《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》借金返済まであと3年です!?

お風呂場も、リフォームされたみたいで何もかもがピカピカで綺麗。

シャワーでと髪を洗ったあと、湯舟に浸かる。

湯舟の広さは、足が延ばせるくらい。

「家のお風呂とは全然違う……」

2日ぶりのお風呂という事もあり、思わず「ふぁあ」と聲が出かけてしまうけれど、他人――しかも男の人が一緒に一つ屋の下で暮らしていることを思い出し、聲を出すことを我慢する。

「それにしても……」

私は浴槽に肩まで浸かりながら思う。

高槻さんという人が今一、分からない。

何と言うか、言が一致していない……そんなじをけてしまい、どんな人なのかがぼやけてしまうから。

「ああ、でも……、明日はどうしよう……」

學校で々と聞かれることを考えてしまうと、し億劫になってしまう。

それに大和には、婚約は表向きという事を説明しておきたい。

やっぱり小さい頃からの馴染には隠し事をするのは、良くないと思うし……何より、大和に誤解されたままなのは、が痛い。

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「もう、何なのよ……」

自分の心の整理がつかない。

どうして、こんなにモヤモヤするのか分からない。

「はぁ……」

――だけど、高槻さんから婚約や嫁ぐことになっている事に関しての説明は駄目だと言われているから、何とか誤魔化すしかないわけで……、そうなると必然的に、私と高槻さんの関係を肯定する事になってしまう。

それは、私がもっとも忌避することなので……。

「やっぱり何とか誤魔化すしかないよね……」

説明は出來ないけど、誤魔化すしかない。

問題は……、いつまで誤魔化せばいいのかということ。

「やっぱり借金の額が額だものね……。お父さんが借金をしなければ……」

普通、娘に借金を殘して失蹤する? と、いう気持ちが沸き上がってきてしまう。

そう! 元々はお父さんが悪いわけで……。

はぁ……、本當にどうしよう……。

どうにもならないと言う事だけは分かるんだけど――。

「あとは借金返済までどのくらいかかるかだよね」

そう、それが一番の問題。

まずは、そこを高槻さんに聞かないと!

お風呂から上がったあとは、新しい下著と私服に著替えて囲爐裏のある部屋へと向かう。

「風呂から出たのか?」

「はい」

「そうか……、――で? 何か、話したいことがあるようだな」

こちらの様子を一目見ただけで、高槻さんは問いかけてくる。

「はい」

「そうか……、その前に髪のを乾かしてこい。それだと風邪を引くだろう? 話はそれからだ」

仕方なく、洗面所に行きドライヤーで髪のを乾かす。

「むー、こちらの意図が読まれた? そんなことないわよね?」

そんなことを思いながらも10分近くかけて髪のを乾かしたあと、居間へと戻る。

すると高槻さんが、さっきまで開いていたノートパソコンを閉じて私を待っているような様子で。

「――で、話というのは何だ?」

威圧的な、それでいて眼鏡をかけていないからなのか眼鋭く私を見てくる。

「私の借金についてです」

「ふむ。――で? 返す宛てでも出來たのか?」

「いえ、そうではなくて返済が終わるまでどのくらいかかるのかと」

「そうだな……」

高槻さんが電卓を取り出すと、メモ帳に萬年筆で數字を書き込んでいく。

食住は、こちらで面倒を見よう。約束だからな。時給は1200円として計算するとしようか。本來なら県最低賃金の800円でもいいんだがな」

微笑を向けてくる。

それは眼の鋭さと相まって、まるで魔王様の笑みに見える!

「せ、せん……1200円の方でお願いします」

「ふむ……、まあ、いいだろう。――で、お前の借金は3000萬円ある訳だが……」

言われてみると莫大な借金。

高校3年生になる子高生が抱える借金の額ではない。

それを返済することを考えるだけで、頭が痛くなる。

「そうだな。一応、ここで寢泊まりする事になるからな。寢ている間も賃金を払う対象の時間にするかどうかで――」

「ぜひ! 寢ている間も賃金発生でお願いします!」

ははーっと土下座。

ここはプライドを捨ててでも返済を早めたい! むしろお願いしたい!

「お前にはプライドはないのか……」

呆れた聲が頭上から聞こえてくるけど、そんなのは莫大な借金返済の前には些細な事。

「はぁ……分かった。それじゃ、返済までの期限は3年だな」

「3年……」

「何か問題でもあるのか? それとも寢ている間は賃金が発生しなくてもいいんだぞ?」

「いえいえ! 滅相もありません!」

「……そ、そうか」

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