもしかして……!

家の前に立っている人の正に思い至ると、ちょうど彼が振り返った。

そして、ばっちりと目が合う。

「あっ、いた!!」

ぱあっと花が開くような笑顔になった彼は、全力疾走でこちらに駆け寄り……思いきり抱きついてきた。

「裕くん、ただいま~♪♪♪」

「うわっ、ね、姉さん!?」

思いきりに顔面を埋められ、息がしづらくなる。

耳元では「久しぶり~♪」という明るいトーンの聲と、「あの……あの……」という暗いトーンの聲が響き、こんがらがっている。

らかなを何とか押し返し、顔を上げると、そこには……

「裕くん、お姉ちゃんだよ!お姉ちゃん!元気だった?」

「……姉さん、おかえり」

そう。そこには姉の蛍がいた。

「ふむふむ……姉さん、ね……なるほど……いえ、それでも油斷はできないわね」

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