《ボクの彼は頭がおかしい。》偵②

の子と連れ立って出てきた大雪くん。

彼らを尾行するため、僕らはタクシーの中にいた。

「あの自転車を追いかければいいんですね?」と運転手さん。

「はい、そうです。理由は聞かないでください。ちょっと複雑な事がありまして」と五月。

「複雑にしてるのは君だ」と僕。

「そうかもしれない。だけどもう、後戻りなんて出來ないの」と彼

「五月……」

「早瀬くん、わたし、この車に乗ったこと後悔してないよ?」

「…トランスフォーマーじゃないですか」

「オプティマス・プライムッ!」

五月が発狂した。

運転手さんもいるし、大概にしてしい。

「バンブルビィィィイイイ!!」

「……」

「アイアンハイドアイアンハイド!」

「……」

「ん~ジャズッ♪てってれ~ジャズッジャズッ♪」

ここは、僕も乗るしかないのか。

「…メガトロンッ!!」

「早瀬くん恥ずかしいからやめて」

はいはいお約束のパターンね。

「二人は付きあってるの?」と會話に割り込んでくる運転手さん。

その問いに一瞬で頬を赤らめうつむく五月。

時々シャイになるんだよね彼、そういうの可い。

「付き合ってます」と僕が答えた。

「やっぱりかぁ。可い彼さんだねぇ」

「そうでしょう?この可さは世界産レベルです」

「言うね、きみ。いやでもほんっと、べっぴんさんだ。目はパッチリしてるしも真っ白で……あ」

「どうしました?」

「えっとね、追いかけてた自転車見失っちゃった」

両手で顔を隠しながらウネウネしている五月をタクシーから引きずりおろし、僕のサイフから運賃を支払う。

そうして大慌てで大雪くんと例のの子の行方を捜し始めた。

差點やら歩道やらでキョロキョロとあたりを見回す僕。

相変わらず照れてウネウネしてる五月。

周りの人たちからはどのような目で見られているのだろう?

あ、そっか、人と非イケメンの不釣合いカップル――ってやかましいわ。

「五月、そろそろ元に戻ってくれないと話が面白くならないよ?」

僕のこの発言で彼のウネウネがピタリと止まった。

「今のどういう意味?話って何?何の話?」

「ごめん、自分でもよく分からないけど気づいたら口から出てて。変なじだ」

「…それって、まるで最初から自分のセリフがあらかじめ誰かに決められていて、そしてそれを強制的に喋らされているような、あの奇妙な覚のこと?」

「たぶん、それのことだと思う。五月もじてたの?」

「うん、時々。だから今から言うわたしの言葉も、誰かが事前に決めてたものだからわたし個人としては特に深い意味はないよ。じゃあ言うね」

「うん」

「早瀬くんのこと大好きです。これまでの君も、これからの君も」

世界が一瞬で崩壊した。

暑さをじなくなった。

質がその彩を失った。

時空の存在が大きく歪んだ。

目の前ののまぶしい笑顔に、それだけの力が宿っていた。

とある真夏のとある街角、とある二人の語。

「じーっと見つめ合ってどうしたの?」と、背後から大雪くんの聲。

世界が一瞬で構築された。

猛烈な暑さが襲い掛かってきた。

生命力あふれる覚が湧きあがってきた。

時間が正常に流れ始めた。

いつの間にかそこには大雪くんと細くて(以下略)がいて、僕らを見て笑っていた。

「つまりその細くて可の子は大雪くんの妹ってこと?」と五月が素っ頓狂な聲をあげた。

説明口調のセリフ、ありがとうございます。

そうだよ、と大きくうなずく大雪くん。

浮気なんかじゃなかった。

大雪くんは、妹さんのバイト先を一緒に探してあげていただけらしい。

だったら……

「ちょうど僕のバイト先が人手不足なんですけど、どうですか?」と提案してみた。

僕の発言に目を輝かせる大雪くん。

なぜか不機嫌そうな顔をする五月。

うーん。

何はともあれ、浮気じゃなくてほんと良かった。

探偵コンビはこれにて解消。

    人が読んでいる<ボクの彼女は頭がおかしい。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください