《異世界戦國記》第四十七話・笠寺城の攻防~信繫の策~

叔父上敏宗と伊勢連合軍を迎え討つ準備を行っている同時刻。尾張國東部にある笠寺城を近くから信繫が覗いていた。

笠寺城は既に松平軍によって囲まれていた。城にはところどころ破損していたり死となった兵士があることから既に攻撃は始まっておりかつ今も必死に抵抗を続けているのが分かった。

その為信繫も兵を救うべく大膽な作戦に出ようとしていた。

「…殿、これは正気とは思えません」

その日の夜信繫は重臣たちを集めて作戦を伝えていた。最初のは大人しく聞いていたが話を聞くにつれて顔を青ざめ最後には誰もが反対するようになっていた。それほどに信繫の立てた作戦は無謀と言えた。

「確かに、旨くすれば笠寺城を救えるうえに松平清康の首を取る事も可能でしょう!しかし、この作戦では殿は…っ!」

「それは十分理解している。それでも今より狀況が良くなることはない。日を重ねれば松平勢も用心してくるだろう」

「ですが!?」

「もうすでに準備は整えてある。覚悟も決めた。後は…お前たちだけだ」

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信繫の決意の籠った瞳を見て重臣たちは何も言えなくなってしまったがその中の佐藤伝助が真っ先に聲を上げる。

「なれば殿!某も殿と參ります!」

「伝助…お前には別働隊の指揮を任せたい」

「いいえ!某は殿の傍でこそその力を振るいたいのです!」

「…分かった。ただし命の保証は出來んぞ」

「構いません!某の命で殿の命を守れるなら!」

「…別働隊は宗頼に任せる。行くぞ。松平清康に藤左衛門家の意地を見せてやれ!」

「「「「「おおう!!!!」」」」」

一方笠寺城を囲んでいる松平清康は今日の城攻めを終わらせ野営の準備を進めさせていた。清康は二十そこそこにして次々と三河においての地盤を固め西三河全域と東三河に及ぶ勢力圏を築き上げていた。そして今回斎藤利政と連して尾張に影響力を持たせるために侵攻していた。しかし、その目的は尾張における自分の影響力の確保のためその侵攻はゆっくりとしたものであった。その気になれば一萬を超える兵を員できるにも拘わらず五千で止めたのもそのためである。

「恐らく信繫は既に付近で様子を窺っているはずだ。火を多く焚き見張りの兵を増やし何か見つければすぐに報告させるようにしろ」

清康は的確に指示を出していき信繫の奇襲に備えた。決して奇襲があると分かっているわけではないが短いながらも戦場での経験と自が告げており清康はそれに素直に従った。結果的にこれがいい不幸へと向くことになった。

「敵襲!敵襲だぁ!」

本陣にて何時でも戦闘できるように鎧を著たまま就寢しようとしていた清康はその聲に機敏に反応して近くに置いてある刀を摑むと不意打ちに気を付けつつ外に出る。

「何処からだ」

清康は本陣を守っている兵の一人に聞く。敵襲は既に知っており何処の兵かも大はわかっているため手短に聞いた。

「はっ!ここ本陣からは大分離れていますがこの付近です」

兵は指をさし大よその場所を示す。その場所は笠寺城の門があるところだった。

「城の兵と合流して追い払おうと言うわけか。いいだろう。その兵を門に導してやれ城にるなら手出しはするな。城の兵と共にこちらに攻撃してくるなら迎え撃て」

「はっ!」

清康の命令に兵は返事をして前線に伝えに行く。暫くすると兵の聲はしずつ遠ざかりやがて完全に沈黙した。

「殿!敵は城へとっていきました。合流したのは織田藤左衛門家信繫の軍勢です!信繫もその中に確認できました」

「敵は奇襲はせずに籠城して時間を稼ぐつもりか。夜襲に警戒しつつ今は休ませるように。恐らく敵の援軍はしばらく來ないだろうからな」

清康は濃、三河、伊勢計一萬四千の兵に攻められている事を想定してそう言った。

しかし、この時清康は自でも気づかないが確実に慢心していた。それがのちに自へと降りかかってくるのであった。

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