《ボクの彼は頭がおかしい。》バンド①

「とりあえずカラオケ行っとく?」

「え、練習は?」

「今日はもういいや。遊ぼ」

そういうわけで來ましたカラオケ。

バンドメンバー全員で來ました。

五月、大雪くん、牛くん、仙人くん、僕という組み合わせです。

部屋にるなり五月が歌いだす。

「手帳開くと~もう♪」

いやまだ音楽流れてないからね。

「はい、じゃ次は早瀬くん」

五月が大塚のさくらんぼを大音量で熱唱し終え、マイクを手渡してくる。

「どうも」

僕は立ち上がった。

全員の視線が僕に集まる。

歌うのは、スピッツの『スパイダー』

「可い君が好きなもの~」

「意外に、って言うと失禮だけど、上手い……」と、大雪くん。

「早瀬のくせに意味わかんねぇ」と、牛くん。

「ね?早瀬くん上手でしょ。聲が高くて可いんだよね」と、五月。

どうだい君たち。

今まで隠していたけど歌唱力には々の自信があるのだよ。

勝ち誇った表をして歌い続ける僕。

あぁ、気持ちいい。

「だからもっと遠くまで君を~♪奪っt――」

Advertisement

いきなりBGMが止まった。

まだ途中なのに。

「なんで消しちゃったの?」と、これは大雪くんのセリフ。

五月への質問です。

「早瀬くんの番はね、聞く側が好きなタイミングで停止してもいいっていうルールがあるの」

「なるほどね」

あれ、大雪くん納得するの早くないですか。

うん。

この特別ルールが出來た時のことを説明するには、僕と五月が初めてカラオケに行ったあの日まで遡らないといけないんだけど、今日は時間もないので省略します。

次は大雪くんの番。

なるほど、島唄ですね。

聲が太くて凄くマッチしてます、上手です。

その次に歌ったのは牛くん。

福山雅治?

バラード?

milk tea?

ふざけんな。

イケメンで歌も上手いとかふざけんな。

仙人くんはパスしました。

よって彼の力は未知數。

1時間後。

「そうだ、罰ゲーム有りで勝負しない?」

なんか五月が言い始めた。

「いいぜ!採點勝負だろ?」

「もちろん。あ、そうだ。どうせだからペア組んで勝負ってことにしよう」

「なるほどな。あ、でも人數はどうするんだよ」

「呼べばいいじゃん」

勝手に盛り上がってる五月と牛くん。

さらに1時間後。

メンバーが追加されました。

小雪さん、雫さん、王。

え、なにこのオールスター。

「じゃ、男でペア組んでもらいます!」

五月がこの場を仕切っている。

「結局のところ、今から何するの?」と、僕は大雪くんに尋ねた。

「カラオケの採點で勝負するんだって。男でペア作って、點數の低かった2チームには罰ゲーム付きで」

「あぁ、ありがとう」

そういうことらしいです。

で、くじ引きの結果、ペアはこんなじになりました。

エントリーナンバー1番、雫さん、牛くんペア。

エントリーナンバー2番、僕、王ペア。

エントリーナンバー3番、小雪さん、大雪くんペア。

エントリーナンバー4番、五月、仙人くんペア。

「何を歌いますか?」

王に恐る恐る尋ねる。

「あたしは何でも歌えるから、あなたに合わせてあげる」

ははぁ、有難きお言葉。

そんなこんなで作戦タイム終了。

まずは牛くんと雫さんペア。

って今気づいたけど、このペア…………あ、隣の王様もそれに気がついたらしく表がものすごいことになっていらっしゃいますね。

「笑ってください藤堂さん。空気が悪くなっちゃうんで…」

「分かってるわよ」

笑顔で返事をする王。

なぜか小指を踏みつけられた。

痛い。

あ、曲が始まりました。

ゆずの『夏

まぁ今は冬になりかけの秋ですけど。

ニヤけた牛くんと張した面持ちの雫さんです。

「ち――駐車場のネコはぁあくびをぉしなッがらぁ~あぃ♪」

雫さんで出しのタイミング間違えた!

そして、こ・れ・は

下手だ!!

下手すぎる!

下手すぎて可い!さすが雫さん!

五月なんてお腹抱えて笑してますからね、はい。

「いつもと変わらなぁぁい穏やかな~町並み~」

はいはい牛くん、君がどんだけ上手かろうと、どんだけイケメンだろうと、雫さんの下手さをカバーすることなんて出來ないんだよ。

そして結局、點數は66點。

ご愁傷様です。

「牛ピー下手すぎ!」牛くんをベシベシ叩く五月。

「イケメンのくせに歌唱力ないって、なんだか殘念」と、小雪さん。

「本當に殘念な人」これは僕。

みんなで牛くんをイジる

間違っても雫さんをイジったりはしていない。

「いや違うだろ!どう考えても雫ちゃんが下手だt――」

「黙れバカ!」

どんだけ空気読めないんですか牛くん。

もちろん全員でフルボッコです。

(ちゃっかり王も混ざって牛くんを蹴ってたのがウケた)

その間、雫さんは點數の表示された晶畫面を見つめて嬉しそうにしていた。

「や、やりました先輩!」

笑顔で話しかけてくる。

…。

どう反応すればいいんでしょうか。66點で喜んでいる人に。

「あ、うん良かったね」

とりあえず言っておく。

「ありがとです。66點なんて…初めて取りました」

「そうなの?いつもはどのぐらい?」

「あ、えと、カラオケは初めて來たから、その、比べてるのは定期テストの點數…とかで…」

ん、発言の意味が良く分からなかったけれど、つまりは、今までの定期テスト(勉強)の點數で66點以上を取ったことがない、と、そういうことなのですか。

「え、ちょっと待って雫さん。定期テスト、いつも平均どのぐらいなの?」

「平均は……正確には、わからないですけど、たぶん、だいたい……んと……30點…ぐらい…?」

平均が赤點。

進學校選んで大丈夫だったんですか、ってかまずどうやって合格したんですかあなた。

「ほら、マイク持って」

雫さんと話していた僕に、王がマイクを手渡す。

あ、次は僕らの番ですね。

曲のタイトルが表示される。

アナ雪『とびら開けて』

なんかみんな吹いた。

僕も歌いながら笑った。

どうして、目立たないキャ男子と學校一のがデュエットしてるんだろうって思って笑った。

(何度もしつこいですけど、僕個人としては、學校一のは五月だと思っています)

採點結果は92點。

「あなた歌上手なのね」

王が褒めてくれた。

何年ぶりだろう、一日に何回も人から褒められるのって。

「いやぁ上手いだなんて、やめてくださいよ。ちょっと歌うのが好きってだけなんで別に上手いとかそんな――」

「調子乗りすぎー」

五月が橫からってくる。

軽蔑の眼差しが痛い。

「あ、良いこと思いついた」

何を思いついたんですか大雪くん。

「今度のライブのとき早瀬にも歌ってもらおうよ。五月と早瀬のダブルボーカル、一曲分用意しよう」

「いいねそれ最高だよ大雪くん!」

長椅子から飛び上がって大興の五月。

「でしょ?」

「待ってください。それは勘弁してください」

「あ、俺たちの番だ」

僕との會話を切り上げ、マイクを手に立ち上がる大雪くん。

小雪さんもその隣に並ぶ。

彼らが選択した曲は、絢香とコブクロのあれ、タイトル忘れたけどあの有名なやつ。

やっと本格的な歌唱力が見れる、うん。

とりあえずライブの件は忘れよう。

忘れるべきだ。

結果は94點。

僅差で負けた。

これで僕と王の現在の順位は二位。

大雪くんペアの勝ち組りが決定。

逆に、雫さんと牛くんペアの敗北も決定です。

ラストは五月と仙人くんだ。

さて、曲は何をチョイスしたのかな。

『めざせポケモンマスター』

「たとえ火の中水の中草の中森の中~」

仙人くんが無機質だけど正確な音程で歌う。

五月は指の関節をバキバキ鳴らしながら突っ立っている。

「土の中雲の中あのコのスカートの――」

「キキャァァァァァァアァァァアアアアッッ!!!」

強烈なび聲が室に反響し耳をつんざく。

なるほどね五月さん、あなたはこれがやりたかったのね。

「マサラタウンにさよならバイバイ。オレはこいつと旅に出る」

「ピカチュッ♪」

変わらず冷靜に歌い上げる仙人くん。

なんかポーズ決めながらピカチュウの鳴き聲出してる五月。

悔しいけど可い。

「――保証はどこにもないけど」

「それはそうね~♪」

オーキド博士のセリフ(そりゃそうじゃ!)が真矢みきさんのモノマネに変わっていた。

あまりの上手さに牛くんと抱き合って笑った。

すぐに気付いて突き飛ばした。

注目の採點結果は87點。

妥當でしょうね、五月の歌唱力は合いの手だけだったからほぼノーカウントでしょうし。

    人が読んでいる<ボクの彼女は頭がおかしい。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください