「………いらっしゃいませー」

「いらっしゃいました～」

レジに立った俺は、目の前の満面の笑みの客に向かってため息を吐く。

「えっと……今日シフトじゃないよな？」

「そうですよ？　何言ってんですか？　アホですか？」

「じゃあ、何しに來たの……」

「勉強しに決まってるじゃないですか～、私は験生ですよ～」

そう言って、レジの前に立つ制服姿の実ちゃんはを張ってどや顔をする。

実ちゃんはたまにこうやって店に勉強に來る。

しかも、実ちゃんが來た日に、俺がシフトにっていると必ず返りに何か奢らされる。

「はぁ……ご注文は？」

「じゃあ、次郎先輩を一人！」

「メニューからお選びください」

「むぅーしょうがないなぁ～」

「しょうがないのかよ……」

実ちゃんはポテトと飲みを注文して、席に座った。

実ちゃんの席はいつも決まっている。

レジから見て斜め前の二人席だ。

彼はいつもそこに座って、勉強をしていた。

たまにレジをすると、彼と目が合い、その度に彼は俺の顔を見て笑って來る。

「次郎君と実ちゃんって仲良いよね～」

「それは違うって、あの子が俺をからかって遊んでるだけだよ」

「ふーん……でも、実ちゃんって次郎君がシフトにってる日しか店に來ないような……」

「気のせいだろ？」

俺は小山にそう言って、仕事に戻った。

実ちゃんはやっぱり俺の仕事が終わる時間まで店にいた。

そして俺のシフトの時間が終わると……。

「先輩終わりですか？　じゃあ行きますか！」

「行かねーよ」

スタッフルームまで迎えに來て、俺を食事にってくる。

もちろん、俺の奢りである。

「え～、こんな可いの子が、折角食事にってくれてるんですよ！？　行かない手はないでしょ～」

「何回目だと思ってるんだよ」

「うーん……わからないですぅ～」

「今年って、もう20回以上だっての……ほぼ毎週行ってるんだよ」

「えー、そんなに行ってましたっけー？　私わかりません～？」

「帰る」

「待って待って！　待ってくださいよぉ～。食事は無くても、こんな夜道をの子が一人なんて危険じゃないですかぁ～」

「いや、実ちゃんはなんか大丈夫そう」

「酷い！！　大丈夫じゃないですぅ～！　送って行ってください～」

「はぁ……送っていくだけだぞ？」

「やった！　じゃあ、さっそく行きましょう！」

俺は彼の勢いに負け、仕方なく家まで彼を送っていくことにした。

そうだったのだが……。

「あ、すいませーん！　えっと、ミートドリアとグリルチキンのセットを二つで、あとドリンクバーも二つお願いします」

「あ、俺はそれにサラダバーで」

「はい、かしこまりました」

ファミレスの店員は、お辭儀をして俺と実ちゃんの席を離れていく。

「いや、そうじゃねーよ！」

「はい？　急にどうかしました？　持病の発作ですか？」

「そんなものは無い。俺が言ってるのは、なんで飯を食いに來てるんだってことだよ！」

俺は確かに彼を家に送って帰るつもりだった。

しかし、気が付いたらこのファミレスに店し、俺と実ちゃんは窓際の席に座っていた。

「なんでいつも……」

「まぁまぁ、良いじゃないですか～、目の前には可いJKが居るんですよ？」

「え？　それってどこにいるの？」

「ぶん毆りますよ？」

「へいへい」

俺は水を飲みながら、実ちゃんに適當に返事をする。

スマホを弄りながら、料理が來るのを待っていると、実ちゃんがちょっかいを出してくる。

「………」

「せんぱ～い」

「……」

「先輩ってば～」

こつこつと俺の足を自分の足でツンツンと突いてくる。

俺は面倒なので、そんな実ちゃんを無視する。

「無視ですか……わかりました、私にも考えがあります」

実ちゃんはそう言うと、俺にちょっかい出すのやめ、急に俯き大人しくなった。

靜かで良いなと思いながら、俺はスマホを作する。

「先輩……本當に答えてくれないんですか？」

靜かな聲で実ちゃんは話始める。

もちろん俺は面倒なのでスルーする。

「そうですか……答えてくれないんですね……」

一何を言っているんだと思いながら、俺はスマホを弄り再び水を飲む。

「うっ……酷いです……じゃあ、お腹の子供はどうするんですか！」

「ぶふっぅぅぅ！！！」

いきなりとんでもない事を言い始めた実ちゃんの言葉に、俺は水を噴き出した。

周りを見ると、なんだか他の客が俺の顔を見て、こそこそ何かを喋っている。

「ま、実ちゃん……変な冗談はやめてくれない？」

「冗談なんて！　私は本気だったのに！！」

「だからやめて！！　謝るから！　無視したの謝るから！！」

周りの俺を見る目が痛い。

実ちゃんは俺が謝った事に満足したのか、悪戯っぽく笑って舌を出す。

「私を無視するからですぅ～」

「勘弁してくれよ……」

俺は頭を抱えながら、ため息を吐いて実ちゃんを見る。

実ちゃんはニコニコしながら俺を見ていた。

こうして彼は俺をからかって楽しんでいる。

「まったく……」

俺は彼と食事をして店を出た。

「先輩ごちでーす」

「結局俺が出すのかよ……」

帰り道、俺は実ちゃんを家まで送っていた。

彼はニコニコ笑いながら俺の隣りをついてきた。

「先輩良かったですねぇ～、こんな可いJＫとバイト帰りにデートが出來て」

「デート？　ただ飯食いに行っただけだろ？」

「強がんないで下さいよぉ～、どうせ彼居ないんでしょ？」

「……作らないだけだ」

「うふふ～、いつできますかねぇ～？」