《ボクの彼は頭がおかしい。》授業

日本史の授業中。

六限目、本日の最終授業。

江戸時代の農民について熱く語っている先生を目に、脳で五月と特大パフェを仲良く分け合って食べているところを想像していると(先日実際に食べに行ったのですが、どうしたことか僕にはサクランボしか分け與えられませんでした)、廊下のほうから五月のび聲が聞こえてきた。

「この地に眠る気高き孤高の戦士よ!!!今こそ復活の時ッ!いでよ召喚獣!!ドラグライト早瀬ウォーリアー!!!!!!!!!!」

うん。

間違いなく全校に響き渡ってるね。

授業が中斷され、クラスメートたちが一斉にこちらを振り返る。

「すみません先生、ちょっと呼ばれたみたいなんで行ってきます」

そう言って僕は席を立った。

「十五分過ぎたら欠課だからな」と、先生は言った。

「分かりました」

僕はゆっくりと教室のドアを開け、廊下に一歩踏み出し、なるべく音を立てないようにドアを閉め、そして、五月の教室に向かって全速力で駆け出した。

七秒後。

「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおリァァァアアー!!」

シャツのボタンを引きちぎりながら、なおかつトリプルアクセルをキメながら五月の教室に華麗に豪快にした。

「さすが早瀬くんっ」

「すげえ!」

「ほんとに召喚されてるし!」

「五月ちゃん可い!」

「早瀬くんがイケメンでないのが殘念!」などなど、教卓のとこで説教をけている五月とそのクラスメートたちから賞賛の拍手が送られる。

息を切らせながら(シャツ破いちゃったからけっこう卑猥なじ)歓聲に応える。

「うるさい!靜かに!五月さんは職員室まで來なさい。みんなは自習を」と、この教室で先ほどまで授業をしていたらしい先生。

口を尖らせながら鋭く言った。

そりゃ怒りますよね。

五月が先生に連行されていくと(なんでか僕は生き延びた)、教室は再び喧騒に包まれた。

教壇に立たされ(シャツを破い――)、五月の魅力について語らされる。

あぁ、15分過ぎちゃったよ日本史の授業欠課だよ、なんて思いながらも語りだしたら止まらなくなっちゃって(しかもこのクラスの人たち、乗せるのが上手いんだよね)、その授業の終わりまで(約30分間)マシンガントークしてしまいました。

黒板にはビッシリと五月の魅力、それから僕がどのぐらい彼のことを想っているかが書き記されており、今思い返してみるとものすごく恥ずかしいです。

「いい授業だった」とか「早瀬先生サイコー」とか、うん、中にはノートにメモってる人もいたし、なかなか充実した時間でした。

その日の放課後。

職員室での拷問を終えた五月はまっすぐ家へとやってきた。

「やぁ早瀬くん!抱きしめてあげるからさぁおいで」

先ほどまでかなりハイレベルな説教をけていたはずなのに、信じられないぐらい機嫌の良い五月。

シャツのボタンを修繕してくれるわ、部屋を掃除してくれるわ、予習を手伝ってくれるわ、いつもなら絶対に一緒に見てくれないホラー映畫(この日はミザリーだった気がする)を一緒に見てくれるわで、記念すべき一日となった。

久しぶりのデレ、ごちそうさまです。

後から聞いた話だけど、早瀬先生(僕)の授業の板書を見て、五月ちょっと泣いてたらしい。

もちろん嬉し涙のほう。

逆だったら今ごろ消されてる。

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