《視線が絡んで、熱になる》episode1-2
「よろしくお願いしますね。私、小林智恵です」
「はい、よろしくお願いします」
琴葉の目の前の席から顔を出すようにして挨拶をしてくれたのは小林智恵だ。ロングの真っ黒い髪は印象的だった。それをポニーテールでひとつに束ね、真っ赤な口紅は妖艶に映る。
同の琴葉も一瞬息をのむほどのしい智恵にもう一度會釈する。サバサバとした口調なのは挨拶でも伝わってくる。営業第一部は本社営業の中でもデキる人しか配屬されない。
智恵ならばおそらく仕事はできるだろうが、やはり琴葉は自がこの部へ配屬されたのは何かの間違いではないかとじた。それほど場違いなのだ。
そして、智恵の隣に座るパーマをかけた如何にもチャラそうな男と目が合う。どう見ても琴葉よりも若い所を見ると新社員だろうか。
「おはようございます~俺、鈴木奏多すずき かなたです。二年目です、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
二年目ということは、後輩になる。
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三年目の壁というものを最近はよく意識するようになっていた。一年目や二年目まではそれなりに先輩社員に頼りながら仕事を覚えていくものだが、三年目になると後輩もできはじめる。
いい刺激になるとじる人もいれば、プレッシャーにじる人も多い。
長していないと折れてしまう人もいる。三年目に離職率が跳ね上がるのはそういう理由もあるかもしれない。
お互いに自己紹介を終えると同時に「おはよう」という男の聲が聞こえ、全員の視線が注がれる。
琴葉も同様に肩越しにその聲の主を見る。
「おはよう。ここの部のマネージャーの不破柊ふわしゅうです。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
勢いよく立ち上がったせいでしふらついてしまった。
琴葉たちの部をまとめるマネージャーが琴葉の前に立つと長差に思わずよろけそうになった。長は180センチ以上あり、切れ長の雙眸が琴葉を見下ろす。彫刻のように目鼻立ちのはっきりした顔つきは人の目を引き付けるには十分すぎるとじた。
仕立ての良い濃紺のスーツに、高級そうに見える革靴、どれも彼のために作られたかのように似合っていた。
「今日から、この部署で働く藍沢さんです。一応數か月くらいは新木と組んでもらう。新木、大丈夫か?」
「はい、もちろんですよ」
対照的な二人に囲まれて顔を引きつらせないようにするので必死だった。
不破マネージャーは、いくつなのだろう。
改めて椅子に腰かけて疑問に思った琴葉は、隣の席の涼に耳打ちをする。
「すみません、マネージャーっていくつ何ですか?」
「確か、二十七歳とかじゃなかったかな?最年でマネージャーになっているからね。とんでもないやり手だよ」
「そうですか」
さして年の変わらない不破マネージャーに対して尊敬よりもどれほどのやり手なのか知りたいという求が沸き起こる。
コーポレートの人事部に配屬されていた頃を思い出した。
人事部はさらに二つのチームに分けられる。會社の顔として採用にあたる採用チームと、社の研修や人事の業務がメインの人事チームだ。
採用チームに関して、顔や華やかさを重要視されるのは暗黙の了解でわかっている。琴葉自は人事チームで業務をしていた。
「大手企業のコンぺ、長年他社だったのをひっくり返したりしてるからね」
「そうなんですか」
「そうだよ。すごいでしょ?営業ってプレゼンが重要になってくるから、不破マネージャーのプレゼン見ておいた方がいいよ。明日から早速営業活に行くから」
「…はい、わかりました」
琴葉はあからさまに顔を引きつらせ、どんよりと顔をを曇らせる。
プレゼンなど、大學の卒論発表會以來だ。
「知っていると思うけど、営業は新規飛び込みみたいな活はほぼないよ。うちは既存のクライアントとの打ち合わせだったりたまに展示會とかにも出席しなきゃダメだから忙しいんだ。渋谷のビルの広告も先月擔當したけど作業が夜からだったから徹夜だよ。本當疲れる仕事だよ」
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