《擔任がやたらくっついてくるんだが……》お姉さんズ
「「…………」」
僕と森原先生は、つい顔を見合わせてしまった。まさかここで新井先生に會うとは思ってなかったのも理由の一つだけど、それ以上に二人で並んで歩いている時に、初めて顔見知りの誰かと出くわしたというのが大きかった。
別にやましい気持ちとかじゃない。
むしろ先生と外出して、これまで誰とも出くわさなかったほうが不思議なのだ。奧野さんみたいなパターンは、まあ置いといて……。
「あの~、おふたりさん?」
「今お帰りですか、新井先生。たしか家は反対側では?」
「ちょっと用事があってこっちまで來てたんですよ~。それより、二人こそ帰り道一緒だったんですか~?」
「ええ。偶然だけど。本當に。こんな偶然あるのかしらね」
「あははっ、偶然ですね~♪」
新井先生がふわふわした髪を風に揺らしながら、先生と會話を始めていた。いけないいけない。ついぼーっ考え込むところだった。心なしか先生が早口に聞こえたし。
「ふっふっふ、また淺野くんに會えるとは……これはまさか運命では?」
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「あははは……って、運命!?」
「そんなに慌てなくても~、まったく可いなぁ♪」
「…………」
先生が僕の方をじーっと見ている。が空きそうな、という表現がしっくりくるくらいに。な、何だろう?先生の背後からどす黒いオーラが見えてる気がする……。
そのオーラにまったく気づきもしない新井先生は、いつかのように僕の頭をわしゃわしゃとでてきた。
「よーしよし、よーしよし♪うん、帰宅途中でこれができるなんて、今日はついてるなぁ~」
「あの、新井先生?」
甘い香水の匂いに鼻腔をくすぐられながら、されるがままになっていると、森原先生が新井先生の肩をつついた。
「新井先生。淺野君が困っているわ。そんなうらやま……そんな過度なスキンシップは教育上よろしくないと思うのだけど」
「…………」
これはどうツッコめばいいのか悩むけど、今は新井先生もいるから黙っておくべきなんだろう……もしかしたら、先生特有のわかりづらいユーモアなのかもしれないし。
「今はいいじゃないですか~。それに、淺野君も嬉しそうですよ?」
「淺野君、そうなの?」
「え?えぇ?」
森原先生が無表のまま距離を詰めてきて、自然と目が泳いでしまう。何なの、この狀況?
「迷なの?淺野君……」
新井先生が、捨てられた子犬のような切ない眼差しを向けてくる。
「喜んでるの?淺野君」
森原先生が、クールなんだけど、どこか艶やかな視線を向けてくる。
あれ?これってもしかして……おいしい狀況なのでは?
漫畫やアニメであるような、なんかモテてるっぽいシチュエーションにが高鳴るけど、いざ自分のに降りかかると、経験値のなさからテンパってしまう。
い、いや、僕だってこの數ヶ月間様々な參考資料にれてきたんだ!このぐらい……
「せ、先生……」
「「何、淺野君?」」
二人の聲が気持ちいいくらいにハモる。そ、そうでした……どちらも先生でした。ていうか、さっきより距離が段々近くなっていく……!
控えめに香る爽やかな香りと、甘いふわふわした香りが混ざりあい、容赦なく鼻腔をくすぐるのをじながらも、思考回路はパンク寸前だった。ぶっちゃけ、貞どころか彼すらできた事ない男子には、この狀況はやばすぎる。何もできやしないけど。
「こら~、そこの二人!今すぐ裕くんから離れなさい!」
「ね、姉さん……」
このタイミングで姉さんが助けに來てくれるなんて……!やっぱり持つべきものは頼りになる姉だよね!
「裕くん、助けに來たよ!はやくお家に帰って一緒にお風呂ろ?あっ、ご飯が先か。それとも……わ、わ、私かな?」
前・言・撤・回。
やはり姉さんは姉さんだった。
ていうか、そんな恥ずかしい発言を人通りのある場所でするあたり、ダントツで一番やばい。ああっ、視界の端っこで、駆け足で逃げるように立ち去る親子が見える……。
「姉さん……」
「裕くん。これはどういう事なのかな?どうしてお姉ちゃん以外の年上のを二人も侍らしてるのかな?」
「蛍さん、さすがにその年で一緒に浴はどうかと。彼はもう高校生ですので、教育上よくない影響が……」
「え~?淺野君のお姉さん?はじめまして~、副擔任の新井です~」
「ふ、副擔任?むむっ、これまた可い……と、とにかく!裕くんは連れて帰ります!」
「私は進行方向が一緒なので」
「せっかくだから、もうしお話しましょうよ~♪うふふ」
「…………」
どうしよう……獨特な會話テンポの三人が合わさり、場がどうしようもないくらいまとまりをなくしている。やばい……いや、たまには男らしくビシッと決めよう。
「えーと、じゃあ僕は先に帰りますので……」
そう言い終える前に三人が無表でこっちを見たので、慌てて言葉を飲み込んだ。これ、選択肢間違えたやつだ……。
「じゃあ、み、皆で一緒に帰りますか」
ひとまずこの場からこうと提案すると、新井先生が何か閃いたようにポンっと手を叩いた。
「そうですね~、どうせなら今から淺野君の家に行きましょうよ~。お姉さんとお話するって口実で」
「…………はい?」
「…………」
突然すぎる提案に、僕は呆然として、森原先生は無表のまま首を傾げた。何故に夕方から先生二人の家庭訪問イベントが……。
しかし、姉さんだけはどこかテンションが違った。さらさらの金髪が風に靡き、こめかみを汗が一筋伝った。
そして、をやけに重たそうに開く。
「い、家に?……いいでしょう!けてたちます!」
…………何を?
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