《ボクの彼は頭がおかしい。》文化祭ライブ①

10月25日。

ついにやってきました文化祭當日

ステージの裏で待機中です。

僕以外のバンドメンバーはとても落ち著いています。

いま、ステージでは三年生の漫才コンビが面白いトークを繰り広げていらっしゃるところです。

この次に出番がやってくるのが、僕たち平開化。

あぁ張する。

「大丈夫、早瀬はそんなに目立たないから」

ありがと大雪くん、なんか元気でた。

「では、次の発表にうつります。プログラムナンバー12番。2年1組の五月ちゃん率いる、平開化のみなさんです」

司會の人の紹介。さすが文化祭ですね、ほんとダサいです。

しかも『五月ちゃん率いる』って…。

公の場なんだから普通名字でしょ。

ステージに上がる。

まだ幕が降ろされているため、客席の様子は一切見えない。

メンバーそれぞれがポジションにつく。

客席から見て、一番右がドラムの大雪くん。

中央より若干右よりにボーカルの五月。

そして一番左にはキーボード兼ピアノの僕。

僕と五月の間に、ギターの牛くんとベースの仙人くん。

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「ミスしたら運場に生き埋めだからね。じゃ、頑張りましょう」

楽しそうな五月。

うん、ものすごいプレッシャー。

ざわつくお客さんたち(つまり學校の生徒)をよそに、僕たちは演奏を開始した。

同時に幕が上がり、先ほどまでのざわつきが一瞬で歓喜のびへと変貌する。

1曲目は『全力アンライプ』

いつぞやのお祭りでやったものと同じ。

(演奏部分省略。クールに鍵盤を叩いている僕が想像できればOKです)

出來は上々、ミスなくやり終えた。

盛大な拍手が巻き起こる。ちょっと嬉しい。

一度も學校生徒の前でライブやったことはないんだけど、やっぱり五月と牛くんのおかげで知名度は高いらしい。

「こんにちは」

五月がマイクを手に取った。

「こんにちは!」

「こんにちはぁ!」

「こんちわぁ!!」

「こんにちは!」

多くの生徒たちが五月に挨拶を返す。

…みなさん元気ですね。

「今日はこのような素晴らしいステージに立たせていただいて本當に嬉しく思っています。一杯頑張りますのでよろしくお願いします」

は深々と頭を下げた。

すると先ほどと同じように、実にさまざまの歓聲が五月に向かって投げかけられる。

男たちのむさ苦しいび聲や、の子たちの可らしい聲援などなど。

最前列に座っている3年生たちも、五月に陶酔しているように見える。

あぁ、五月ってやっぱりスゴい人なんだな。

1、2年生だけじゃなく3年生にも人気があるなんて。

「じゃあ初めてなのでメンバー紹介でも。えっと、この人は『ギター』と『ルックス』擔當の牛ピーです」

「ども!」

五月からの紹介をけ、ギターをうならせる牛くん。

とたんにホール中に響き渡る子生徒たちの黃い悲鳴。

高いから耳に直接響くんですよね、はい。

「盛り上がってるかぁ!!??」

客席を煽る牛くん。

男子からの聲援は皆無、しかし子からのそれが凄まじい。

わかるよ、うん。

男たちは嫉妬してるんだよね、彼の恵まれすぎた容姿に。

「今日はオレのために集まってくれて――」

そうして牛くんのナルシストトークが始まる。

いやいや君を見に來たわけじゃないから、これ文化祭のプログラムのうちの一つだから。

などと思いながら牛くんを斜め後ろから眺めていると、五月が近づいてきた。

「ギター取って」

「あ、はい」

僕の後ろに用意されているギターを手に取り、五月に渡す。

「牛くん、いつまで喋らせとくの?」

「もう終わってもらうよ、みんな準備できたみたいだから」

はそう言うと、元の立ち位置に戻って言った。

「――オマエら全員して――」

「はい、じゃ次の曲いきまーす」

大雪くんが牛くんのキメ臺詞をさえぎる。

とたんに男子からの拍手が沸き起こる。

ちょっと笑った、牛くん妬まれすぎ。

會場が靜かになり、五月が息を吸った。

これがこの曲の始まる合図。

椎名林檎の『ここでキスして。』

「I’ll never be able to give up on you――」

が一瞬で盛り上がる。

この曲有名だからね。

うん、僕も何かドキドキしてきた。

こっちから見えてるのは五月の小さな後姿だけだけど、それでも彼の可らしさとかカッコよさとか全部伝わってくる。

いま客席側から見てる人たちは、さぞかし破壊力抜群の絶景を目にしているんだろうなぁうらやましい。

「――again」

おっと見とれて演奏を忘れるところでした。

なんとかギリギリ間に合わせる。

「―あなたの前じゃさめざめ泣いたりしないでしょう――」

言われてみれば、五月が泣いてるところなんて見たことない気がする。

噓泣きとか、笑いすぎてちょっと泣くとか、そんなんばっかですね。

「――手錠かけられるのは只――」

「あたしだけ」

「行かないでね――何処にだって――あたしと一緒じゃなきゃ厭よ」

サビ。あぁもうこれはアカン。

すぎ。

客席も完全にやられちゃってるからね。

息を呑むっていうのはまさにこういうこと。

そして2番へ。

「違う制服の――子高生を――目で追っているの知っているのよ――」

歌いながらこちらを見てくる五月。

目が合う。

「――あたしは綺麗とか人なタイプではないけれど――」

「――こっち向いて――」

とりあえずここらへンで意識飛んだ。

もう何も覚えてない。あまりのしさに、やられた。

肩にかけてるギターも似合いすぎ。だめ、反則。何度も練習の時に見ていたはずなのにほんと不思議。

曲が終わり、ホールが再び歓聲に包まれる。

「惚れた!!」

「かわいいー!!!」

「可すぎて死ぬ!!!」

「マジで付き合って!」

「可い!!」

「かわぃぃいいいいいい!!」

「五月ちゃん好きー!」

もうスゴイね。

男だけじゃなくての子からも告白されてるからね。

「…ありがとう……」

ちょ、なぜ照れてる五月さん!

のその反応に対して再び、「可い」「結婚して」などの鳴り止まぬ聲々。

…キリがない。

「メンバーを紹介させてください。ドラムの大雪くん、それからベースの仙人くんです」

五月の言葉と同時に2人がステージ中央に躍り出る。

「アピールタイム」と、くすくす笑う五月。

「みなさん初めまして、大雪です!今から仙人くんを背中に乗せて腕立て伏せします」

「どうも、仙人です。今から大雪先輩の背中の上で綾取りします」

2人はそう言って、本當に腕立て伏せと綾取りをし始めた。

ドッと沸く場

何のアピールですかこれ、僕まで笑っちゃったじゃないですか。

「どう、調子は」

五月がギターを戻しにやって來た。

「まぁまぁかな。さっきのめちゃめちゃ可かったよ」

『ここでキスして。』の想を伝える。

「やめてよ早瀬くんまで」

は笑いながら戻って行った。

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