《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》大事なものはなんですか?

――1階の居間は昔ながらの囲爐裏がある部屋。

そこで、私――、宮莉緒17歳とヤクザ顔負けの酷い目つきをした男――、高槻総司、そして最後にその従者? とも思わしき櫟原さんの3人が、これからのことを相談する為に畳の上に座っていた。

まぁ、相談と言っても相手は雇用主であり部屋を提供しているである。

相談どころか一方的に、今後の事を命令されて終わりな気がしそう。

「――さて、もう時間もないから早めに今の狀況と今後の事を話そうか。櫟原」

「はい。それでは宮さん、まず表向きは高槻様に嫁ぐという裁を取ることで、この神社で働いてもらう事になります。理由はお分かりですね?」

「理由?」

「お前は馬鹿なのか? 頭にはプリンしかっていないのか?」

理由なんて、借金があるからでしょうに……、と! 思いながらも、何も考えずに答えたら10倍くらいの罵倒がかえってくる。

「バカじゃないですから! それなりの績をとっていますから!」

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「そうか。2學期期末テストで學年順位が下から數えた方がいいレベルなのに、それなりの績なのか」

「ちょっ! どうして、私の績を知っているんですか!?」

「お前の家を片付けていたら機の中にあった」

「……わ、私のプライバシーは……」

「そんなものはない!」

「高槻様、もうしオブラートに包んで頂きませんと――」

「……分かった。それよりもだ。話が先に進まないから、さっさと言うぞ」

「あい……」

もう、私のプライベートは自分の下著まで見られた時點で、すごい疲労から、どうでもいいや! って面持ちになっているので好きにしてくださいってじだけど……。

「まずは、お前は借金があるから働いて返してもらう事にする。仕事の容は、家事全般だが、出來るか?」

「家事は、お母さんが小さい頃に亡くなってからは一人でやってきましたので」

あのお酒とかギャンブルが好きなお父さんが家事をする事なんてありえないから、自然と私がする事になっただけなんだけど……。

あとはないお金で生活をやりくりする為には、家事は必須だったし。

思わぬところで蕓はを助けるみたいなじになって正直ちょっと複雑な心境。

「そうか。あとは境と本殿、それと參拝者の対応をしてもらうのが基本的な業務になる」

「あのー」

私は恐る恐ると言ったじで手を上げる。

「何だ?」

「私の下著とか洋服がっていた簞笥は……」

「桐の簞笥か? ずいぶんと年期がっていたな。それが、どうかしたのか?」

「やっぱり……」

「売ったが、何か問題でもあったのか?」

「いえ……」

「とりあえず、仕事の容は以上となる。何か疑問點があったなら俺か櫟原に聞けばいい。分かったな?」

そっか……。

お母さんの唯一の想いでの品だったのに……。

「――! ど、どうした? 気分でも悪くなったのか?」

「え?」

「宮さん、どうかしましたか?」

二人とも、私を見て慌てている。

何があったのかと思っていると――、

「これでも使え」

短い言葉と共に、高槻総司という男が差し出してきたのは青い水のハンカチ。

の刺繍で、イニシャルが刻まれている事から高そうなのは一目で分かった。

どうして、差し出してきたんか分からない私は、どう対処していいのか迷ってしまっていたけれど、彼が溜息を共に私の頬にハンカチを當てて來たことで初めて理解してしまう。

「わ、私……」

「何か嫌な事があったら言え。これから共同生活を一つ屋の下で行っていくんだ。一応は雇用主と従業員という関係だが、多のコミュニケーションは必要だからな」

「じつは、私の服がっていたのはお母さんの形見の簞笥で……」

「高槻様……」

「そうか」

私の言葉に彼は短く呟くと私の腕を摑んで立ち上がる。

「櫟原、すぐに車の用意を」

「分かりました」

それだけのやりとりで櫟原さんは家から出ていく。

たぶん車を取りにいったと思う。

「まったく――、大事ななら大事なだと最初から伝えておけばいいものを」

彼は、私の腕を摑みながら歩きながら小さく呟く。

でも、その言葉は私にもシッカリと屆いていた。

それから30分ほど車で移した質屋で、無事に形見の簞笥を再度手にれることに功したあと、簞笥は業者の人が車で運んでくれることになった。

「――さて……」

店から出た時には、はすっかりと落ちていて夜と帳が近づいてきていた。

「時刻は19時か……。これから食事を作るのもアレか」

「はい。それよりも家には家財道が殆どありません。近くの22時まで営業している店まで行き購後に外食をされた方がいいかも知れません」

「そうだな」

「莉緒も、それでいいか?」

彼は、そう私に語り掛けてくるけど……。

私は頭を下げる。

「ありがとうございます。お母さんの形見を……」

「……気にするな。誰でも大切なモノはあるからな」

ぶっきらぼうな言葉を使っているのに、なんだからかい口調に聞こえてしまうのは気のせいなのかな?

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