《視線が絡んで、熱になる》episode4-3

またあの目で、あの手で、あの聲で、包み込んでほしい、そう思っていた。

既に何度か來ているマンションを視野に捉えた途端、大きくなる鼓

「隨分新木と仲いいな」

「…はい?」

「だから、隨分新木と仲いいんだな」

「…はい、まぁ…新木さんから仕事を教えてもらっているので」

「そういう意味じゃない」

エントランスドアを抜けて、ひんやりと冷たい聲を浴びせられる。

そういう意味じゃないとは、どういうことなのだろう。

琴葉は疑問符を浮かべながらも、飲みの席からずっと機嫌のよろしくない柊の心のを知りたいと思った。今だけじゃない、全てを知りたい。

柊の後に続くようにして家にる。相変わらず人が住んでいるとは思えないほど綺麗な部屋は家政婦が日中掃除に來ているのだろう。

數日ぶりの柊の部屋に張とドキドキがピークに達した。

「シャワー浴びるか?」

「はい…」

背広をぎながらそう言った柊の流すような視線は艶やかで気がある。

(…ドキドキして倒れそう)

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広々としたリビングから寢室へ移する柊の目で追いながら琴葉もジャケットをいだ。

戻ってきた柊は、琴葉の持ってる大き目の荷に目を向けて疑問をぶつける。

「そういえば、なんだ。その荷

「…あ!えっと…これは…」

そうだった。琴葉はすっかり忘れていたお泊りセットの存在を咄嗟に背後に隠した。

しかしこの行為が余計に気になったのか柊は無言で琴葉に近づくともう一度「それは何だ?」と訊く。

ボソボソと柊に向けて説明する。

があったらりたい、とはまさしくこのことだ。

「ええっと、これは…今日不破さんの家に泊まるかもしれないから…自宅から…持ってきまして。化粧水とか…著とか、」

「……」

「だ、だって!不破さんが…っ…家に來てもいいっていうから…明日だって、デートするっていうから…しくらい楽しみにしていたって…いいじゃないですか…」

無言で見下ろされて、つい早口で喋ってしまったのは琴葉の本音だ。

一度出てしまった言葉は戻すことはできない。柊が一どんな顔をしているのか見る余裕すらない。

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ここへ來ることを心待ちにしていたのは琴葉の方で、柊がどう思っているのかまではわからない。しかし、既に柊に惹かれていることだけは事実だった。

「しゃ、シャワー浴びてきます!バスローブお借りしますっ!」

結局、琴葉は柊と目を合わせることなく洗面所へ向かった。

琴葉の自宅のシャワーよりも圧の強いシャワーを浴びながら必死で先ほどの景も一緒に洗い流そうとする。

「はぁ…」

関われば関わるほど、柊に魅了される。柊に會いたくなっていくのだ。

シャワーを終えて髪を乾かしてリビングに戻ると柊はソファの上でくつろいでいた。

ワイングラスを片手に今日はノートパソコンで何やら検索しているようだった。

「なんだ、上がったのか」

「はい、ありがとうございました」

「じゃあ、俺も浴びてくる」

淡々とそういうと、柊はノートパソコンを閉じて琴葉の脇を通り過ぎる。

(…意識してるの、私だけなのかな)

そう思うほどに柊は仕事をしているときと変わらないし、今日なんて普段よりも不機嫌な気がしていた。

あまりの起伏が無さそうなのに、今日は何かあったのだろうか。

バスローブ姿のまま、一人でソファに座りながら柊が戻ってくるのを待っていた。しかし22時過ぎという時間も相まってか、次第に瞼が重くなりいつの間にか眠ってしまっていた。

目を覚ましたのは、誰かに抱きかかえられている振を全じたからだった。

酔いもあってか、瞼が重い中薄っすらとそれを開けると、柊の腕の中にいた。

「…っわ、」

一気に目を見開き、吃驚する琴葉をちょうどベッドの上に下ろしている最中だったようだ。自分がソファで寢ていたことを知り、すぐに彼に謝る。しかし柊からは何の応答もない。

「…不破、さん?」

不安げに聲が小さくなっていくのが柊にも伝わっているのだろうが、一向に何の返事もない。ベッドの中心に寢かされて、膝立ちで琴葉を見下ろす柊の悍な目つきにゾクッとが震える。

