《嫁ぎ先の旦那様に溺されています。》気持ちの整理

が息を切らせているのは直ぐに分かった。

それが私を探してくれていたのだろうということも。

しばらくして、ホームルームが始まるチャイムが聞こえてくる。

それでも、穂は黙したまま口を開くことなく私の隣に座り続けていて――、

穂、ホームルームが始まっちゃたよ?」

仕方なく私の方から聲をかける。

「うん……」

だけど返ってきた言葉は、ただの頷き。

そこで會話は途切れてしまい私と穂は無言のまま二人――、フェンスに寄りかかり――、そして時間だけが過ぎていく。

どれだけ時間が経過したのか分からない。

だけど、整理しきれない思いが落ち著いてきたところで――、

「ねえ、莉緒。本當は、何かあったんじゃないの?」

――と、穂が尋ねてきた。

それは遠慮がちに。

思わず、雰囲気に流されて頷きかけたけど私は左右に頭を振る。

「何もないよ」

友達に迷は掛けられないし、そもそも理由の説明をしていいなんて言われていない。

「そう……。それならいいけど……」

とく詮索せずに穂は立ち上がると私に手をばしてくる。

「もう1限目の授業始まっちゃていると思うけど、とりあえず保健室にいかない?」

そう穂が提案してくる。

「それって、合法的に休むってことよね?」

「そうそう。たまには……ねっ」

微笑みを向けてくる。

理由を聞きたいはずなのに、何も聞いてこないのは――、たぶん……、私が聞いても何も話さないと察したからだと思う。

それなのに、近くに居てくれるのは嬉しい。

差し出された手を摑み、立ち上がったあとは保健室にいき調が悪いと保健醫に伝えベッドで休ませてもらう。

保健室のないベッドを占領しつつ、目を閉じるとスウッと眠気が襲ってきて、私は1時間ほど寢てしまった。

結局、穂と共に授業に出たのは2時限目から。

それ以降も、穂と一緒に行をしていたのでクラスの人達からは必要以上に婚約者の件について聞かれることはなかった。

「そうなんだ……。今って、廃神社だった場所に暮らしているのね」

「うん」

私は頷く。

今は、學校の帰り道。

昨日は車で送り迎えがあったけど、今日は徒歩での帰宅と言う事もあり帰り道の方向が同じだった穂と一緒に道路を歩いているところ。

ちなみに、私が現在、暮らしている神社については話してある。

以前に、私が住んでいたアパートに私が居ない事は知っているし、住んでいる場所くらいは教えても問題ないと思ったから。

「つまり、今は神社の方で住み込みのアルバイトをしているってこと?」

「うん。そんなじ」

噓は言っていないけど本當の事も言っていない。

たぶん穂だって気が付いていると思う。

勘の鋭い子だから。

「そうなんだ……。何か、困った事があったら言ってね。お父さんやお母さんも莉緒の力になってくれると思うから」

「ありがとう」

全部は、話せない。

だけどしだけ話せたことで、気分はかなり持ち直していて――、

「それじゃ、こっちだから! またね! 莉緒!」

「うん。また明日ね」

途中で穂と別れたあとは神社へと続く階段を上がっていく。

鳥居を潛ったあとは境を通り母屋へ。

鍵を使い家にったあとは、巫服に著替えてから境周辺の掃除を行う。

それが済んだあとは私服に著替え、屋の掃除や夕食に向けての仕度などをしていく。

「いま、帰ったぞ」

玄関の戸が開く音が聞こえてくると同時に高槻さんの聲が聞こえてくる。

「おかえりなさい」

出迎えた私をジロジロと見てくる。

何かおかしなところないよね?

「何か?」

「――いや。何でもない。風呂の用意はできているのか?」

「はい。湯舟には湯を張っています」

「そうか。先にっていいか?」

私は頷く。

どうして、一々聞いてくるのだろう?

家主で、私の雇用主なのだから斷りをれなくてもいいのに。

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