《後輩は積極的》第16話

実ちゃんとプールに行った翌日。

俺はバイトの休憩中に、小山君に昨日のプールについて質問責めにあっていた。

「んで? どうだった?」

「どうって?」

「楽しかったとかあるだろ? 水著が可かったとか」

「あぁ……プールのスタッフがうざかった」

「いやいや、実ちゃんの水著とか! 何かあるだろ!?」

「え? 別に……無いけど?」

「おまっ! はぁ……実ちゃん可そうだな」

「そう言ってもなぁ……」

「はぁ……もしかして岬君って年下より年上派?」

「え? うーん……どっちかって言うと、優しいお姉さんタイプが好きだな!」

「あぁ……ダメだこりゃ……」

「何がだよ! 失禮だな」

二人で晝飯を食べながらそんな話しをする。

ちなみに、実ちゃんは今日は休みだ。

だから、休憩室でこんな話しが出來る。

「そういえば、次郎君は明日休みだっけ?」

「あぁ、サークルの飲み會なんだ」

「溫泉サークルだっけ? 風呂でもりにいくの?」

「まぁ、そんなじ。正直気は進まないんだよなぁ」

Advertisement

そう、明日は俺が所屬する溫泉サークルの活日。

溫泉宿を経営している先輩の家に行くのだが、同じサークルに間宮先輩が居るため、あまり行きたくない。

夏休みにって、顔を合わせる回數も減るかと思ったのだが、ほとんど毎日家にやってくる。

「はぁ………」

「そんなに嫌なら行かなきゃ良いのに」

「俺だって、行かなくて良いなら行かないよ。でも、強制參加みたいなとこがあってさ……」

「そうなんだ、々大変だね」

「あぁ、先輩の家だからあんまり金が掛からないのは良いけど……」

俺は小山君にそんなグチを言いながら、食事を終えた。

「え? 夏祭り?」

「そう! クラスのみんなで行こうって話しになってるんだけど、実も來ない?」

「うーん」

私は先輩とプールに行った日の翌日、友達と一緒に買いをして、喫茶店で話しをしていた。

高校最後の夏休み、勉強も大切だが、皆最後の高校生活を満喫したいらしく、こんなイベントを企畫してってくる。

しかし、私は昨日息抜きと言う名目で先輩とプールに行ってしまったし、なんだか気が進まない。

先輩と行ったプールが楽しすぎたからだろうか?

「私は遠慮しておく、それに明日バイトもあるし」

午前中だけだけど……。

あ、でも明日は先輩……居ないんだ。

私がそんな事を考えていると、一人の友人が私の肩を摑んで懇願してきた。

「お願いだよぉ〜、行こうよぉ〜、実が來るから行くって男子もいっぱい居るんだから〜」

「私を餌に使ってるわけ……なら絶対行かない!」

「なんでだよぉ〜行こうよぉ〜、実だって高校三年間彼氏無しはきついでしょ?」

「別に! きつくないし」

それに私にはもう好きな人が居る。

今更同級生になんてしないと思う。

「頼むよぉ〜、一緒に高校生活最後の夏の思いで作ろうよぉ〜」

「だからバイトが……」

「祭りは夜からだし、実はそんな遅い時間までバイトしてないでしょ?」

「そ、そうだけど……」

「良いじゃん! し顔出して帰っても良いし!」

「本當に私は餌なのね……」

その後もしつこくわれ、私は結局行くことになってしまった。

「ありがとう〜じゃあ、明日の18時に集合で!」

「かき氷の約束、忘れないでね」

「わかってるって!」

次の日、俺はため息を吐きながら、先輩の溫泉宿に向かっていた。

「はぁ……」

「ねぇ、まだなの? 私疲れた」

「もうしですよ……」

ため息の元兇である先輩は、俺の気持ちなどおかまい無しに不満を俺にぶつけてくる。

先輩の荷も持っている俺の方が不満が溜まっているのだが……。

「あ、先輩あれですよ」

俺は目的の溫泉宿を指さす。

距離にして後一キロほどだろうか?

