《男がほとんどいない世界に転生したんですけど》雫を助ける

──あるの部屋。

「……うっ。」

 

雫はゆっくりと頭を上げ、目を開ける。

手足は……と。確認してみるも、やはり木の椅子に縛られきが全く出來ない。

ここに來てから恐らく4日目。

いくら夢だと思っても、雫がいる狹くて暗い部屋に囚われているという現実は変わらなかった。

いくらんでも聲が反響し、遠くに飛ばない。気もすごい。その事から考えてここは地下室だと思われる。

でも、それだけ。きが取れないから何も出來ない。

「……っ。」

雫は痛みを我慢する。雫を縛る紐は荒い紐で、に刺さりやすい。そのせいで、両手両足が傷だらけ。それに、ずっと同じ場所を縛られているのでの通りが悪く痺れを起こしていた。

1日1回、食事の様なものが出されるが……それはとても食べられたでは無い。でも、食べなかったら死ぬ。そう分かっていたので、我慢して我慢して食べ、何とか生きながらえていた。

でも……何日経っても、誰も助けに來てくれないという絶に雫は徐々に衰弱していった。

食事のなさから栄養失調。ない飲みによる水癥狀、恐怖と絶からの睡眠不足。

もう、雫は限界ギリギリだった。

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でも、雫の目は決して死んでいない。

何故なら、絶対に助けてもらえると信じていたからだ。

だって…………私にはこの時計があるから。

雫は左手にに付けている、壊れてかない時計を見る。

気付いた時には、スマホなどの雫の持っていた荷は全部とられていた、だけど何故かこの時計は取られていなかった。多分、壊れていたからだろう。

この時計は、優馬のだ。

勝手に持って來てしまっただ。

でも、今は優馬には悪いけど、勝手に持って來て良かったと思っている。

だって、この時計が無かったら私は2日と持たずに絶していただろうから。

これが優馬のだと思うと、心が落ち著く。冷靜になれる。頑張ろうと思える。絶しなかった。

そんな、ギリギリの狀態の雫の元に、また懲りずにあのがやって來た。

──ガチャ、ガチャ

沢山の南京錠を鍵で一つ一つ開ける音がし、それから、ギギギギッと重い音を出しながら頑丈な鉄の扉は開かれた。

久しぶりのに雫は目を掠める。

數秒経ち、ようやく目が慣れてきた頃にそのは白をたなびかせながらってきた。

「……っ。」

雫は構える。構えられるほどに自由は無いが、せめて心だけは……と思ったのだ。

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「キヒッ。おはよう、いや、今はこんにちはの方が適切ね。で、よく寢た?雨宮 雫。キヒキヒッッ!」

そう──雫を拐したのは月ノ高校  擔當化學の“毒牙 毒味先生”だった。

恐怖の笑い聲が地下室に響く。

でも、もう慣れた。雫は臆さない。

「……毒牙先生……いい加減私を家に返してください。こんなことして何になるんですか?許されると思ってるんですか?今の警察を舐めないで下さい。もう、すぐそこまで警察の手が迫ってきているかも知れませんよ?自首して下さい。」

強く睨みながら、雫は脅す。

そしてまだ自分は壊れていないと、絶していないと、強気に証明した。

「キヒッ。まだそんなこと言う元気が殘っているんだ。でも、そんなハッタリは効きませんよ。私の考えた作戦は完璧なんですよ。警察みたいなバカには一生見つけられませんよ。」

流暢に喋る、毒牙先生。その表からは絶対の自信がじられた。

「キヒッ。だからね………いい加減、認めなさい。“自分は優馬君に全く相応しくないと。男の優馬君の事は金を無限に生み出すただの道としか見ていないと。”」

このはずっとそうだ。同じことしか言わない。

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何とかして私から優馬という存在を奪おうとしているのだ。

“嫉妬”と言うものなのか?でも、そんなの狂った嫉妬だ。例え、私から優馬を奪ったとしても優馬は貴方のものにはならない。

そもそも、彼は私のものでもない。

「……嫌です。私は優馬の事が好きなんです。」

簡潔に自分の好意を言う。この返しも何回目だろうか。

「キヒッキヒキヒキッッッ!そのセリフ……もう飽きたよ。」

ニヤリと恐ろしい笑いを見せた。

またか………

ガッ───

 

