《ボクの彼は頭がおかしい。》學園ドラマ②
よく分からないけれど、五月と牛くんが何やら言い爭っている模様。
「沙紀にやめろって言ってきて」
「はぁ?何で俺が?自分で行けよ!」
「だから、わたしがこの件に関わったら余計にややこしくなるでしょ。だいたい、アンタが元兇なんだから男だったらきっちり自分でケリつけなさいよ」
「ふざけんな!俺は雫ちゃんに告っただけだぜ?それなのに何で俺が悪いんだよ!?」
「雫ちゃん、コイツこういう男だから、うん。振って正解だったね」
「……そ、そそうですね」
「俺、沙紀のとこ行ってきます。雫ちゃんに嫌がらせするのやめるように言ってきます。任せて雫ちゃん、君は俺が守るから!!」
展開についていけてない僕。
なんだかなぁ。
まぁとにかく、牛くんは教室を飛び出して逝った。
ってか、牛くん雫さんのことまだ諦めてなかったんだ。
面倒くさい人。
數分後、青白い顔の牛くんが帰ってきた。
大勢の取巻きを従えた藤堂沙紀を手土産に。
あららららら、シリアスな展開の予。
晝休みにも関わらず、教室がテスト中のように張りつめた空気となった。
これ以上は有り得ないというぐらいの重たく不吉な空気。
沈黙がを刺す。
五月と僕が王と向かい合うようにして立ち、雫さんを背後に隠す。
ちょっと足が震えている気がする。きっと気のせい。
「久しぶりね、五月」
最初に沈黙を破ったのは王のほうだった。
氷のように冷ややかな視線が僕らに突き刺さる。
「口利いてくれるようになったんだ」
王の圧倒的な存在に一歩も退くことなく、五月はさらりと言い返した。
「やむを得ず、ってとこ。それよりあなた、自分の立場を分かってるの?」
「分かってるつもり。やむを得ず、今回の件にかかわってるってとこかな」
王と五月の間に火花が散っているのが見えた。ガチで。
いやだなぁこのじ、苦手なんだよね。
…あ、そうか。
この張した空気からしでも逃れるために、僕は後ろの雫さんとおしゃべりをすることにした。
「やっぱ五月は凄いよね」
「……え、あ、それは、はい、そうですね」
急に僕から話しかけられてビックリしたらしい雫さん。
「見てよこの堂々とした後姿とか、半端じゃない目力。とてもじゃないけど、僕にはこんなオーラ出すことなんて出來ないよ」
「んん、で、でも……先輩、ときどき、ピンクのオーラ、ホントときどきですけど、出てますよ」
「それは逆に恥ずかしい」
「――五月はそこの暗オタッキーと楽しくやってればいいのよ」
雫さんとの會話を楽しんでいた僕の耳に、突然はっきりと聞こえてきた王の皮。
聞き捨てならん。
オタッキーって何だよ。
オタクじゃなくてオタッキーって何だよ。
何か言い返してやろうと一歩前に踏み出そうとしたが、王の後ろに控えているいかにもなじのお兄さん方が目にったので、やめておいた。
きっと五月が何か反論してくれるだろう。
「早瀬くんは確かにオタッキーだけど、それでもわたしの旦那様に違いないんだから……あれ、わたしって…オタッキーな人と結婚する運命なの?そうなの?そもそもオタッキーって何なの?ねぇ、答えてよ早瀬くん!!」と、僕のカノジョさん。
うーん、ぜんぜんなってない。
「…馬鹿ね。まぁとにかく、あたしから言いたいことは一つだけ」
王はそこでいったん言葉を切った。
効果的に間を空け、鋭く五月を睨み付ける。
「今日からはそこのおチビさんだけじゃなくて、あなたも標的だってこと」
それに対し五月は特に何も言い返さなかった。
王と取巻きたちは自らの領地へと引き上げていき、あとには元々教室にいた僕たちとギャラリー、そして王がいなくなったことにより急激にテンションの上がった牛くんだけが殘された。
「面倒なことになったね」と、ため息をつく五月。
本當に。
後ろでのんきに雫さんをナンパしてる牛くんが羨ましいよ。
やれやれ、どうしたものか。
王の処理と、牛くんの処理と、今後の展開と。
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