「えぇ〜、遠いわよぉ〜」

「わがまま言わないで歩いて下さい」

「もぉ……こんな事なら岬君の家でゲームしてた方が良かったわ」

「俺が迷ですよ」

いつも通り先輩のわがままを聞きながら、俺は溫泉宿に向かっていた。

「ん? なんか騒がしいな」

「あぁ、なんか今夜近くでお祭りがあるらしいわよ?」

溫泉宿に向かう道すがら、公園の近くで出店の準備や櫓(やぐら)を組んでいる人たちを見かける。

「私、祭りってあんまり好きじゃないのよね……」

「え? どうしてですか?」

「ナンパされるから、困っちゃうのよ」

「へーソレハタイヘン」

「なんか馬鹿にしてる?」

「イエイエ、ゼンゼン」

自慢かよ、なんて思いながら、俺は溫泉宿へ再び歩き始める。

「……で、でも……岬君が行きたいって言うなら……一緒にお祭りに行ってあげても…」

「あ、大丈夫です。俺も先輩とお祭りに行くのはちょっと……」

周りから彼氏だと誤解されて、恨みの視線を向けられるのは嫌だし、男除けにされるのも俺はごめんだ。

「フン!」

「ぎゃぁぁぁぁ!!! 痛いです!! 先輩痛いです!!」

「私だって岬君なんかとお祭りなんかごめんよ!」

「なら最初から言わなきゃ良いのに……」

何が気にらなかったのか、先輩は俺の足を踏みつける。

俺が何をしたというんだ……。

「ほら! さっさと行くわよ!」

「はいはい」

溫泉宿に到著した俺と先輩を待っていたのは、サークルの皆だった。

「よう、間宮先輩と次郎が最後か」

「よっ、博男(ひろお)」

聲を掛けてきたのは、同じ大學二年の安岡博男(やすおか ひろお)だった。

イケメンでしかも彼持ち、いわゆるリア充だ。

隣には彼の村田さんが居る。

「間宮先輩と岬君って仲良いよね」

「博男、お前の彼目が悪いようだ、眼科に連れてった方が良いぞ?」

「おまえ、人の彼に対して失禮だな」

「うるせぇ!! 俺と先輩のどこが仲が良いんだよ!」

「いや……多分サークルの皆がそう思ってるぞ?」

「じゃあ全員目が悪いんだな、俺が良い眼科を紹介してやろう」

「いい加減気がつけよ……」

博男が肩を落として俺にそう言う。

俺が博男と村田と話しをしていると、またしても間宮先輩が俺のところにやってくる。

「岬君、早く行くわよ」

「えぇ……部屋の中にくらい自分で持っていて下さいよ……」

「良いから行くわよ! 先輩命令よ!」

「嫌な先輩だ……」

俺は先輩の荷を再び持って、溫泉宿の中にっていく。

「むぅ……先輩……返信遅い!」

私は勉強の息抜きで、ベッドに寢転がりながら先輩にSNSでメッセージを送っていた。

先輩からの返信がもう一時間も無い。

私は早く返信が來ないかとソワソワしながら、ベッドの上でゴロゴロする。

「はぁ……祭りかぁ……先輩と行きたかったなぁ……」

本當はお祭りも先輩と一緒に行きたかった。

しかし、先輩にはプールに付き合ってもらったし、それに今度一緒に溫泉に一泊する約束もしてくれた。

「ウフ……ウフフフフ」

二人で一泊旅行。

その事を考えてしまうと、ニヤニヤが止まらない。

二人で旅行……。

一緒にご飯食べて、一緒にお風呂って、一緒に布団で……ウフフフ。

そんな事を私が考えていると、私のスマホに通知が屆いた。

「先輩!」

私は思わず聲に出し、スマホの畫面を見る。

しかし、通知の正は先輩からの返信では無く、友人からのメッセージだった。

【今日、出來れば浴で來てね】

そのメッセージを見た私は、別にその子が悪い訳では無いのだが、なぜか腹が立ち、返信をしないでスマホを枕に向かって投げつけた。

「もぉ! ややこしい!!」

先輩からの返信は相変わらず無い。

      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください