《キミと紡ぐ【BL編】》第6話

檜山は俺が何か話題を振る以外で雑談はしない。

俺も短いながらもこの『時間』を大切にしたくて、無駄話を振るような事はしなくなった。

2人だけの空間。

視線は合わすけれど。

プリントの同じ箇所を互いに指差し合いながら、言葉をわすけれど。

嬉しそうに微笑む顔は、俺だけに向けられるけれど。

なのに俺達の指は、手は、は――。

1度もれ合う事はなかった。

彼がれた場所を、俺の掌がなぞる。

けれど俺の掌は、彼の溫がどんな暖かさなのか、知らないままだった。

不機嫌に車を降りていけるあなたの奧さんは、その暖かさを知っているんだろうな。

怒りをぶつけても、どんなに憎たらしく振舞っても。

彼の隣に、彼の帰る場所に、自分の居場所があるのを知っている……。

――そんな羨ましさではない自分の心にある苛立ちに、俺はいつも可笑しくて、嗤ってしまうのだ。

          

    人が読んでいる<キミと紡ぐ【BL編】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください