《ボクの彼は頭がおかしい。》介抱②
次に目を覚ましたのは、1時(13時)をしまわった頃だった。
あー、が渇いた。
お茶でも飲みにリビングへ行こう、と思ったけど、やめた。
なぜなら枕元に、ポカリが置いてあったから。
お禮を言おうと部屋を見回すも、肝心の五月がいない。
どこに……あ、これか。一階から音が聞こえてくる。
察するにこれは、誰かが晝ごはんを作っている音。
母は夕方まで仕事だから、いま家に居るということは有り得ない。
つまり料理をしているその誰かとは、必然的に五月ということになる。
なんかちょっと泣けてきた。
君って本當に素晴らしい子だよ。
ポカリを飲み、マスクを探す。確か部屋にあったはず。
僕はもう、彼に帰ってもらうことをあきらめた。
(あきらめるの早い気がするけど、熱があるので許してください)
だからこそのマスクである。
數分後。
彼がお粥を持って部屋にやってきた。
いつもと違う赤のエプロンが、數年後の未來を強く連想させる。
『ただいま』
『お帰りなさい。今日もお仕事お疲れ様(ハート)』
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『五月も疲れたでしょ?』
『ううん。今日は午前中で終わりだったから。それより、ご飯とお風呂どっちにする?』
『どうしようかなぁ』
『あ、もちろん…第三の選択肢も……あるよ…?(ハート)』
妄想ストップ。
なぜかって?
それはね、思い出してしまったからです。
現実世界で、先ほど眠りにつく前に五月にぶちゅーっとやられたことを。
『思い出し笑い』ならぬ『思い出し赤面』
大、彼はどうしてキスなんかしたんだろう。
うつってないといいけどなぁ。
「し熱いかも。気を付けて」と、五月は言った。
「あのー」
「なに、どうかした?」
「さっきはゴチャゴチャ言ってごめん。んで、ありがとう」
「…いいえ」
五月は嬉しそうだった。僕も嬉しくなった。
こうなってくると、あとはうつらないことを祈るのみ。
「じゃあいただきます」
「早瀬くん、マスク著けたままでどうやって食べるの?」
「……」
全部熱のせいだ。
マスクの存在を忘れていたことも、うまくレンゲが握れなくて五月に食べさせてもらったのも、どれもこれも全部熱のせいだ。
ちなみにお粥の味はちょっとしょっぱかった。
でも味しかった。嬉しくて味しかった。
不思議な味である。
それから僕は、再び眠った。
自分でもびっくりするほどの深い眠りだった。
目を覚ますと、すでに外は夕暮れ時であった。
部屋に五月がいなかったので、一階に降りる。
思った通り、そこには五月がいて夕食の準備に取り掛かっていた。
「まだ出來ないから寢てるといいよ」
僕に気付くと、五月はそう言った。
「もう十分寢かせてもらったから大丈夫です」
「そっか」
「うん」
ソファに座り、臺所に立つ五月を眺める。
手伝えなくてごめんね。
「気にしないで。早瀬くんはテレビでも見てて」
出た、五月の読心。
それからしばらくして母が帰ってきた。
僕は早めに夕食を済ませ(味しいご飯をありがとうご馳走様でした)、自分の部屋に戻った。
時折リビングから聞こえてくる母と五月の笑い聲をBGMに、夢の世界へとを投じていく。
あぁ…ダルい……。
そういえばお風呂ってないや…………明日でいいか。
おやすみなさい。
かすかな音に目を覚ました。
完全な闇。
何時だろう、11時ぐらいかな。
重たい瞼を上げ、暗闇に目を慣らす。
すぐにパジャマ姿の五月が目にった。僕のベッドの隣に布団を敷いている。
おいおいおい、病人と同じ部屋で寢るのかい?
お母さん、普通止めるでしょ。
確かに五月が隣にいてくれるほうが嬉しいんだけど、でもよくないよね。
出て行ってもらわなきゃ。
…そうは思ったものの、が言うことを聞かない。
口は全く開こうとしないし、手なんてく気ゼロ。
金縛り…ですか?
(いいえ、ただの調不良です)
「寢てる時にごめん…でも許してね」
不意に五月が、寢ている(と彼は思っている)僕に向かってささやいた。
なんのことだろう、と思っていたのもつかの間。
僕は五月に、そっと抱きしめられた。
うぉー、溫かくてらかい。最高の覚が全を支配する。
(中略)
やがて彼はベッドから降りた。
「おやすみ早瀬くん」
彼の言葉に、おやすみ、と心の中で返事をする。
まぁ、こっちは興してしばらく眠れそうにないんですけどね。
金縛りサンクス。
久々の五月のデレ、ごちそうさまでした。
翌朝。
自然と目を覚ます。
時計の針が示すのは午前五時。
上半を起こし、敷布団で眠っている五月を見る。
(ちらりと見えるおへそがたまらない)
僕はベッドから起き上がり、ゆっくりと彼を抱きかかえた。
そうして起こさないよう慎重に、ベッドに寢かせる。
(うちの敷布団、上等じゃないから床にダイレクトに寢てる覚がするんだよね。背中痛めてないかな?ごめんよ五月)
楽々と一連の作をこなすことができたため、僕は調が回復したらしいことを悟った。
それでも一応、熱を測っておく。
『36.6』
よし、治ってますね。ありがとう五月。
僕はシャワーを浴びるため、靜かに場へと向かった。
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