《異世界戦國記》第五十八話・勝幡城攻防戦~東から~

「叔父上敏宗、親重。倍以上の相手に良く戦してくれた」

勝幡城の評定の間にて俺は叔父上敏宗と親重の労をねぎらっていた。あそこまで戦したのは二人の兵の指揮がとても上手かったからだ。俺だったらあそこまでもたなかっただろうからな。

「いえ、結局橋の所で防ぎきれずこの勝幡城に籠らざる負えない狀況にしてしまいました」

「問題ない。北畠が參戦してきた時點でこうなる事は予想出來ていた」

俺はもっと大変なことになると予想していたがそうはならなかった。それもこれもは

「教継、お前も良く頑張ってくれた」

「臣下として當たり前のことをしたまでです」

教継の言葉に頼もしさをじつつ俺は現狀の打破を考える。

勝幡城は落城の危機に陥っている。二千五百いた兵も半數近い千五百まで減り城にまで押し込まれている。一方の伊勢連合軍は一萬二千の二千程の損害を出しつつも約一萬の兵で勝幡城を包囲しつつある。しかも主力の北畠軍は無傷。……本來なら勝幡城を捨てて逃げないといけないだろうがここで逃げてもずるずると伊勢連合軍を尾張領に率いれることになってしまう。そうなれば北部や東部の戦況に影響を來たす可能もある。それだけは避けたい。その為にはここで伊勢連合軍を殲滅するか撤退に追い込む必要がある。だが、肝心の伊勢連合軍を追い払うための兵がない。このままじゃ織田家の敗北となってしまう……。

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「……叔父上敏宗、兵の調子はどうだ?」

「どう、とは?」

「伊勢連合軍を倒せるだけの力は殘っているか?」

「……はっきり言えば休息を設ければある程度は戦えますがこのまま連戦をするなら遅くても明後日には……」

「……そうか」

叔父上敏宗は最後まで言わなかったが何が言いたいのかは分かる。明後日。それが織田家に殘された最後の時間となるかもしれない。

そこまで考えた時であった。

「申し上げます!東方よりこちらに近づいてくる軍勢あり!」

「何だと!?何処の軍勢だ!」

「家紋は織田木瓜ではありませぬが」

「(まさか、松平か!?)」

俺はそこまで考え本格的に織田家の滅亡が近い事を悟ってしまう。伊勢連合軍に加えて松平軍が相手では勝つどころか戦いにすらならないだろう。

……こうなれば俺に出來るのは家臣を見捨てて雪と共に逃げる事だ。俺はそう考え実行に移そうとした時だった。

「家紋は水野家のものです!大よそ三千でこちらの向かってきています!更に今川氏興様の姿も確認しました!まもなく目視で確認できます!」

どうやら織田家の命運はまだ盡きていないようだな。

俺はその報告を聞き下知を下す。

「今の報告を聞いたな?伊勢連合軍を叩く好機である!全兵は武裝し速やかに出陣せよ!水野家と合わせ伊勢連合軍主力を叩く!」

「「「ははっ!!!」」」

「水野家か。彼らは織田についたのか」

伊勢連合軍主力北畠家の本陣にて北畠晴は殘念そうに呟いた。水野家襲來の報を聞いても晴は全くじなかった。水野家は三千ほどしかおらず勝幡城の軍勢を足しても伊勢連合軍どころか北畠軍にすら劣る。しかも奇襲ではないため陣を変える時間もある。そんな狀態で焦るなど初陣を迎えたばかりのか気の弱い愚者のみだろう。

きづらい公家裝をに纏いつつ筆を取り詩を読んでいる。まるでそこで戦場ではないような雰囲気が流れていた。

「忠政も信秀も降し北畠家が尾張を制する。さすれば北畠家は安泰よの」

は訪れるであろう北畠家の黃金期を想像し、笑みを浮かべるのであった。

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