《異世界戦國記》第三十八話・萱津の戦い2

「ええい!前線の兵は何をしておるのだ!」

織田信友の重臣坂井甚介は自の兵のたらくさに怒鳴り聲をあげる。

「し、しかし敵は予想以上に士気が高く…「黙れ!」っ!?」

家臣は何とかなだめようとするが甚介は怒鳴りつけ黙らせる。

本來なら甚介はこのような最前線で戦うわけではなかった。この戦の決著によってはさっさと清州城に戻り義統を擔ぎ上げ信秀と和睦するはずであったが信友によって最前線の兵を率いるように命令されてしまったのである。名目上とは言え総大將であることに変わりはなく甚介は直ぐに逃げられるように準備をして戦に挑んだが序盤から大いに押し返されつつあった。そもそも信秀軍から攻めて來るとは思っておらずそのせいで対応が遅れてしまっていた。

「くそ!陣を下げるぞ!急げ!」

前線の立て直しは現狀不可能と悟った甚介は直ぐに後ろへ下がるよう指示を出すが一足遅かった。

「殿!信秀の兵が近づいて…ぐぁ!」

いきなりってきた兵がそう伝えていると後ろから槍で刺され兵は悲鳴を上げるとそのまま死亡した。

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「織田弾正忠家小姓中條小一郎!信友の重臣覚悟しろ!」

「同じく柴田権六!手柄は俺が貰う!」

小一郎と権六は先を爭うように甚介の本陣へとってくる。既に二人は甚介を殺した後の話にっており目の前で話される甚介は馬鹿にされていると思い顔を真っ赤にする。

「き、貴様等!この鬼共を殺せ!」

甚介の言葉に本陣にいた兵は武を持って襲いかかるも小一郎と権六はそれぞれ槍を構えて巧に倒していく。

「くそ!二人で同時にかかるとは…卑怯n…ぐぁ!」

「囲め!囲んで袋叩きに…ぎゃっ!」

「ぐぇ!」

「ど、どうなってるんだ?こいつら化けか…?」

十人以上でかかっているのに傷を負わずに半數近くを倒すのを見てひとりの兵士が呟くがもしここに信秀がいたらこういうだろう。「氏興ならあっという間に全員殺して本陣の周りを大暴れしているだろう」

「…貴様等!何ぼさっと突っ立ているのだ!さっさとそこの鬼を殺せ!」

甚介は怯える兵士にそう怒鳴るが逆に小一郎たちに敵將の存在を教えるだけであった。

「あれがここの大將みたいだな。俺がこいつら足止めするから権六が首を取れ。手柄は半分でどうだ?」

「よし、乗った!」

権六はそう言うと一気に敵兵の間をすり抜け甚介に迫った。甚介も慌てて刀を抜くが権六の猛攻をけてしまう。一方の小一郎も敵兵をすり抜けると権六の方に背を向けて敵兵の足止めをしていく。

「くそ!糞がぁ!俺は清州織田家重臣坂井甚介だぞ!貴様ら如き鬼が近づいていい人間ではない!」

「坂井甚介!?大じゃんか!余計逃がす訳にはいかない!」

権六は甚介の名を聞いて張り切るが先ほどけた肩の痛みが再発してくる。それにより槍がぶれ始めついには穂先を切られてしまう。

「っ!?」

「フハハハハハ!!!!貰ったぁ!」

「っ!?権六!」

権六は慌てて刀を抜くが甚介が刀を思いっ切り橫なぎに振るい権六の首へと迫る。それを見た小一郎は思わず聲を上げてしまう。しかし権六はギリギリ刀を抜くとその勢いのまま首の方へ持っていき甚介の刀を持ちての部分で防ぎきる。しかし勢いまでは消せず後方へ軽く飛ばされてしまう。

「ちっ、運のいい鬼だが今度こそ!」

「くっ!」

甚介は腰を突いた狀態の権六へ止めを刺すべく刀を振り上げるが権六はその隙を突いて立ち上がり勢いをつけたた甚介のへと刀を突きさした。

「っ!?っ!?」

「清州織田家重臣」

権六は脇差を抜くと痛みで訳が分からなくなっている甚介の首に沿える。

「坂井甚介。討ち取ったり」

そして権六はめいいっぱいの力で甚介の首を切り裂いた。

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