《キミと紡ぐ【BL編】》第2話

1階の中庭を突っ切る廊下を通ろうとして、ピタリと足を止める。

聞き慣れた聲に、思わず扉のを隠した。

――里見先輩。

「敬、ちょっと屋上まで來てくんないかな?」

先輩を呼び捨てにするの聲に、「えーッ」とダルそうな聲が答える。

「イヤに決まってんだろ。寒ィじゃん」

「んなこと言ったら、ここも寒いわよ」

「だから早くしろよ。何だよ、和

「あんたねぇ、今日が何の日か考えたら判んでしょ。恥かかせたら、タダじゃおかないんだからね」

こんなに他の生徒が居る中で、とグチるように言った生徒に、里見先輩は笑ったようだった。

「かかせねぇよ」

その臺詞に、ヒュッと息を吸ったまま、俺の心臓は止まってしまったんじゃないかと思った。

「ほら。……言っとくけど、義理じゃないんだからね」

「お。サンキュー」

「……け、取るん……ッスか……」

思わず呟いて、口を両手で押さえた。

乾いたから洩れた言葉は、これ以上ないくらいに掠れていて、先輩達には聞かれている筈もなかったけれど。

俺が言うべき言葉じゃ、なかったから――。

勝手に自惚れて。

期待して。

「バカ…っすね、俺……」

遠ざかる2人の足音を聞きながら、俺は片手で顔を覆っていた。

          

    人が読んでいる<キミと紡ぐ【BL編】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください