《ボクの彼は頭がおかしい。》ミッション・イン・ポッシブル
五月のバイト先に來ております早瀬です。
五月の上司さんから何やらややこしい説明をけております早瀬です。
隣の五月は上司さんの話を聞いて熱心にメモを取っております。
何の話かというと、一言で言えば僕と五月に『スパイ活をしてしい』との事。
えっと、詳しく説明します。
(言うほど詳しくない)
五月のバイト先である結婚式場。
そして、最近オープンした、わりと近所にある真新しい(五月のバイト先とは別の)結婚式場。
つまりはライバル店。
そこの視察を、五月と僕にお願いしたいという話。
式場の雰囲気、客のり、そしてプランの種類や価格設定。
それら全ての報を、スパイ活により極に手する。
ちょっとした非日常的な験。
何でも僕たちは大學生のカップルで、できちゃった結婚をすることになったという設定らしい。
名前や住所、電話番號なんかも偽り、なんかものすごく本格的。
「功したら、ディナーの無料券あげるから」と、上司さんは言った。
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ここで言う無料券とは、この結婚式場でも利用されている超高級レストランの無料券である。
「頑張ります!」
気合十分の五月。
目が異様に輝いている。
「あ、じゃあ最後に一つ言っとくね。萬が一何かあったら、すぐに助けを呼ぶこと。近くに車止めさせとくから。いいね?」
「はい!」と、五月。
いやいや、ちょっと待て。
「その『萬が一』って何なんですか?」と、僕は尋ねた。
「アハハ、ただの冗談みたいなもんだからそんな真剣な顔しなくてもいいよ。捕まえられて拷問されるなんてことはないから、大丈夫。ただ念のために言っただけだから」
上司さんはおどけた調子でそう言った。
しかしその直後に、真剣な顔になってこう一言。
「…何かあった時は、無理に自分たちで何とかしようとするなよ?いいな?すぐオレたちに頼れ」
「はい!」と、五月。
いやいやいや。
これもう斷ったほうが――
ミッション當日。
不安が途切れないんだけど仕方が無い。
ディナー券を目標に頑張ろう。
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設定は全部暗記したし、それに何より五月がついてるし、うん。
きっと大丈夫。
めかし込んだ彼の隣に座り、上司さんたちにライバル店の近くまで送ってもらう。
「じゃ、オレたちはここにいるから。がんばってきてね」
上司さんはにこやかにそう言い、僕たちを見送った。
「ディナーデートのために頑張りましょ!」
店の前、右手でグーを作り僕のほうに突き出してくる五月。
「ディナーのために」
僕もグーを作り、彼の小さな右手にコツンとぶつけた。
店にると、そこには驚くほど神聖な空気が漂っていた。
新鮮な、ではなく神聖な、である。
穏やかなBGM、何かの花の香り、白。
「こんにちは」
僕たちが店の雰囲気に浸っていると、すぐに一人の若いが近づいてきた。
いよいよ勝負が始まる。
任務は思いのほか順調に進んだ。
上司さんがしがっている報、その全てが面白いほどにスルスルと手にる。
五月も僕も落ち著いているし、いいじだ。
そして數十分後には一通りの説明が終わった。
「ありがとうございました」と言い席を立つ。
達目前。
あとは自ドアを出て車に乗り込むだけ。
五月の手を取り、一歩踏み出し――――
「あの、すみません」
突然、先ほどのに聲をかけられる。
まさか、バレた?
一瞬で冷や汗が噴出する。
橫目で五月を確認してみると……
うん、表が強張っていらっしゃいますね。
なかなかのレア顔。
ちょっとイジめたくなるじの、なんていうかMっ気の漂うって言えばいいのかなんなのか…。
彼は普段、Sっぽいじだけど、僕が思うに実際は微M――って今はバカ談義なんかしてる場合じゃない!
大丈夫だよ、と小さくうなずくいてみせると、彼もそれに応えるかのように小さく微笑んだ。
ぎこちない笑みではあったけれど。
「なんですか?」と言って僕は振り返った。
「先ほど言い忘れてしまっていたのですが、ただいまオープン記念ということでウェディングドレスの無料試著を行っております。もしお時間があるようでしたらぜひいかがですか?」
がそう言った瞬間、僕たちはホッとをなでおろした。
どうやらバレてはいなかったらしい。
「どうする、千秋?」
僕は千秋(=五月)に尋ねた。
彼の答えはもちろん、「著たい!」
大きな目を幸せそうに細めて、顔をくしゃっとしながら笑うその表。
たまりません、最高です五月姫。
普通に考えてミッション中に余計な道草を食うべきではないのだけれど、直前までのバレたかもしれないというプレッシャーと、そして何より五月の笑顔により、この時の僕はまともな判斷が出來なかった。
に連れて行かれる五月を見送り、ソファに座り込む。
彼の姿が見えなくなると同時に、見知らぬ男が近づいてきた。
「ちょっとお尋ねしたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」
筋質な男の低く図太い聲。
僕は一瞬で悟った。
間違いなくスパイであるとバレている。
ウェディングドレスの無料試著は僕と五月を引き離すための策略だ。
なぜだか分からないけど確信できる。
バレた。
そう、僕らはしくじったのだ。
それらの思考と不安を表に出さないようにし、ソファから立ち上がる。
五月は奧の部屋に連れて行かれた。
彼もきっと同じような狀況下に置かれているのだろう。
救出しなければ――――
『無理に自分たちだけで何とかしようとするなよ?いいな?すぐにオレたちを頼れ』
數日前の上司さんの言葉が、不意に思い出される。
あー、僕が下手にくよりもまずは助けを呼びに行くことのほうが賢明な判斷なのか。
よし。
とりあえず外に出よう。
上司さんを呼んで、五月の救出はそれからだ。
……なんて出來るわけないよね。
「あ、すみません。先にトイレに行ってきていいですか?」
男が次の言葉を発する前に、僕は素早くこう言った。
そうして相手の返事も待たずに、若干の早足でトイレ、というより奧の部屋を目指す。
しかし男がついてくる。
その距離は五メートルもない。
やっぱり、簡単には逃がしてくれませんよね。
先に男を片付けますか。
僕は予定を変更し、トイレにった。
り口の壁にピタリと張り付き、男がってくる瞬間を狙う。
――いまだ!
敵の死角から襲い掛かり、まず右腕を摑んでトイレに引きづり込む。
同時に膝で男の腹部を蹴り上げ、きを封じる。
あとは男の首を締め上げ、気絶させるだけ。
かかった時間は數十秒。
実に簡単な作業である。
意識の飛んだ大男を引きづり、個室に隠す。
よし、あとは五月を救出するだけ。
奧の部屋へとつながる廊下を走り、閉ざされた扉を押し開ける。
「五月!」
息を切らせて部屋の中に駆け込むと……
ウェディングドレスを著た、純白の五月がそこにいた。
急ぐべき狀況だということも忘れ、ただ呆然と眺める。
最近の流行なのか、短いスカートのタイプで生足が大膽に見えちゃってる破壊力抜群の絶景。
白金の輝き。
神々しいです。
「そんなに私のドレス姿見たかったの?」
びっしょりと汗を掻いた僕を見てクスクス笑う五月。
ハッ。
それを見てようやく我に返る僕。
眺めることは後からでも出來る。今はここから逃げることが先決だ。
彼の手を取り、ぐいとこちらに引き寄せる。
「え、なに!?」
僕に抱きかかえられ、驚く彼。
「その靴じゃ走れないでしょ」
十センチはあるよね、そのヒール。
「なんで走らなきゃいけないの?」
左腕を僕の首に回しながら彼はそう尋ねてきた。
「説明はあとでするから」
ウェディングドレス姿の五月をお姫様抱っこし、僕は無我夢中で駆け出した。
再びもと來た廊下を全速力。
あまりのスピードに両脇の景が歪んで見える。
出口まではもうあとわずか。
はるか後方に追っ手が見える。
「このままの勢いで結婚しちゃおうか」
僕は走りながらそう言った。
「さんせー!」
彼は僕の首元にキスをした。
こんな非日常が、僕らの日常である。
というどこかで見かけたことのある文章で締める逃げ。
たまに使います。たまに。
あ、すでにお気付きだとは思いますが今回の章は途中から作者(≒早瀬)の妄想が大発しております。
映畫の見すぎです。すみません。
味しいディナーを彼といただくことができ、大満足の一日でした。
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