《ボクの彼は頭がおかしい。》張を強いられる①

「明日の夏祭り、一緒に行こう?」

「よっ!待ってました!」

デートにわれた。

最近、王に五月を取られてばかりで危機じていたので、ちょっと安心した。

五月の浴姿か。

去年も見たわけだけれども、うん。

は五月のために生み出されたんじゃないだろうかってぐらい似合っていた。

あぁ楽しみ。

そして當日。

甚平を著て気合い十分の僕。

待つこと數分。

「お待たせー」

集合場所に現れた五月は、僕の予想通り流行を押さえ、かつ基本は外していないセンス溢れる浴……じゃない!?

な、どうして。

どうして!?

「私服なんだね」と、平靜ぶって尋ねる。

「そうだよ。早瀬くんはそれで來たんだね」

僕の甚平姿をしげしげと眺める五月。

そして意味深な一言。

「うーん、まぁ大丈夫でしょう」

どういう意味?と聞こうとしたのだけれど、僕らの會話はそこで途切れてしまった。

突然、大雪くんと小雪さんが現れたのだ。

「やぁお二人さん」

大雪くんが朗らかに挨拶してくる。

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「やぁやぁ。小雪、すっごく可い!」

五月はそう言って、浴姿の小雪さんに抱きついた。

うーん、どうやら五月はW雪カップルの登場を知っていたようだ。

雰囲気がそんなじである。

普通の服で來た五月。

同じく普通の服で來た大雪くん。

姿の小雪さん。

甚平姿の僕。

嫌な予がする。

それからしばらくの間、四人で屋臺を回った。

大雪くんらは仲睦まじく大変和やかな雰囲気でデートを楽しんでおられた。

それに比べて僕たちは……うん。

的でクマのぬいぐるみを落とすまでやらされるわ(なくとも三千円は使ったと思われる)、五月が僕の甚平を奪ってどっか行くわ(パンツオンリーで「五月ー!五月ー!!」とびながら屋臺を回る自分。よく警察に見つからなかったなぁ)、五月が林檎飴を三回も落とすわで、毎度ながらものすごく大変だった。

今は一息ついて、小さなベンチに座っている。

(小雪さんたちとは別行中)

味しそうに林檎飴を舐めている五月に、今後の行予定を提案してみた。

「次は金魚すくいでもしますか」

ややあって、彼が答える。

「ううん、次はライブ」

「ライブって?」

「今からわたしたちライブするんだよ」

へ?

分かったけど分からない。

ライブってもしかしてバンドがステージに立って曲を演奏するあのライブ?

マジなの、そうなの?

に手を引かれ、ただボーッとついて行くと、祭りの中心に位置するステージに到著した。

三流臭のする司會の男がなにやら大聲で喋っていて、だいたい二百人ぐらいの見人たちがたこ焼きやら焼き鳥やらを食べながら話に聞きっている。

「今からここで、僕たちがライブをするってこと?」

「そっそ。二曲だけだけどね」

あれま。初耳だよ。

自分の知らない間にデビュー戦が決まっていたなんて。

…あ。

だから五月は浴で來なかったわけだ。

ステージ裏にると、牛くんと仙人くんがいた。

後から大雪くんらもってきて、これで「平開化」のメンバーが揃った事になる。

五月からいくつか説明があり、あとは順番を待つだけとなった。

僕だけ甚平、恥ずかしい。

みんなは前々からこの事を知っていたようで、揺のは何一つ見えない。

僕はというと、それはもう有り得ないぐらいに張していた。

普段人前に立つことなどないのだから當然である。

手が震えているし、全からは汗に次ぐ汗。

汗汗汗。汗フィーバー。

はぁけないどうしましょうこれ、なんて頭を抱え込んでいたら五月が僕のとなりに來て腰を下ろした。

張してるみたいだね」

そっと話しかけてくる五月。

「まぁね。五月は張しないの?」

「しないよ。早瀬くんはどうして張してるの?」

「それは……うん、ライブって初めてだし、失敗したらどうしようとか練習不足な気がしたりとか、なんていうか不安。うん、不安があるから張する」

「なるほどね。じゃあ、良いことを教えてあげよう」

「なに?」

「わたしが張しないのは、君がそばにいるから。だから安心できるんだよ。いつでも見守られてる気がして」

五月本人はカッコよくキメたつもりらしいけど……

口の周りが林檎飴で真っ赤になってたからどうにも可笑しくて。

とりあえず拭いてあげて、そしてついに僕たちの出番。

張は取れてないけど、やるしかないみたいです。

かくして平開化の初舞臺が始まった。

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