《異世界戦國記》第五十四話・勝幡城攻防戦~布陣~

信繫が松平家を追い払った頃尾張西部の勝幡城に籠る俺はそんな報を知らない中遂に敵の出陣報がって來ていた。それも最悪な報告とともに。

なんと伊勢連合軍に南伊勢の國司北畠晴教親子が介してきたのである。北畠が連れてきた兵は六千、つまりこれで伊勢連合軍の総數は一萬二千となったわけだ。その為総數の半分を占める北畠家が総大將となり褒賞は弾正忠家を倒してからとして侵攻させたのだ。おかげで今伊勢連合軍は尾張國境付近にまで來ているという。

対する此方の兵力は二千五百まで集めていた。しかし、敵が倍に増えた以上この兵力でも防ぎきれるか分からない。最悪の場合ここを敵に明け渡す必要も出てくるだろう。とは言えここは居城であり俺の生まれた場所でもあるからそんな事はしたくはないけどな。

「殿、各部隊配置につきました」

俺の小姓柴田権六はそう言った。俺も城の館から外を見ると確かに布陣で著ているようだな。

本陣の守護に五百の兵を置き殘りを全て前線に投した。防網も時間がなかったため橋の付近にしか作ることしか出來なかった。それに氏興がまだ到著していないためさらに心配になってきた。忍びの報告では馬を使ってこちらに向かっているようだがもうしばらくかかるらしい。それまでここを抑えておくか。…いや、いつまでも氏興に頼るのはダメだな。俺たちで対処しないと。

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「…まもなく敵の先陣が見えてきます」

「分かった」

忍びがいつも通り裏から報告してくる。遠く西の方を見れば確かに人影が見える。明らかに俺の軍より多い。先陣からしてこれか。嫌になっちまうな。

「権六、お前も前線に行って來い。お前は武勇は優れているからな」

「は!必ずご期待に沿えるよう頑張ります!」

俺の言葉に権六は嬉しそうに言うと圧倒いう間に前線へと向かって行った。全く、忠義を盡くしてくれるのは良いがすぎるのは考えだな。

「三郎様」

と、そこへ戦場にふさわしくないの聲が聞こえてきた。しかもいつも聞いておりかつ俺を「三郎様」と呼ぶのは一人しかいない。

「…雪、逃げていなかったのか?」

俺は妻である雪にそう話しかける。ここ最近は戦の連続で対して構ってやれなかったな。夫としては最低だな。

「私は三郎様の妻です。夫が苦しんでいる時にそばにいられないのは妻として失格です」

「…どうなっても知らんぞ?それに、お腹の子に影響を與えてはいけないだろう」

「それもそうですが…」

「今からでも遅くはない。那古野城へ迎え」

俺は中などの非戦闘員を那古野城に避難させていた。もしここが落ちれば次は那古野城であるが落ちなければいいだけの話だ。

「三郎様、どうか私めの願いを聞きれてくれませんか?」

「…護衛を付ける。そして落ちそうになればすぐに逃げろ。これ以上は妥協できない」

俺がそう言うと雪は嬉しそうに笑う。

「それで十分でございます」

「なら部屋に戻れ。いずれ戦が始まるからな」

「はい。…三郎様、ご武運を」

雪は部屋を出る時にそう言った。俺はする妻の言葉に口元が緩みそうになるのを我慢して見送った。そして丁度良く敵の先陣が到著。続々と敵兵が反対側の河川に布陣していく。そして後方から一つの大軍勢が現れた。恐らくあれが北畠家の兵。やはり連合軍とほぼ同數と言うだけあって迫力あるな。弾正忠家も総員すればあのくらいにはなるのか。

「殿!敵軍の布陣が完了したようです!」

家臣の言葉に俺は頷く。

「分かった。よいか、例えて気が數倍の兵力を有していようとここは我らの土地!決して一歩たりとも近付けさせるな!」

「はっ!」

俺がそう言い終わると同時に敵兵の攻撃が開始された。こうして勝幡城攻防戦は幕を開けたのである。

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