《ボクの彼は頭がおかしい。》面倒な人たち2
「つまりは牛くん&王カップルとのダブルデートってわけですね。帰ります」
「ダメ、絶対!」
電車に揺られています。
わたくし早瀬のテンションは、最近の経済狀況よりも落ち込んでいます。
老後資金2000萬に絶し、増稅を憂い、地方過疎化をなすもなく見つめることしかできず、ひたすらに通勤電車に揺られ日々の文句を垂れることしか出來ない人生を100回繰り返した後のような、相當にどんよりとした暗い気持ちです。
(比喩センス低っ)
…よりによってどうして彼らとダブルデートなんか…。
大雪くんと小雪さんなら喜んで行くところだけど、ねぇ?
「早瀬くん、機嫌直してよ」
隣に座る五月から激しく揺さぶられる。
「いったん帰ろう。そうすればきっと回復するから」
「……もういい」
五月は僕に著していたを離し、大きく橫にずれた。
2人の間に數十センチの隙間が出來る。
たった數十センチだけど、心理的な距離に換算すると、英単語を1900個覚えなくちゃいけないのにまだ150個しか覚えてない、みたいな、そんなじ。
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(比喩センス…)
五月はそれっきり窓の外の景を眺めているし、向かい側に座る男&カップルも無言で僕たちの様子を眺めているだけだし、もちろん僕が何か話すわけでもないし、つまりは気まずい沈黙。
あぁ、帰りたい。
そのままの空気で目的地に到著した。
今日この遊園地に來るどのグループよりも、僕たちは気くさいオーラ放ってると思う。
ただ、ルックス的にはヤバいくらい輝きMAX(ただし、當然ながら僕を除く)である。
僕の自慢のハイスペックな彼、五月。
2年生にしてすでに學校の王蜂と化した藤堂さん。
黙ってればこの僕でも惚れそうなぐらいカッコイイ牛くん。
そして僕。
中學までピアノと水泳をしていて、映畫を毎週なくとも3本は見ている、ガリ勉質の僕。
最近は定期テストの順位も上がってきたし模試の偏差値も上々(夏休み以降68以上をキープ!さらっと自慢)な僕。
見た目に関しては、五月と五月母を除いて(この二人だけは僕のことを隠れイケメンだと言ってくれる。ありがとう。あなたたちのおかげで僕は今日も生きていけます)地味でどこにでもいそうなパッとしない、で々変なことやってそうなじの顔、らしいです。
そうです。
それもあって、僕は帰りたいんです。
こんなまぶしい3人の中に僕みたいな並以下の男が混ざっていると――
「痛っ」
いきなり五月に毆られた。
肩だったからホント言うとそんな痛かったわけじゃないけど。
「偏屈すぎ!そういうの捨てなさい!」と、五月。
あちゃ、心の聲がれてしまっていたか。
見ると牛くんと王が憐れみの目をこちらに向けている。
う…。
「そうは言ってもさ…」
この期に及んで彼に反論しようとする僕。
だけどその前に五月に追撃され、あえなく撃沈する。
「もうやめて!早瀬くんはね、わたしが認めた男なの!いい?分かるでしょ?周りが何て言ってたとしても、わたしは早瀬くんのことホントにカッコいいと思ってるし――」
慌てて彼の口を塞いだ。
ここは遊園地のチケット売り場。
つまりは大勢の人が行き來しているわけです。
みんな見てます。
すごく恥ずかしいです。
とりあえず大急ぎでフリーパスを購し、その場を離れた。
「五月、ちょっといいかな」
牛くんと王、その他大勢の人から離れたところに五月を呼ぶ。
「さっきはごめんなさい。余計なこと言い過ぎちゃいました」
なぜか彼のほうが先に謝ってきた。
「いやいやどう考えても僕が悪いから。謝らないでよ」
「ううん。わたし自分のことは棚にあげて早瀬くんばっかり責めちゃって。ズルいだなって思う。ごめんね」
「ズルくなんかない。五月は全然ズルくない。ズルいのは、ねじまがった格の僕だ」
彼は困ったような顔をした。
だから続けて言う。
「えっと、今日がちょうど良い機會みたいだし頑張ってみようと思う。なるべく卑屈にならないように、努力します」
五月の表が見る見る明るくなっていき、すぐに太の輝きを超えた。
それだよ、それ。
僕はこの笑顔を見るために生きているんだ。
「さすが!惚れ直しましたぜ旦那!」
子供みたいにはしゃぎながら飛び付いてくる五月。
ほんと可い。
まぁ、一件落著ってことで良いみたいですね。
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