《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》俺のだからな?

もちろん、それだけでなく抱き著いてくる。

「くんくん。あれ? 莉緒」

穂、朝から抱き著いてくるのは止めてほしいの。もうすぐ授業が始まるよ?」

「そうじゃなくて!」

私の肩をガッ! と摑んでくる穂。

「何よ……」

「いつもと匂いが違う!」

「――え? やっぱり臭い?」

よくよく考えてみればお風呂にっていなかった事に気が付く。

華の子高生とあろうものが毎日、お風呂にらないとは不覚もいいところ。

「そうじゃないの!」

どうやら、私の考えは杞憂だったようで――、

「イケメンの匂いがする!」

「どういう匂いよ……」

別の意味で私は呆れてしまう。

「あっ! そうそう」

「まだ何かあるの?」

「家の方、大丈夫だった?」

「家の方?」

「うん。昨日、莉緒の家に遊びにいったんだけど……チャイムを鳴らしても反応がなかったから。とうとう死したのかなって……」

「どういう基準で私を見ているのか今一度、しっかりと話し合う必要がありそうね」

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「莉緒って、怖いっ!」

「はぁ……。――で、私のことを心配してくれていたの? 私の方は何とかやっていけているから大丈夫だからねっ」

「本當に? 今日の朝、すごいイケメンが莉緒のことを車で送ってきたわよね?」

あー、それ見ていたんだ……。

そりゃ目立つよね。

こんな田舎にロールスロイスで通學する人なんて珍しいし、何より車で送ってもらう方が珍しいまであるし。

「うん……」

隠し事もできないから私はとりあえず頷いておく。

ただ、借金の肩で神社に売られたとは言えない。

そんなことを説明したら、さすがに心配をかけるのは目に見えているから。

「もしかして莉緒の家ってすごいお金持ちとか? だって! 良家のお嬢様みたいに扱われていたわよね?」

「それは目が曇っているだけだと思うから目薬をして眼鏡を掛けた方がいいと思うわよ」

とりあえず突っ込みをしておく。

「おい! 宮!」

私と穂が朝のホームルームが始まる僅かな時間で會話をしているところに、一人の男子高校生というか小さい頃からの馴染が割ってってくる。

「何よ? 大和(やまと)」

彼の名前は、#武田__たけだ__# #大和__やまと__#。

昔からの馴染で何かを突っかかってくる。

「お前! 今度、新しくきた高槻神社の神主と婚約したって本當か!?」

「あー」

「え? 何々? 修羅場なの? ねえ? 修羅場なの?」

穂が目をキラキラさせて私と大和を互に見てくる。

それどころかクラス中から視線を一斉に向けられてきて居た堪れない。

それよりも、表向きは婚約――、嫁ぐという話になっていることをどうして大和が知っているのかすごく不思議なんだけど。

「本當なのか? おい、答えろよ!」

「えっと……、それは……」

「何をしている! 席につけ! ホームルームを始めるぞ!」

私が何と答えていいのか迷っていたところで先生がってきて話は中斷。

気まずい雰囲気のまま、學校生活は始まった。

授業時間は、さすがの大和も婚約の事に関して聞いてくることはできず、休憩時間もとか許嫁とか婚約に興味津々の子が近寄ってくるので大和は私に近寄ることも出來なかった。

私としても、何て答えていいのか分からなかったので「それは」とか「ご想像にお任せします」くらいしか言えない。

――そして、濃で非常に疲れる一日の學業生活が終わったあと。

穂、またね!」

「ほえ?」

「おい! 宮!」

いつもは穂と途中まで通學路は一緒なので二人で帰っていたけど、今日は大和に問い質されるのは面倒って思い逃げるようにして急いで學校から出た。

昇降口を抜けて、學校の校門まで辿り著いたところで後ろから腕を摑まれる。

「おい、宮!」

「何よ。大和」

「何を逃げているんだよ! お前、本當なのか? 婚約したって!」

「大和には関係ないでしょ!」

どうして、大和は前からこんなに私に絡んでくるんだろう。

「関係なくはない!」

「許嫁とか婚約とか大和に何の関係があるの!?」

「それは……」

大和が言い淀む。

その姿を見て、私はしだけ苛立つ。

「もういいでしょ」

「良くはない!」

私の腕を摑む大和の腕の力が強くなる。

「――ッ」

剣道をしているからなのか大和の握力は相當なモノで、腕を握られる痛みから私は思わず聲を上げてしまう。

「おい、小僧」

そんな私と、大和を引き離したのは――、

「な、なんだ……お前は」

「俺のに手を出すのは止めてもらおうか?」

無理矢理、大和の腕を摑み私の腕から引き剝がした張本人は、私のことをそのまま引っ張ると、抱きしめてくる。

「俺は、コイツの夫の高槻総司だ。に無なことをするのは心しないな」

えーっ! この人何言っているの?

いつも、私に対しては暴の限りで文句言っているのに!?

「――お、俺の!?」

「そうだ。莉緒は、俺のところに嫁りすることになったからな。お子様は引っ込んでおけ。それとも――」

ギロリ! と、ヤクザ顔負けの迫力ある鋭い目つきで大和を威嚇する高槻さん。

「――ッ!」

たぶん怒りで顔を赤くしたのか、大和が私と高槻さんの橫を通り抜けるけど――、

「そうかよ。そんな奴がいいのかよ」

「――え?」

思わず振り向く。

だけど、すでに大和の背中しか見えなくて……。

大和の「そうかよ。そんな奴がいいのかよ」と、言う言葉がを締め付けた。

あんな大和の聲を――、を押し殺したような言葉を始めて聞いたから。

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