「今は不破さんじゃない、柊って呼べ」

「…」

「なんだ、不満か?」

「いえ、違いますが…」

「楽しみなのか?明日のデート」

れてほしくない部分に何の抵抗もなくそこにり込む柊の質問に頷いた。

「よかった。だけど、今日のお前にはイライラするんだよ」

「え…」

イライラする、その言葉は簡単に琴葉を絶させる。それほど柊に夢中になっているのだということを認識せざるを得ない。

柊も琴葉と同様にバスローブ姿でシャンプーのいい香りが鼻を掠める。自分も同じ香りを纏っていると思うとが熱くなる。

「俺以外の男を視界にれてほしくない」

「ん?え?」

しかし、イライラする理由として挙げられた理由に琴葉は呆気にとられる。

男の人だけを視界にれないなんて無理だ。何を言っているのだろう、この人は。やはり柊の言は不可解だった。

困ったように眉を八の字にして、控え目に視線をウロウロさせていると、柊が急に覆いかぶさってくる。

「ひぃっ…」

「だからそんなけない聲だすな」

柊がベッドに肘をつき琴葉とキスしてしまいそうな距離でそう言った。

「い、息が出來ないので…離れてください」

「嫌だ。今日はイライラしてんだよ。でも、お前が…いや、琴葉次第でそれが解消する」

「…へ?」

「琴葉が嫌でなければ、お前を抱きたい」

心臓が止まったと思った。だって、呼吸も瞬きも何もかもが一瞬止まってしまったから。

見えている景もすべて、だ。

抱きたいなど今までの人生で言われたことはなかった。春樹とのだって、そうだった。

春樹に抱かれた以上に張していた。

無音の部屋で琴葉は「抱いてほしい」といった。想像以上に聲が震えていたのは、張と煩い心音のせいだ。

微かに柊が笑った。

「っ…」

その顔が好きだった。いつもは仏頂面での読めない彼が不意に見せる笑顔が好きだった。の奧がきゅんっとなる。

「あぁ、そうだ。私経験がかなりなくて…というか一度しかなくて。ええっと…その、経験値的に…ご満足させられないかと…」

自分でも訳の分からないことを発していることは理解している。それでも、二度と男などいらないと思っていたのに既に抱かれようとしてるこの狀況で冷靜になどなれないのだ。

柊の手が、そっと琴葉の頬にれた。自然に口を噤む。

「経験値とか知らないしどうだっていい。それよりもお前がしいんだ。いいか、琴葉を抱くのは俺だ。過去の男でも誰でもない。だから…―」

―ちゃんと、俺を見ろ

何も言わずに、琴葉は頷いた。

琴葉も同様に柊がしかった。これは本能で彼を求めてしまっているのだろうか。どうしてこんなにも惹かれるのかはわからない。でも、今この瞬間、何もかも忘れるほどに強く抱いてほしかった。

ゆっくりと近づく顔に無意識にきつく目を閉じた。

するとコツン、と額と額がれる覚に薄く目を開ける。が、目の前に柊の顔があり発作を起こしてしまうと思い再度瞼を閉じようとするが、柊が囁くように言った。

「嫌なら言ってくれ。無理にするつもりはない」

「…嫌ではありません。張で…あと、心臓が…持たない…」

ふっと軽く笑みを浮かべた柊は琴葉の前髪を右手でそっとでる。髪には神経などないがそれにすら反応してしまう自分にこれ以上のことが出來るのか不安になる。

しかし、柊の優しい聲に、表に…どうしても彼に包まれたかった。

もしかしたら琴葉以外にも蠱的な顔を見せているのかもしれない。それでも、どうしても、彼が良かった。

「心臓が持たない、とは…良い意味で?嫌ではないんだな」

「それは、はい…」

「大丈夫、やさしくする。多分」

「多分?…」

珍しく曖昧な表現を使う柊に一抹の不安を覚えるが視線を彼から離した途端、視線を逸らすなとでもいうようにを押し付けられる。

「んっ…」

くぐもった聲がれた。二度目のキスは荒々しくてとても琴葉を気遣っているようには思えない。しかし同じくらいに琴葉を求めていることが伝わってくる。

息が苦しくてほんのし開けてしまったに割り込んでくる舌が歯列をなぞるように丁寧に這う。一気に押し寄せる快楽にキスだけで意識が朦朧とする。

を犯す舌は生きのようにく。柊のバスローブにしがみついていた手がいつの間にかり落ちる。

「…ぅ、…ん、」

自分の聲だとは思えないそれが耳の鼓を揺らすと恥心でどうにかなりそうだった。

柊がようやく顔を離したときには既に琴葉のは重力に従って指一つかせないでいた。

「なんだよ、そういう目で見るな。余裕がなくなる」

そう言いながらバスローブをぎ捨てる柊の上半に目がいく。

普段はスーツを著ているがどのようなをしているのかなど考えたことはなかったから想像以上に悍なつきに顔を背けたくなった。

バスローブをぎ捨てた柊が覆いかぶさってくる。彼の男らしいが琴葉に著する。

幸い、バスローブ一枚で何とか直接的な接を避けることはできたが…それでも引き締まったを見て心臓が激しい音を立てる。

「…ま…って」

「まだ何もしてない」

柊の手がすっと琴葉の太ももをでる。一瞬でが大きく跳ねて、柊がそれに合わせて琴葉の顔を覗き込む。待って、といったが本気で止めてほしいわけではないことを柊は理解しているようで琴葉をまるで獲を狙っている野獣のような目で見下ろす。

その目を見ると本當に食べられてしまうのでは、そう錯覚する。

「綺麗だよ」

「…不破、さん…」

「今は柊と呼べ。何度言わせるんだよ」

ごめんなさい、そう小さく呟くと同時にまたが塞がれる。そのまま、柊の手がバスローブの紐を外して前面を開けるとになる上半に一瞬手を止めた。

それがどうしてなのか不明だが、日ごろから何の気も使っていないに幻滅されたのでは、と心配になった。

しかしすぐに柊が顔を近づけ耳たぶを軽く甘噛みすると言った。

「優しくはする。…つもりだが、無理だったらごめん」

「…へ」

他人と距離を取り他人の気持ちを慮ることを放棄してきた人生を後悔した。彼の発する一つ一つを理解したい。それほどまで彼に惹かれている。

激しくキスをされる。

何も考えられず、柊にを任せた。

首筋に這う舌が溫かくて気持ちがいい。時折チクリ、痛みが走るが琴葉はその意味を知らない。

琴葉はただ柊にしがみつき、を委ねた。

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