いきなり毒牙先生は雫の水の髪を摑む。すごい握力だ。頭に激痛が走るが両手両足が縛られているため抵抗する事さえ出來ない。ただ雫は痛みに耐える。

その後、髪はギシッと強く引っ張られる。雫の髪は音を立て、抜け、激痛が雫を襲う。そこからダメ押しの様に椅子に雫の後頭部を打ち付けた。激痛が止まらない。

「……ぐっっっ。」

「あなたは優馬君の隣にいてはダメなの!私しか相応しいは存在しないの。あなたみたいな泥棒は存在してはならないのよ。」

毒牙先生は大きな聲でんだ。

なんと言う獨占だ。痛みを我慢しながら雫は思う。

小さな部屋に狂気の聲が反響するが……毒牙先生は全く気にせずに思いのままに話す。

「あなたは私と優馬君のの結晶の邪魔でしかないの。それ、わかってるの?

あなたに存在価値なんて無いの。」

暴力と言葉で心を抉ってくるが……私は決して折れない。

「優馬君は優しさであなたと話していただけなのよ。

そう……優馬君は誰にでも優しいからね、あなたはただのモブキャラなのよ。キヒッキヒッ…」

「……優馬はそんなんじゃない。今も異変に気付いて探してくてるはず。」   

優馬は……決して。

でも……今の雫は耐えて耐えて疲弊した狀態。自分でも気付かないほどに神をすり減らしていた。だから、自分で自分を信用出來なくなる。

雫から冷や汗がたらりと垂れる。

「キヒッ。もう面倒臭いね。

なら、もう終わりにしよっか!」

そう言って毒牙先生は白のポケットから2つの注を取り出した。2つの注には2種類の余りにも毒々しいれられていてそれを見ただけで全神経が危険だとんだ。

心臓の鼓が早くなる。ガタガタとの震えが止まらない。

必死に逃げようとしてもが縛られていて逃げ出せない。

「……いや……嫌ッ!來ないで!」

必死にぶ。そんなの無駄だと分かっているのに……

「キヒッ。これは私の実験で作り出した最高傑作。

……これを注されるととしては永久に終わりよ。

としての武を失い、優馬君のとしては相応しく無くなる。きっと、優馬君も想を無くすわ。

キヒキヒッ!本當ならね、こんなの使いたくなかったよ?でも、あなたがいつまで経っても壊れないから使うしかないのよ。

ざまぁ見ろね。私の優馬君を気でするからよ。特別な存在である私が優馬君に変わって泥棒を敗してあげるからね。」

毒牙先生は完全に走った目で近づいて來る。

完全に狂っている。

こんなの先生じゃない。サイコパスだ。狂者だ。薬中毒者だ。

「……嫌、來ないで!來ないでッッ!!!!」

じたばたと力いっぱい暴れても、抵抗が全く出來ない。

涙が流れてくる。これは恐怖だ。

優馬が離れていくと思ったからだ。

「……助けて優馬。助けてーッ!!!」

無意識に……最の人の名前をぶ!

「キヒッ。いい加減黙りなさい。あなたが悪いのよ。それに誰にもその聲は屆かないわよ。」

「……あっ、嫌。」

毒牙先生は雫の制服の右腕をまくり注を打ち込む用意をする。

雫は恐怖と絶の余り、目を瞑った。

真っ暗な視界の中……雫は泣いていた。

毒牙 毒牙は気味の悪い聲で笑いながら注を下ろす……

針が雫のに當たる。その時だった

────ドガーンッ!!!!!!

鉄の扉が勢いよく開けられ、真っ暗で狹い地下室に誰かがって來る。

いきなりの轟音に雫と毒牙先生は驚き、黙り込む。

雫はゆっくりと……目を開ける。

「──そこまでだ、毒牙 毒味ッ!雫、お前の聲しっかり屆いてたぞ。今、絶対に助けるからな。」

雫の目には彼が、寫った。

彼は息を切らしながら言う。

そう彼が……最の人が助けに來てくれたのだ……

雫は今まで張り詰めていた心が一気に緩み、涙が溢れる。が溢れる。

「……あぁぁっ。」

嬉しかった。すごく……すごく。言葉に出來ないほどに。そして、安心した。もう大丈夫なんだと。

1人で頑張らなくていいんだと。

雫は彼の名前をんだ。

「……優馬っ!!!!」

優馬と出會ってから、1番大きな聲で、を込めて、謝を込めて…………を込めて。

☆☆☆

俺はかすみさんが運転する車から降りる。

そのまま、かすみさんは車を勢いよく走らせて警察署に向かった。仕事の早いかすみさんなら數十分後ぐらいには応援を連れて來てくれるはずだ。

「行くか……」

俺は気合をれ、敷地る。

GPSが指した場所はやはり、ただの一軒家。

どこにでもありそうな……無難な家。でもどことなく不気味な雰囲気をじる。

……っ!?

家の表札を見ると俺はぎょっとした。

なんとその表札には“毒牙”と書かれていたからだ。

「もう、確実だ!」

俺は慎重になっていたが、この家が毒味先生の家だと分かり、躊躇いなく家にった。インターホンなどは一切押さない。警戒されたり、家に鍵をかけられて籠城されるのを防ぐためだ。

でも……なんで毒味先生が雫の事をを拐するのかが俺には分からなかった。

雫と毒味先生はこの學校で知り合ったはずで、昔からの関係も無いと思う。

それに、1時間しか授業もやっていない。

まさか俺と毒味先生が話していた時に(俺は無理やり)、雫が邪魔をしたから(俺にとっては助けてくれた)。

それが機ってことは無いよな!?

た、たかが1回ごときで………機が余りにも薄すぎる。

「ふぅ………」

深呼吸を繰り返しながら、靜かに進む。

いつ、毒味先生に襲われてもいいように警戒を怠らない。

無意識にかすみさんから貸してもらったお守りも握りしめてしまう。

「──……いや……嫌ッ!來ないで!」

「えっ!?」

小さな聲。だけど……確かに聲が聞こえた。しかもこの聲は……雫のものだ。

雫の聲は相當な焦りが含まれていて、俺は悟る。雫は相當ヤバい狀況なのだと。

耳をすまし、聲の発生源を探る。そして、雫の聲は下から……地下から聞こえてくると分かった。

俺はもうお構い無しに、家を探す。リビング、キッチン、居間など地下に繋がるかもしれないと思う所は片っ端に……

 でも、家中どこを探しても地下へと通じる道は無い。恐らく、地下は隠し部屋なのだろう。

ちゃんとした正規ルートでは無いと、行けないのだろう。

「早くしないと雫が…………」

さっきよりも雫の聲は強く聞こえる。という事は、さっきまでよりも大きな聲を出しているのだろう。

「クソっ。何処なんだよ!?」

地下室が見つからない焦りと雫が危ないという恐怖で溜まった気持ちをついにぶつけてしまう。気づいた時には──ガン!!!という音が家に響いていた。

壁を思いっ切り毆っていたのだ。

手にはジンジンと痛みが走るが、このどうしようも無い気持ちに押し潰されそうな心の方が痛かった。

俺は膝から崩れ落ち、どうしようも無いから涙が出そうになった。どうしよう……雫が………雫が……………やっとここまで來れたのに……

正しく、絶だった。

そんな時だった……

───────ガチッ

何かのスイッチがる音がした。

「!?」

歯車の回る音、その音の後に……近くの床がゆっくり持ち上がった。

…………?

俺は唖然とした。なんで、地下室への隠し通路が出てきたんだ?

まぁ……いい。運が良かったんだ。本當にラッキーだ。日頃の行いが奇跡を産んだのか?

俺はを取り戻し、希に満ち溢れた表で地下室に飛び込んだ。

──この時の優馬は本當に運がいいという他ない。

毒牙 毒味の家の地下への隠し通路、それは隠しスイッチを押さなければれないという特別な仕様だった。なので、初めてこの家に來た優馬には絶対に隠しスイッチは見つけられない……はずだった。

でも、優馬はスイッチを確かに押したのだ。溜まった気持ちを壁にぶつけた時……本気で壁を毆った時。その壁が隠しスイッチだったのだ。

今の優馬は完全に運を味方に付けていた。

☆☆☆

地下は思ったよりも広く薄暗い。所々に置かれているランタンのようなものを頼りに俺は真っ直ぐに雫の聲のする方向へ全力で走る。

「……助けて優馬。助けてーッ!!!」

雫の悲鳴が地下に響く。

その聲の後に……不気味な笑い聲も聞こえてくる。

俺は怒りがMAXになり、歯を食いしばる。拳を握りしめ、1秒でも早く雫の元へと急ぐ。

數秒後、聲の発生源の場所まで來た。そして、走っているスピードを維持したまま、しだけ空いている鉄のドアを思いっ切り蹴飛ばし、中にる。

そして、んだ。

「──そこまでだ、毒牙 毒味ッ!雫、お前の聲しっかり屆いてたぞ。今、絶対に助けるからな。」

と。

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