《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》デリカシーって言葉を知っていますか?

「べ、別に敬意を持っていないわけじゃないからっ!」

「お前が、どう思おうと他人がそうじたのなら、それが全てだ。それから雇用主に対しては敬語を使え」

「……わかりました」

何なのよ! もう! 突然、借金が出來たかと思えば、いきなり嫁りとか訳が分からないわ!

それでも寢床が無いから付いていくしかないけど……。

一応、巫という扱いなのだから貞とかは守ってくれる……わよね?

私は、高槻総司という男のあと追うようにして境へと続く長い石で組まれた階段を昇っていく。

もう日が暮れる時間帯――、そして始業式が始まる前の時期という事もありでる風はひんやりと冷たい。

「これ、野宿したら死んじゃうかも……」

思わずから言葉がり落ちる。

そんな私の獨り言に反応したのか――、

「さすがに嫁り前のを死なせたら俺の評判に関わる」

「むーっ」

私は、前の――境に続く階段を上がっていく男の背中を見つつ自分にだけ聞こえるように唸る。

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もう、ここまできたら仕方ない。

一応は雇用主と従業員という形態をとってくれるなら、目の前の男――、高槻総司は私の雇用主になるわけだし、何とか要領よく立ち回るしかないのだから。

階段を昇りきったところで鳥居を潛り抜ける。

すると綺麗に清掃された境が視線に飛びこんでくる。

「すごく……きれい……」

思わず目に映った景に私は嘆の聲を上げる。

そこにあったのは大きな神木で、冬を過ぎ春を迎えたこともあり青々とした葉を、これでもか! というくらいに生やしていたから。

そして――、それは夕日のかしていて神的なまでに金に輝いていたから。

「早くいくぞ。時間が、もったいない」

私のことをジッと見つめてきた彼はハッ! としたような目で私を見てくるとぶっきらぼうに言葉をなげかけてくる。

さっきまで私の方を見てきていたのに……。

まぁ、私の方では無くて神木を見ていたと思うけど。

それなら、尚更――、私にだけ八つ當たりするように注意しなくてもいいでしょうに……。

「宮さん、そろそろ急ぎませんと――」

後ろを振り返る。

すると、そこには車の運転をしていた運転手もといスーツ姿の男が立っていた。

「#櫟原__くぬぎはら__#、あまりソイツに甘くするなよ?」

「高槻様、それは表向きであっても嫁を取るという方針から外れてしまっているのでは? それでは本家の方が納得されるとは思いません」

その言葉に高槻という男は頭を掻く。

「――チッ、わかったよ。莉緒、お前の部屋を案する、付いてこい」

櫟原さんと、高槻という男の関係がよく分からないけど、本家という話が出てきた事からもしかしたら複雑な事があるのかも? と、思いつつも!

注意された事に! まったく! 反省してない! と、心の中で思わず突っ込みをれつつ、私は心、溜息をつきながら男の後ろをついていく。

を通り、本殿の裏手――、母屋とも呼べる場所に2階建ての木製の古い家があった。

そこは、私が小さい頃に來た事がある場所。

5年間も放置されていたから、傷んでいると思ったけど新築のように綺麗なまま。

「宮さん、どうかしましたか?」

後ろからついてきた櫟原さんが、私に話しかけてくる。

「いえ、ずいぶんと綺麗な建だと思って……」

「はい。リフォーム致しましたので」

「そうなんですか……」

どうりで! と、私は納得しつつ、私を娶ると言った男が玄関にっていくのを見てすぐに後を追い家の中にる。

玄関は、私が前職の神主さんが居た時に上がった時と殆ど代わりはない。

むしろ綺麗になっている。

リフォームされたのだから當たり前かも知れないけど。

「――さて、ここが今日からお前が寢泊まりする部屋だ」

そう言い渡されたのは、私が巫舞を披するときに著替えをしていた部屋で――、

「これって、私の服?」

6畳一間の部屋の隅には、私の私服などが積み重なっていた。

もちろん、黒いビニール袋もあったけど、その中には下著も……。

思わず溜息が出てしまう。

「どうかしたのか? これから、お前の仕事と今後の事について話したいんだが?」

「いえ、何でもないです」

何なのだろう?

この黒いポリ袋にれられた下著を見て「ふと」そんな言葉が中を駆け巡る。

もうすこしに対してのデリカシーを持ってしい。

借金がある私が言えた義理ではないかも知れないけど……。

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